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米国NYでワクチン・ツーリズム構想

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

以下、ブルームバーグから転載。

【新型コロナ】NYがワクチン観光構想

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-05-06/QSP3WIDWX2QB01?srnd=cojp-v2

ニューヨーク市は観光てこ入れ策の一環として、観光客に新型コロナウイルスワクチンを無料提供することを州当局と検討している。移動接種会場をタイムズスクエアなどに設け、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製の1回接種型のワクチンを提供する構想だと、デブラシオ市長が記者会見で明らかにした。

ワクチン接種で世界に先行する米国ですが、実は既に希望者は凡そ直ぐにワクチン接種が提供される状況にまで至っており、現在はワクチンを意図して打ちたがらないワクチン忌避者への対策に論議の中心が移っています。実は、ワクチン接種で先行する英国や米国でも想像以上にワクチン忌避をする市民が多く、社会がコロナウィルスに対する集団免疫を獲得するレベルにまで達するかどうか、既に懐疑論が出てき始めている状況であります。以下、ニューヨークタイムスからの転載。

Reaching ‘Herd Immunity’ Is Unlikely in the U.S., Experts Now Believe

(※筆者邦訳:専門家らは『米国は集団免疫獲得まで至らない』と確信し始めた)

https://www.nytimes.com/2021/05/03/health/covid-herd-immunity-vaccine.html?smid=tw-share

逆に言うと、表面化した多数のワクチン忌避者の存在によって現在、ワクチン接種で先行する一部の国では、調達したワクチンが現地でダブついている状態でありまして、そのダブついたコロナワクチンを利用して、ようやく正常化しつつある地域の観光振興に繋げようとする施策が、現在、観光業界でしばしば見かけるようになったキーワード「ワクチン・ツーリズム」であります。

要は、現地でダブついたワクチンを観光客に提供し、ワクチンが不足するその他地域からの誘客を図り、現地での観光消費の増大につなげようとする施策。今までこのワクチンツーリズムは、モルジブなどを筆頭に幸いにもワクチン接種で先行した途上国のリゾートなどで施策として行われてきましたが、まさかそれを天下のニューヨーク市が構想するとは、と個人的には驚きを隠せません。

実はニューヨーク市は同時に、「ワクチン・パスポート」と呼称される対コロナワクチンの接種証明書の運用を世界に先行して開始しており、既にワクチン接種者を対象とした「グリーンライトエコノミー(青信号経済)」によって市民生活の正常化が始まっています。要は、コロナによる自粛生活で娯楽に飢えている世界中の観光客をワクチン・パスポートで正常化し始めた市域に誘客し、一気に経済回復を図ろうということ。ワクチン接種とワクチン・パスポート導入に先行できた地域ならではの観光振興策ですが、これが実現すればとんでもない消費が世界中から集まるのは間違いありません。

対して我が国日本は、ワクチン接種率が未だ2%に満たない状態で先行する多くの先進国の後塵を喫している状況。さらに、ワクチン・パスポートの導入に関しても、日本人の海外渡航目的への利用を前提にその検討が進んでいますが、国内での運用は想定していないなどとしています。

【参考】ワクチンパスポート 日本、海外渡航者への発行検討も国内は慎重

https://www.sankei.com/politics/news/210403/plt2104030010-n1.html

非常に情けない限りでありますが、世界の先行する国や地域の生活が徐々に正常化し、活況が戻りつつあるなかで、我が国は未だ緊急事態宣言下による自粛生活と経済停滞に苛まれ続けることになりそうです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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