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「事実婚」と「内縁」はどう違う?

竹内豊行政書士
「事実婚」と「内縁」はどうのように違うのでしょうか。(写真:アフロ)

今月、ブロガー・作家として活躍されているはあちゅうさんが7月15日にツイッターで事実婚をされたことを発表しました。

その直後から、事実婚と婚姻(結婚)の違いについてマスコミ等で話題になっています。そこで、今回はあえて「事実婚」と「内縁」の違いについて考えみたいと思います。

「事実婚」とは

1980年代後半から、自分たちの主体的な意思で婚姻届を出さない共同生活を選択するカップルが社会的に広がり始めました。代表的な理由は次のようなものがあります。

夫婦別姓の実践

家意識や嫁扱いへの抵抗

戸籍を通じて家族関係を把握・管理されることへの疑問

婚姻制度の中にある男女差別や婚外子差別への反対  など

このような理由で婚姻届を出さないのは当事者が主体的に選択した関係です。そのため、これまでの内縁とは事情が異なるので、「事実婚」と表現します。

「内縁」とは

内縁とは、事実上の夫婦共同生活をしていても、婚姻の届出をしていないために、法律上の夫婦と認められない関係をいいます。この点では、「事実婚」と違いは認められません。

内縁を選択するには「事情」がある

かつての戦前の家制度の下では、婚姻届は妻を家族の一員として承認する行為でした。したがって、結婚式をあげ同居していても、夫側の家から嫁としてふさわしいと判断されるまで、あるいは跡継ぎの子を妊娠または出産するまで婚姻届を出してもらえない場合がありました。

明治時代の民法では、婚姻には戸主(家の長)の同意を必要とする(男30歳、女25歳までは親の同意も必要)ほか、法定家督相続人は他家へ入ることができないなどの、家制度を理由とする婚姻障害事由がありました。そのため、次のような理由で婚姻届を出さないことがありました。

・戸主や親の同意が得られない

・長男・長女の跡継ぎ同士である

他方で、経済的にゆとりのない階層では、婚姻届の必要性自体が認識されていませんでした。1925年の政府の調査では、工場労働者の男子の20%、女子の30%、鉱山労働者の男子の30%、女子の40%が、内縁の夫婦でした。

当時の内縁夫婦の数が有配偶者総数の16~7%だったのに比べて、かなり高い数値を示しています。

このように、内縁の実数が多く、その原因も当事者の責任に帰せられないものであり、何よりも、一方的に追い出されたり、生計を依存していた事実上の夫を失ってしまうと困るのは、女性であったから、当時社会的、経済的に弱い立場にある女性を救済する必要性が認識されました。

しかし、その救済は、根本的な婚姻の届出主義の改正ではなく、判例と特別法によって進められました。

判例は、婚姻予約不履行の法理で、一方的に解消した者に損害賠償責任を負わせることによって、また工場法施行令(1926・大正15)などの特別法は、遺族給付の受給権を内縁の妻にも認められることによって対応しようとしました。

このような流れの結果として、現在では、労働者の災害補償や年金保障など数多くの社会保障関係の立法で、内縁配偶者は、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として、法律上の配偶者と同じ扱いを受けています。

「事実婚」と「内縁」の違い

一般社会において夫婦として生活している当事者が、主体的に婚姻届を出さないことを選択したかそうではないかで事実婚と内縁を区別することがでます。つまり、主体的に婚姻届を出さないことを選択した場合が事実婚、そうでない場合が内縁といえます。

「事実婚」が増える背景と今後の課題

事実婚が増えている背景はいくつか考えられますが、女性の社会進出と経済的自立が大きく影響していると思います。

ただし、事実婚では、婚姻届を届出ているカップルと比べて様々な法的保護を享受できないことも事実です。

近代的な法制度では、家族の基礎となる婚姻を法の規制と保護の対象とし、婚姻外の関係については、法的規制もしない代わりに法的保護もしないという立場をとるのです。

今後は、社会的要請として、「ライフスタイルの自己決定権」を基に、事実婚を選択したカップルへの法的保護が推進されることが望まれます。

(参考文献:『家族法』第4版・二宮周平)

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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