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シベリア森林火災の煙が北海道へ飛来

竹村俊彦九州大学応用力学研究所 主幹教授
(写真:ロイター/アフロ)

今日(2018年4月27日)、シベリアで起こっている大規模な森林火災から流れてきたと考えられる濃い煙が、北海道へ飛来しました。札幌市によるPM2.5濃度の観測によると、前日4月26日午後から少しずつ濃度が高くなり始め、27日10時から急激に測定値が大きくなりました。この濃度は、環境省が注意喚起するように各自治体に示しているレベルと同等であり、不要不急の外出や、屋外での長時間の運動をできるだけ避けるようにすべきレベルです。また、専門的な測器による観測でも、煙により日光が遮られて、空がきれいな時よりも地上に届く光の量が4割程度にまで減少していることが示されました。これは、空を眺めれば白っぽく霞んでいると誰もが認識できるレベルです。

煙の飛来は予測できていた

私が運用しているSPRINTARS PM2.5予測では、この煙の飛来が2日ほど前から予測できていました。北海道や東北北部にお住まいの方は、前日26日に、ウェザーマップ所属の気象予報士が解説するテレビの天気予報で、シベリア森林火災の煙が飛来する可能性があることを聞いた記憶があるかもしれません。SPRINTARS PM2.5予測では、人工衛星観測によって取得できるリアルタイムに近い森林火災の情報を取り込んで、その煙の発生も考慮して予測をしています。そのため、今回の北海道への煙の飛来の予測も可能でした。

SPRINTARS PM2.5予測によると、以下の図のように、26日にシベリア南東部で起こっている森林火災からの煙が、翌27日未明に沿海州でも起こっている森林火災の煙と合流して、27日昼頃に濃い煙が北海道へ到達すると予測しており、結果として予測通りとなりました。沿海州からは約半日で北海道へ到達しており、結構短い時間で煙が流れてくるものだな、という印象を持つ方が多いと思います。サハリン付近に中心を持つ低気圧の風に運ばれてきたと考えられます。

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今後予想される状況は?

NASAの人工衛星による観測(ホームページが少し重いのでモバイル端末でのアクセスは注意してください)では、4月27日現在、沿海州およびシベリア南東部の森林火災が大規模で継続していることがわかります。これが小康状態とならない限りは、気圧配置によっては再度北日本へ煙が飛来する可能性もあります。空が霞んでいる場合には、特に呼吸器系や循環器系に疾患をお持ちの方や、お子様・高齢者の方は、できるだけ屋外での活動を避けて、外出の際にはマスクを着けることをお勧めします。また、私が運用しているSPRINTARS PM2.5予測を使って、事前に情報を得ておくことも有効かもしれません。

九州大学応用力学研究所 主幹教授

1974年生まれ。2001年に東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。九州大学応用力学研究所助手・准教授を経て、2014年から同研究所教授。専門は大気中の微粒子(エアロゾル)により引き起こされる気候変動・大気汚染を計算する気候モデルの開発。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書主執筆者。自ら開発したシステムSPRINTARSによりPM2.5・黄砂予測を運用。世界で影響力のある科学者を選出するHighly Cited Researcher(高被引用論文著者)に7年連続選出。2018年度日本学士院学術奨励賞など受賞多数。気象予報士。

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