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第27エンド「世界選手権7位をSC軽井沢クラブはどう捉え、最高峰の“グランドスラム”にどう挑むのか」

竹田聡一郎スポーツライター
カナダ、スウェーデン、スイスといったメダルチームに平昌でリベンジを果たしたい。

カーリング男子としては98年長野以来20年ぶりの、自国開催以外では初の五輪出場を勝ち取ったSC軽井沢クラブ。歴史的快挙であることは間違いないが、エドモントンの地でそこまで喜びを爆発させなかった理由は別の原稿で書いた。

7位という結果についてリード両角公佑は「悔しいけれど、今の僕たちとしては、とても順当です」と語っていた。セカンドの山口剛史は「悪くないパフォーマンス、では勝てないと知った」、サードの清水徹郎は「課題ばかり残っている」、そしてスキップの両角友佑は平昌までの強化について「時間はいくらあっても足りない」とそれぞれ振り返った。もう10ヶ月しかないと思うか、まだ10ヶ月あると思えるかと問えば、間違いなく後者だろう。そのあたりの思いを抱えて全勝優勝を果たしたカナダの戦いをスタンドから真剣に見ていた姿が印象的だった。

そういう意味でも11試合を戦い抜いた彼らに今、伝える言葉は「おめでとう」よりも「お疲れ様」が近く、さらに言わせてもらうと「お前ら、こんなもんじゃないだろ」が偉そうだけど、適切なんじゃないかと思う。みなさんも、浅田真央さんの引退も大きなニュースだが、それ同様に彼らにも労いと応援の言葉をぜひかけてあげてください。

チームは12日、無事に帰国し、会見を終えてから軽井沢に戻った。これから町長を表敬訪問し、各所属先に挨拶回りをする予定だ。さらに関係者に向けた大会報告会も開催し、女子の中部電力と共に長野のカーリングを支援する「カーリングサポーターズクラブNAGANO 2018」の設立パーティーにも出席する。

2週間ほどそれらの行事をこなしながら、時間も作ってアイスにも乗らないといけない。4月下旬にはカナダにトンボ帰りをかまして、カルガリーで行われる「グランドスラム」と呼ばれる今季のワールドカーリングツアーのクライマックス、さらにそのファイナルである「2017 Humpty’s Champions Cup」に出場するからだ。

これはワールドカーリングツアーの最終戦であって最高峰であり、賞金ランキング上位やナショナルチームなどしか参加を許されないボンスピルだ。先の世界選手権が国別のサッカーW杯であれば、こちらはクラブごとの最強チームを決めるチャンピオンズリーグといえば伝わるだろうか。賞金は100,000カナダドルだ。

おのずと世界戦の新王者Brad Gushueをはじめ、準優勝のNiklas Edin(スウェーデン代表)、銅メダルのBenoit Schwarz(スイス代表)、4位のJohn Shuster(アメリカ代表)という、ホヤホヤの世界戦トップ4が参加する。

王国カナダからは、カナダ選手権のラウンドロビンでGushueに勝った昨年の世界王者Kevin Koe、同じくGushueに勝ったMike McEwen、ソチ五輪金メダルチームのBrad Jacobsなどが参戦。この3チームははっきり言って、世界戦の2位以下より強いと思われる。おそるべきはカナダというカーリング伏魔殿だ。

そこに挑むSC軽井沢クラブのメンバーに世界戦終了後、グランドスラムについて聞くと「勝てますかねえ」「ある意味では世界戦より大切かもしれない」「でも楽しみです」「ぶつかってきます」とちょっと弱気に、でも笑顔で抱負を聞かせてくれた。

五輪出場という長年の目標をクリアしたいま、彼らにはさらに大きな目標が生まれた。終わりは始まりだ。7位より上に、五輪で勝つための研鑽の日々は続いてゆく。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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