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第22エンド「男子カーリング世界選手権初日、日本vs.イタリア。9-5で白星発進」

竹田聡一郎スポーツライター
両角友佑は「(氷の)読みや滑りが合わない部分も」としながらも辛勝を喜んだ。

男子のカーリング世界選手権「Ford World Men's Curling Championship 2017」がカナダのアルバータ州・エドモントンで開幕した。

1日の現地紙「EDMONTON SUN」のスポーツ面はトップからカーリングを5P連続で載せ、その扱いはホッケーやフットボール、フィギュアスケートよりも大きかった。そのほとんどがカナダ代表・グシューの紹介に終始していたものの、カナダの著名スポーツジャーナリストのテリー・ジョーンズは「WORLD ODDS」という囲み記事を作成。全チームにオッズと短評をつけた。

トップはもちろんカナダで3倍。スウェーデン(4倍)、スコットランド(6倍)、ノルウェイ(8倍)が続く。日本は出場12カ国中7位の15倍というオッズだった。短評では「A surprise fourth at Basel 2016 worlds」と紹介されている。surpriseをどう訳すかが難しいが、やはり昨年の4位は躍進と世界は捉えていたようだ。

また、彼は「日本は5勝すればおそらくオリンピック枠を獲得できるだろう」としたためているが、そのあたりも含めてSC軽井沢クラブのメンバーを直撃してみたが、「いいとこついてますね。(日本の評価もオリンピック出場権についても)だいたい合ってるんじゃないですか」との見通しだった。

そして迎えたドロー1。日本はイタリアと戦い、9-5で勝利。アイスリーディングに苦しみながら要所をなんとかしのぎ、相手のミスにも助けられた場面もあった。「勝てて良かったけど、調子は良くなかった」サードの清水徹郎が認め、長岡はと美コーチも「初戦はどうしてもこういうゲームになる。とにかく勝てて良かった」と言ったように、まずは結果が出て安心、といった大会の入り方になった。重くて曲がるアイスに合わせてくるのは2日目以降だろう。

せっかくカナダに来たのだから、今回も「勝手にホットハンド」を選定しようと思う。と言いたいところだが、開会式に臨んだ選手を改めて眺めると、カナダのブラッド・グシューをはじめ、スコットランドのデビッド・マードック、スウェーデンのニコラス・エディンなどなど、世界戦チャンピオン、五輪メダリストがゴロゴロいる。もうそれだけでなんだかハアハアするラインナップだ。

カーリングライターを名乗っておいてこんなことを言うのは情けないが、僕の観戦スキルでは彼らの深淵かつ斬新かつ精緻な変態ショットに驚き拳を握るのが精一杯で、評価なんてとてもできない。だから今回はホットハンドの選定はやめておく。

その代わりと言ってはなんだが、日替わりで我らがニッポン代表のキーショットと、それにまつわる彼らのコメントを紹介してゆきたい。

初日はイタリア戦、後攻で迎えた第3エンド、スキップ両角友佑のラストショットだ。

ハウスの中に石はなく、ブランクにしてもいい場面だったが、ブラシを持った清水は「投げたそうにしていたし、決める自信もありそうだった」と、ハウス左の外にあった自軍の赤石を押すショットを選ぶ。押した赤を後ろにあった相手の黄色に当てて残し、シューターもハウス内にロールさせるという、難易度の高いフィニッシュだった。大別すればダブルロールインだろうか。

求められた両角は「本当は(難しいので)投げたくなかった」と冗談めかしつつ振り返ったが、「1、2エンドは押され気味だったので何とか流れを掴みたかった」とトライし、見事に成功。2点を奪い、ゲームのイニシアチブを握り返すと、以後はリードを保ったまま逃げ切った。

明日は朝のゲームでオランダ、夜のゲームでスコットランドという連戦だ。ソチ五輪で銀メダルを獲得したマードックは、優勝候補の一角であり、タフなゲームが予想される。まずはオランダ戦をしっかり勝ち切った上で、アイスの状態、会場の雰囲気にアジャストされ、スコットランドに挑みたい。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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