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母に感謝する日は「こどもの日」!?

竹内豊行政書士
実は、母に感謝する"国民の祝日"は「こどもの日」です。(写真:アフロ)

5月13日は母の日です。「何をプレゼントしようかな・・・」と悩んでいる方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

この日は一般に母親の日頃の苦労を労わり、母への感謝を表す日とされています。ご存知の通り国民的行事の一つとなっています。

しかし、よく考えて見ると、母の日は、「国民の祝日」ではありません。では、母に感謝する国民の祝日はあるのでしょうか。

母に感謝をする国民の祝日は「こどもの日」

国民の祝日は、国民の祝日に関する法律に定められています。

そして、同法の2条は、母に感謝をする日は「こどもの日」と規定しています。

国民の祝日に関する法律

2条(内容) 

「国民の祝日」を次のように定める。

こどもの日 5月5日 

こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する

なぜ「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」とともに「母に感謝する」となっているのでしょうか。

これは私のあくまでも推測ですが、こどもに「産んでくれたお母さんに感謝しましょう」というメッセージが込められているのではないでしょうか。

●父に感謝する国民の祝日はない

では、父に感謝する国民の祝日はいつでしょうか。

第2条に記載されている「国民の祝日」を以下にすべて抜き出してみます。探してみてください(特にお父さん方、がんばってください!)。

2条(内容)

 「国民の祝日」を次のように定める。

・元日 一月一日 年のはじめを祝う。

・成人の日 一月の第二月曜日 おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。

・建国記念の日 政令で定める日 建国をしのび、国を愛する心を養う。

・春分の日 春分日 自然をたたえ、生物をいつくしむ。

・昭和の日 四月二十九日 激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。

・憲法記念日 五月三日 日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。

・みどりの日 五月四日 自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ。

・こどもの日 五月五日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。

・海の日 七月の第三月曜日 海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。

・山の日 八月十一日 山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する。

・敬老の日 九月の第三月曜日 多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。

・秋分の日 秋分日 祖先をうやまい、なくなつた人々をしのぶ。

・体育の日 十月の第二月曜日 スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう。

・文化の日 十一月三日 自由と平和を愛し、文化をすすめる。

・勤労感謝の日 十一月二十三日 勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。

・天皇誕生日 十二月二十三日 天皇の誕生日を祝う。

残念ながら「父に感謝する日」はありません・・・。

●民法の親子の倫理観

さて、民法は親子間をお互いにどのようにとらえているでしょうか。

民法には、「子どもは親に感謝しなければならない」という規定はありません。しかし、「互いに助け合わなければならない」という規定はあります。

(親族間の扶け合い)

730条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶(たす)け合わなければならない。

親子は「直系血族」の関係にあります。したがって、「親子は互いに助け合わなければならない」と民法は規定しています。

しかし、この規定は、戦後の民法改正の際に、日本の「家」制度を残そうとする勢力との妥協の産物として設けられたもので、いわば道徳的な意味しかないと解されています。

法律に規定してあるから「親子は助け合え!」というのも違和感を禁じ得ません。今日では「削除すべき」との意見もあります。

法律や記念日・祝日に関わらず、親子は常日頃お互い感謝して助け合う存在でありたいものですね。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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