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要注意!妻から「コロナ離婚」を突き付けられる夫たち パート1

竹内豊行政書士
妻から「コロナ離婚」を突き付けられる夫像を浮き彫りにします。(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛やテレワークの普及で夫婦が、家にいる時間が長引くことでもともと感じていた性格や価値観の不一致が表面化して、離婚危機に陥るケースが出始めているようです。

今回は、我慢限界「コロナ離婚」 一緒の時間増え、価値観の不一致表面化で紹介された離婚を決意した妻の声から、妻からコロナ離婚を突き付けられる夫像を浮き彫りにしたいと思います。

子どもの面倒を一切見ない~親権共同行使の原則

子育てに非協力的な夫は要注意です。

5月下旬、広島市南区の40代女性は離婚届を出し、約10年の結婚生活を終えた。「娘が生まれた4年ほど前から違和感があった。離婚は時間の問題だったけど、コロナが決定打になりました」と振り返る。

 自営業の元夫は、これまでは月の半分が県外出張で不在だったが、新型コロナの影響が出始めた2月ごろから仕事が減った。家にいることが増えたのに、幼い3人の子どもの面倒は見ない。外に連れ出して遊ぶことも一切なかった。

 自室にこもって休業補償について調べるか、趣味のゲームに没頭する日々。夜7時から翌朝5時まで画面に向かう。手を止めるのは夕食の間だけで、子どもが近づくと「ゲームの邪魔」と追い払った。「経済的な不安からの現実逃避なのかもしれないけど、情けなくて…。こんな父親の背中を子どもに見せたくない」と離婚を決意した。

出典:我慢限界「コロナ離婚」 一緒の時間増え、価値観の不一致表面化

親子関係から生ずる最も重要な法的効果は、親が未成熟の子に対して保育・監護・教育すべき地位に立つ(親権を有する)ということです。

親権は、父母の婚姻中は原則として父母が「共同」して行います(民法818条3項)これを「親権共同行使の原則」といいます。婚姻中の父母の親権共同行使の例外として、父母の一方が「親権を行うことができないとき」には、他方が単独で親権を行使します(民法818条3項ただし書)

民法818条(親権者)

1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。

2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。

3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う

例外として単独で親権を行使する「親権を行うことができないとき」とは、一方が親権を行使することについて法律上または事実上の障害がある場合です。記事の夫は、このような障害があるとは到底認められません。したがって、夫の言動は共同親権に反すると考えられます。したがって、幼い3人の子どもの面倒を一切見ないような夫は、妻からコロナ離婚を突き付けられても致し方ないでしょう。

生活費を恩に着せる~扶助義務

自分が稼いでいることを妻に威張り散らす夫も要注意です。

今まで家事や育児の分担を頼んでも「俺は稼いでいる。誰のおかげで生活できてるんだ」と頭ごなしに言われた。女性が自立の一歩として調理員のパートを始めてからは「家が片付いとらん」「帰りが遅い」という小言にうんざりした。6月から子どもたちと新居で暮らすが、引っ越しも手伝ってくれなかった。

出典:我慢限界「コロナ離婚」 一緒の時間増え、価値観の不一致表面化

結婚をすると、夫婦は同居し、互いに協力し扶助し合わなければなりません(民法752条)

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

ここでいう「扶助義務」とは、夫婦の同居義務、協力義務と同様に夫婦の本質的義務です。扶助義務は未成熟子を含む夫婦の共同生活を営むために互いに経済的援助を行うことであり、自己の生活と同一の内容・程度のものを保障する必要があると考えられています(生活保持義務)。したがって、「俺は稼いでいる。誰のおかげで生活できてるんだ」という夫の言い分は当然通りません。妻からコロナ離婚を突き付けられる危険度は大です。

夫は夫で新型コロナウイルスの感染拡大による影響で慣れないテレワークや景気後退による先行き不安などでストレスが蓄積していると思います。しかし、そんなときだからこそ、民法が掲げる「協力義務」を思い出して妻に労わりの一言をかけてみてはいかがでしょうか。その一言で夫婦の空気がガラッとかわるかもしれません。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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