Yahoo!ニュース

遺体・遺骨をめぐる争い~被収容者が死亡したら

竹内豊行政書士
遺体や遺骨をめぐって家族間で争いになることがあります。(写真:アフロ)

法務省は、7月9日に、松本元死刑囚の遺体の引き渡し先が正式に決まっていないため、遺体が傷む前に東京都内の葬祭場で火葬しました。遺骨の引き取りに関しても遺族の間で意見が対立しているようです。

そこで、拘置所で被収容者が死亡した場合、どのようにして遺骨等が引き取られるのかを見てみたいと思います。

被収容者が死亡した場合

刑事施設の長は、被収容者が死亡した場合には、法務省令で定めるところにより、その遺族等に対し、次のことがあるときはその旨を速やかに通知しなければなりません。

・その死亡の原因及び日時

・並びに交付すべき遺留物、

・支給すべき作業報奨金に相当する金額若しくは死亡手当金

・又は発受禁止信書等

(以上「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」176条)

だれに通知されるのか

では、死亡の原因や日時などはだれに対して通知されるのでしょうか。

「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する規則」によると、通知は、次に掲げる順序に従い、先順位にある一人に対して行うものとされています。

1.被収容者が指定した者(一人に限る。)

2.配偶者

3.子

4.父母

5.孫

6.祖父母

7.兄弟姉妹

8.被収容者がその国籍を有する外国の大使、公使、領事官その他領事任務を遂行する者

(以上「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する規則」92条)

執行直前に「遺灰を四女に」

「遺灰を四女に」と死刑執行の直前、松本元死刑囚は担当刑務官に、遺体の引き渡しについて、口頭でこう伝えていたと報道されています。

そのため、法務省は四女を「被収容者が指定した者」として調整を進めていると考えられます。

一方、妻のほか、6人の子どものうち長女と四女を除いた4人の連名で7日、東京拘置所に安置されている遺体の引き渡しを求めて、上川陽子法相と同拘置所長あての要求書を提出したと報道されています。

その中で、死刑執行の直前に「遺灰を四女に」と拘置所側の担当者に告げたことを「精神状態からすればあり得ないと考えている」と反論しているようです。

遺体・遺骨をめぐる争い

このように、遺体・遺骨をめぐり家庭内などで意見が分かれてしまうことがあります。中には遺骨の管理をめぐり裁判にまで発展してしまうこともあります。

裁判事例に、「被相続人(亡くなった方)の遺骸ないしこれを火葬した遺骨の所有権は、被相続人に属していた財産ではないから、相続財産を構成するものではなく、被相続人との身分関係が最も近い者の中で、その喪主となった者に当然帰属するものと解すべきである」というものがあります。

遺骨をめぐる争いは、遺産の争いとは違った意味での根深いものがあります。この種の争いとなると、もはや当事者間での解決は不可能でしょう。

遺骨をめぐる争いになってしまったら、早めに司直の手に委ねた方がよいかもしれません。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

竹内豊の最近の記事