稚内で行われた日本代表決定戦が終わり、来年2月開幕の北京冬季五輪出場を目指すカーリング競技では、男子は北海道コンサドーレ札幌(以下コンサドーレ)、女子はロコ・ソラーレ、ミックスダブルス(以下MD)は松村千秋(中部電力)と谷田康真(コンサドーレ/北海道クボタ)ペアが、それぞれ日本代表となった。

 この3チームは12月にオランダのレーワルデンで開催される世界最終予選に挑み、史上初の男子、女子、MDの3種目揃っての五輪出場を目指す。

 そのためにも強化、特に世界での様々なアイスでの実戦は欠かせない。秋からの海外遠征は新型コロナウイルスの影響で19/20シーズン以来2年ぶりとなるが、トップチームの動向を中心に紹介していきたい。

 最初に渡航するのはロコ・ソラーレだ。9月末に出国し、彼女たちが“第二の故郷”に定めるカルガリーをベースに調整をはじめ、マスターズやナショナルといったグランドスラム2大会を含む4大会に出場したあと、渡欧。スイス・ルツェルンで五輪最終予選に向けた直前キャンプを張る。最短でも帰国は年末という長期合宿だが、彼女らは世界でも屈指の遠征慣れしたチームだ。ジェームス・ダグラス・リンドナショナルコーチの力も借りつつ、12月の大一番に向けてピークを作ってくれるだろう。

 ロコ・ソラーレ(Fujisawa)が出場するマスターズ(オンタリオ州オークビル)には、北海道銀行フォルティウス(Yoshimura)、富士急(Koana)も参戦する。これは日本カーリングにとって大きなニュースだ。グランドスラムで日本のチームが複数出場、そして日本勢同士の対戦は既に「Fujisawa vs.Yoshimura」で実現済みだが、3チーム同時出場は史上初だ。日本のカーリングにとって未踏の地であるグランドスラムウィナーがこの3チームから出てきても不思議ではない。

 特に富士急は8月のどうぎんクラシックで、ロコ・ソラーレと北海道銀行から白星を奪って優勝するなど成長著しい。スキップの小穴桃里は「まだ夏(シーズンイン直後)でしたから」と謙遜しつつも、「自信になったことは間違いないです」と笑顔を見せた。グランドスラムは初出場だが、8月同様の伸びやかなパフォーマンスを見せてほしい。

 また、北海道銀行はカナダからカザフスタンに向かう。10月3日に行われるJCA(日本カーリング協会)理事会の承認待ちではあるが、11月6日にアルマトイで開幕する、パシフィックアジアカーリング選手権(以下PACC)に日本代表として出場するためだ。ここで準優勝以上の成績を収めると、来年3月にカナダ・プリンスジョージで行われる世界選手権の出場権が獲得できる、日本代表としても重要な大会だ。

常呂ジュニア(左)は日本選手権に勝ちジュニアの世界選手出場権を、TMK(右)はPACCを制し世界選手権出場権を、コンサドーレ(中央)は北京五輪出場権を、まずはそれぞれ獲りにいく (C)JCA IDE
常呂ジュニア(左)は日本選手権に勝ちジュニアの世界選手出場権を、TMK(右)はPACCを制し世界選手権出場権を、コンサドーレ(中央)は北京五輪出場権を、まずはそれぞれ獲りにいく (C)JCA IDE

 男子のコンサドーレ(Matsumura)も、10月から長期遠征に出る。女子3チームと同じくグランドスラムのマスターズに出場。シーズン序盤のこの大会に出場できるのは実は日本男子チームとしては初めてとなる。世界的なコロナウイルスの蔓延もあるので一概には言えないが、昨季までの実績や戦いぶりが評価され、世界トップチームの仲間入りを果たしたと言っていい。男女ともにトリプルノックアウト(3回負けると敗退となる変則トーナメント)制で行われるが、願わくはベスト8、あるいは4といった上位に進出して、地力を世界にアピールしてほしい。

