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篠原涼子さんと市村正親さんが「コロナ禍」で別居~夫婦の「同居」義務に違反するか

竹内豊行政書士
篠原涼子さんと市村正親さんが「コロナ禍」で別居という報道がありました。(写真:2018 TIFF/アフロ)

今朝、篠原涼子さんと市村正親さんご夫妻が別居しているという報道がありました。新型コロナウイルス感染症による「コロナ別居」や「コロナ離婚」という家庭内不和が多く聞かれる昨今ですが、お二人になにが起きたのでしょうか。そこで今回は、夫婦間の「同居」と「別居」について考えてみたいと思います。

結婚をすると「同居」義務が発生する

まず、結婚をすると「同居」義務が発生します(民法752条)。 この「同居義務」は、「協力」「扶助」義務と合わせて、婚姻共同生活を維持する基本的な義務とされています。

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

同居義務は、結婚の成立、つまり役所に婚姻届を届出た時から発生し、結婚の解消まで存続します。同居義務とは、夫婦として同居する義務のことをいい、単なる場所的な意味ではありません。したがって、同じ屋根の下でも、たとえば障壁を設けて生活を別にするのは民法が想定している夫婦間の同居ではありません。

「同居」を法的義務にすることに疑問の声も

しかし、女性の雇用が進んでいる今日、別居したまま婚姻を継続する夫婦も実際います。そこで、同居を婚姻の典型として法的義務とすることは、婚姻生活の多様化に反するものであり、立法論として、同居を「夫婦の協力義務の一形態」とすべきという意見があります。

そこで、民法752条は、夫婦はその性格上同居することを原則とする。しかし、同居するかどうかは、夫婦間の協議で決めることができる。そして、「お互いに同居する」と合意した場合は、正当な理由がない限り同居の義務を負うと柔軟に考えるべきでしょう。正当な理由とは、たとえば転勤等の職業上の理由、病気による入院等による一時的な別居が挙げられます。

同居義務違反は「離婚原因」になる

なお、同居義務違反は離婚原因となり(770条1項2号「悪意の遺棄」)、離婚慰謝料の理由にもなります。

民法770条(裁判上の離婚)

1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2.裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

悪意の遺棄とは、正当な理由なくして、夫婦の同居協力扶助義務に違反する行為のことをいいます。相手方を捨てて家出をする行為だけではなく、相手方を追い出したり、いたたまれなくなって出ていかざるをえないように仕向ける行為も含まれます。ただし、相手方が同居や扶助を拒むことに正当な理由がある場合には、悪意の遺棄にはなりません(最高裁判決1964年9月17日)。

愛情に基づく「別居」もある

篠原さんと市村さんの別居を報じる記事は、次のように別居の理由を報じています。

■本誌の取材に所属事務所は「別居は事実です」

「篠原が市村さんと別居をしていることは事実です。しかし、不仲が原因ではなく、ドラマの撮影で大勢の人と接することもあり、家族へ感染させないための一時的な処置です。仕事のない緊急事態宣言中の2カ月間は自宅に戻っていましたし、ドラマの撮影終了後の8月下旬には別居を解消し自宅での生活に戻ると聞いています」

別居は認めたものの、あくまでコロナ禍によるものだというのだ。篠原が別居を決断した背景について前出の知人は言う。

「がんを患っていた人はコロナの重症化リスクが高いこともあり、市村さんの体調を気遣って篠原さんは別居を決断したそうです。また、舞台を中心に活動する市村さんの仕事がコロナで軒並みキャンセルに。時間の空いた市村さんが篠原さんに『俺が子どもを見るからドラマの撮影に集中しなさい』と後押ししたことも大きかったようです」

出典:篠原涼子 市村正親と別居していた!事務所も「事実」と認める

記事によると、市村さんと篠原さんの別居の理由は、コロナ禍による市村さんの感染を回避することと、市村さんの篠原さんへの気遣いのようです。そうすると、別居をするのに「正当な理由」があり、同居義務違反には当たらないと考えられます。

一般に、「別居」と聞くと、離婚を連想しがちですが、お互いの愛情に基づく別居もあるようですね。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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