第39回全農日本カーリング選手権大会、男子の部はSC軽井沢クラブがクラブとしては2017年以来5年ぶりの優勝を果たした。

 現メンバーとしては初戴冠だ。今季は特にポジション変更やメンバー交代などが功を奏した。

昨季までは山口剛史がフォースを務めていたが、その山口が「ジュニア時代からポテンシャルは感じていた」という栁澤李空をスキップに抜擢する。

 リードに34歳の小泉聡、セカンドが15歳の高校生・山本遵、サードが37歳で平昌五輪代表の山口、スキップに20歳の栁澤という陣容で今大会に挑むと、8連勝でラウンドロビン(総当たり予選)を無傷で1位通過。プレーオフで札幌国際大にエキストラエンドにもつれながらも敗れ準決勝に回るも、3連覇中のコンサドーレを退け、決勝進出。決勝は札幌国際大と今大会3度目の対戦となった。

 札幌国際大も今大会、多くの試合でイニシアチブを握り好調を維持していた。リードの新野和志の安定したセットアップを足場に、セカンドの荻原功暉とのショットが繋がり、バックエンドまでに好形を作るエンドがいくつもあった。

 フォースの青木豪は多少のガードストーンを苦にしないフィニッシャーだ。むしろガードを飛び道具としてランバックなどのテイク系のショットに積極的に活用し、複数得点を奪うスタイルが札幌国際大の武器のひとつだ。

 ただ、決勝に関しては栁澤が「試合前に山口と話していて、テイクの上手な青木選手に狭いところのドローを投げさせる展開にしたかった」と振り返ったように、札幌国際大学のセットアップを逆手に取る形でドローゲームに引きずり込んだ。その過程で難しい局面になりそうであれば、山口のトップウェイトのショットでいくつもの石を動かし形を変えるといった具合の、打つ手の早さもSC軽井沢クラブの勝因だろう。

 ファイナルはどうしても硬いゲームになりがちだが、1エンドから8エンドまですべて複数スコアが記録される、珍しくも面白い、好ゲームだった。

 結果的には栁澤のドローやソフトウェイトの精度に軍配が上がったものの、敗れた札幌国際大学も最後まで攻撃的なカーリングを貫いた。4エンドにアングルレイズ、7エンドには距離とアングルのあるランバックで魅せるなど、らしさは随所に見せた。青木もまだ22歳。来季以降も栁澤との投げ合いは男子カーリングの名勝負になってきそうだ。

画面左から栁澤李空、山口剛史、山本遵、小泉聡。2022/23シーズンの日本代表チームだ。 (C)JCA
画面左から栁澤李空、山口剛史、山本遵、小泉聡。2022/23シーズンの日本代表チームだ。 (C)JCA

 見事に結果を出したSC軽井沢クラブは2018年に平昌五輪出場チームを輩出した男子カーリングのパイオニア的クラブのひとつだ。

 ただ、平昌五輪後、清水徹郎はコンサドーレへ加入し、両角友佑と公佑はTMKaruizawaを、平田洸介はKit curling clubをそれぞれ結成するなど戦力が分散した。

 メンバーも加入や離脱といった変遷を経て、今季、山口のもとに集ったのが体育教師という安定した職を離れて「オリンピックを目指したい」という小泉、軽井沢中学のカーリング部で才能の片鱗を見せていた栁澤、そして「本気でカーリングに取り組みたい」と両親に訴え神奈川県藤沢市から引っ越してきた現役高校生の山本だった。

 昨季までの山口がスキップだった時代はなかなか思うような結果が出ず「チーム作りは本当に難しい」とこぼしていたこともあったが、若い栁澤に戦略面や氷上のプレッシャーを共有することでうまく相乗効果が起きた。

 まず山口がサードになったことでそのスイープ力を存分に発揮し、ショットの許容範囲が増えた。山口本人のショットにも「そもそもスイープは得意なので」と大好きなスイープを繰り返すことでいいリズムが生まれているのだろう。

 ミックスダブルスにも並行して取り組んでいる小泉のセンターへのドローはブレが少なく、キャリアのある小泉と山口で、最年少の山本をはさむ形でポジションを組んだことでショットも繋がった。リードでアドバンテージを生み、セカンドでミスが出てもサードでカバーしてくれる。その安心感が今大会の山本の伸び伸びとしたパフォーマンスを促した。

 余談ながら、山本の「カーリングがしたい」という願いを聞いて軽井沢への移住を決断した父・聖二さんと母・麻実さんは夫婦でミックスダブルスに挑戦し、昨シーズンには長野選手権で3位になったペアでもある。お互いを「ダーリン」「ハニー」と呼び合いながらプレーする姿は微笑ましく、軽井沢アイスパークの名物のひとつだ。今大会の楽しげな山本のプレーはご両親譲りかもしれない。

 そして今季からスキップとしてハウスを任された栁澤も、当初はハウスさばきに戸惑いもみられ、難しい局面などで長考する場面も散見したが、今大会では決断力や時間の使い方なども抜群で、大きなトラブルを巧みに避けた。最終的には決勝前に山口は「李空はギラギラしていたから」と、特にアドバイスも必要なかったと後輩の急成長に笑顔を見せた。

 4連覇を阻まれたコンサドーレの清水徹郎がSC軽井沢クラブの快進撃について「若手の成長をベテランがうまく助けている」と評したが、その言葉が全てを物語っているだろう。

 優勝直後、年上の山口と小泉が涙を、若手の栁澤と山本がそれを見て笑顔をこぼすという光景も、いかにもこのチームを象徴していた。途上だからこその勢いもうまく働き強いチームになった。

 今季のカーリングはこれで千秋楽を終えた。長い長いシーズンを惜しくも準優勝で終えた札幌国際大の青木は「あと半年ちょっとなのでそれまでにまた強くなりたい」と語ったが、来年の日本選手権は2023年1月に開幕する。2年連続での常呂開催だ。

 青木が早くも切り替えたようにインターバルは「半年ちょっと」、たったの8ヶ月だ。覇権奪回を狙うコンサドーレ、ジュニア王者の常呂ジュニアを含め、それぞれのチームがリベンジを狙って研鑽を積む。決勝のような素晴らしい試合が増えれば、山口らが出場した2018年以来8年ぶりの、男子の五輪出場も確実に近づくはずだ。