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強く美しいグッドルーザー・北海道銀行フォルティウスの夢が絶たれた夜/カーリング日本代表決定戦

竹田聡一郎スポーツライター
左から船山、近江谷、小野寺、吉村 (C)JCA IDE

 勝者となったロコ・ソラーレが氷上で喜怒哀楽を全身で表現している一方で、惜しくも敗れてしまった北海道銀行フォルティウスの4選手、船山弓枝、近江谷杏菜、小野寺佳歩、吉村紗也香は横隊で深々とアイスに一礼した。勝っても負けても欠かさないチームのルーティンだ。そして静かに戦いの舞台から去った。

「全農2021女子カーリング日本代表決定戦」の1戦目2戦目は北海道銀行が星を拾った。

 ショットの安定という意味では互角、むしろややロコ・ソラーレに分があった印象だが、小野寺と吉村のバックエンドのショットが冴えた。キーショットを決める形で食らいつき、1戦目はハーフで2点、2戦目は6エンド終了時で3点、それぞれビハインドを背負いながらも追いすがり、最終的には競り勝った。2連勝で日本代表に王手をかける。いくらロコ・ソラーレでもさすがに3連勝は…、そう多くの人が思ったに違いない。

 しかし、背水の陣を敷いたロコ・ソラーレは尻上がりに調子を上げてくる。リードの吉田夕梨花がほぼノーミスでセットアップを続ければ、セカンドの鈴木夕湖はそれを足場に石を積んだ。逆に相手が優勢の場面ではハウス内の形を早いショットで壊し、邪魔なガードがあれば1投で2個を払う。特に3戦目以降は多種のショットを操って決めた、大会MVPの鈴木らの活躍で、ロコ・ソラーレは2勝2敗のタイに星を戻した。

 最終戦も北海道銀行はハーフまでに3点差をつけられるが、第6エンドと第8エンドに複数点を記録し1点差に迫る。最終10エンドも珍しい吉田夕のミス、というのは酷な表現だが決めきれなかったウィックにつけこむ形で石を配置。なんとかショットを繋ぎ、ラストロックに勝敗を委ねる状況を整えた。複数点のリードを持ちながら逃げるロコ・ソラーレを追い、勝つチャンスまで作れるチームは世界的にもそれほど多くないだろう。

 しかし最後は「ずっとイメージしてきた決めれば勝ち、ミスれば負けのショット」と言う藤澤五月の「自分で緊張感を作って投げる練習をしてきた」との言葉どおり、ハウス中央にドローを沈めて決着。3日間5試合49エンド784投の熱戦が終わった。

 吉村は試合後、涙を流しながら「5試合を通してどんどん調子を上げていきながら、しっかりアイスを読んで指示された場所に(石を)置いてくる」と分析し、「ショットの正確性のところでは押し負けてしまった」と、勝ったロコ・ソラーレを称えた。

 日本代表となったロコ・ソラーレはこれから世界最終予選、そこで勝てば北京五輪に挑む。

 しかし決して忘れてはいけない。その道のりには2連敗を喫した好チームがいたこと。そのチームには、劣勢でもしっかりプレッシャーショットを強いてくる才能溢れるスキップ、常に最前線で日本のカーリングを支えてきたレジェンド、ショット率が上がらなくてもチームショットを運んだクレバーなスイーパーコンビがいたこと。そして彼女らは悔しさを押し殺してアイスに一礼できるグッドルーザーだったこと。彼女らを誇りにし、また彼女らからも誇られるようなパフォーマンスを、日本代表として求められる。

 北海道銀行は今季の今後のスケジュールは「新型コロナウイルスの影響なども含め検討中」としているが、チーム最年長の船山弓枝が五輪挑戦について「最後のチャンス」と公言していることや、昨季は伊藤彩未、今季は田畑百葉という若い選手も迎えていることを考えると、遅くとも今季終了までにはなんらかの動きがありそうだ。

 その一方で、五輪シーズンとなった今季は変則スケジュールとなり、世界選手権は五輪代表候補となったロコ・ソラーレ以外のトップチームである、北海道銀行、中部電力、富士急のいずれか(※1)が派遣される(※2)ことになる。今回、アイスに立った4選手は、どちらかといえばベテランの域に達しつつあるキャリアを持った選手だ。彼女らそれぞれの人生設計もあり軽々には言えないが、今大会のような試合ができるならあるいはこの先も……と願うファンもきっと多い。選手としてチームとして、決断はどのようなものになるだろうか。

※1

12月に北見市常呂町で行われる試合形式の強化合宿で決定予定

※2

11月のパシフィック・アジア選手権(カザフスタン・アルマトイ)および、来年1月の世界選手権の最終予選で出場枠を獲得した場合

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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