 男子のPACCについては日本選手権準優勝の常呂ジュニアが出場する可能性もある。しかし、11月13日に閉幕するPACCを戦い切ると、11月16日に札幌市で開幕する日本ジュニア選手権との両立はほぼ不可能となってしまう。こちらも10月3日に行われるJCA理事会で正式決定されるが、日本選手権3位のTMKが派遣されることになるだろう。チームとしては初めて日の丸を背負っての試合となるが、アジアでもトップクラスの高い技術を持っているだけに、チャンスは十分にある。男子の世界選手権(4月アメリカ・ラスベガス)出場枠は優勝のみという狭き門だが、最高の結果を残し12月の五輪最終予選に挑む日本選手団へエールを送ってほしい。

谷田康真と松村千秋。2020年のミックスダブルス日本選手権で全勝優勝を果たすも、新型コロナウイルスの影響で世界選手権が中止に。今回の五輪最終予選が初の世界挑戦となる。 (C)JCA IDE
谷田康真と松村千秋。2020年のミックスダブルス日本選手権で全勝優勝を果たすも、新型コロナウイルスの影響で世界選手権が中止に。今回の五輪最終予選が初の世界挑戦となる。 (C)JCA IDE

 MDの松村千秋も11月に入るとカナダでコンサドーレに合流予定だ。ペアを組む谷田と共に当地でトレーニングを積み、コンサドーレと共にスイス・ルツェルン入り。前述のようにロコ・ソラーレも滞在するため、場合によっては実戦形式での仕上げが可能になる。これは大きなプラス材料だろう。

 また、ここからはJOC(日本オリンピック委員会)のナショナルアシスタントコーチである小笠原歩コーチもMDのコーチとして帯同予定だ。

 JCAによると「理事会の承認を待っての正式決定となりますが、小笠原コーチを含め人選を進めているのは事実。近々、正式に発表いたします」とのことだが、JCAの強化委員も兼ねる小笠原コーチは昨季、選手からの「ミックスダブルスの試合経験が少ないから強化合宿を組んでほしい」という声を汲む形で、初めてMDの実戦に特化した強化合宿を昨年末に企画、実行した。コロナ禍での貴重な実戦経験の場を提供しただけではなく、自らタイマー(試合中に持ち時間を計測する係)を買って出るなど献身的にサポートに回り、選手からの信頼も厚い。8年前の現役時代、ドイツのフッセンで行われたソチ五輪最終予選を勝ち抜いた経験も持つ。

 小笠原コーチは「試合をするのは選手なので私にできることは少ないかもしれないけれど、できることは全部、してあげたい」と語り、若い松村谷田ペアをはじめ、日本代表を全力でサポートする構えだ。

 まず9月29日、先陣を切って出発するロコ・ソラーレは出国直前にオンライン会見を開いた。

「私たちの気持ちだけではなく(代表決定戦を戦った)北海道銀行さんであったり、他の女子のチームの思いもしっかり背負って戦わなければならない」(藤澤五月)

「3ヶ月の遠征の終着点が世界最終予選。今までの海外遠征は一戦一戦(目の前の勝敗に集中して戦う)というところだったんですけれど、今回は世界最終予選で勝つための準備期間でもある。勝つことを差し置いて調整に使わないといけない大会もあります。そういう部分は落ち着いてチームでやっていきたい」(吉田知那美)

 北京五輪まであと128日。

 コンサドーレ、ロコ・ソラーレ、松村谷田はそれぞれカナダで研鑽を積み、コーチやトレーナーを含めたチーム・ジャパンとしてスイスで結集し、決戦の地オランダへと赴く。

 決して簡単な戦いではない。しかし、これまで培ってきたものを氷上で発揮できれば、男子、女子、MDが揃って北京五輪のアイスにたどり着けるはずだ。平昌五輪を超える熱狂へのカウントダウンはもう始まっている。