Yahoo!ニュース

「皆で頑張ってコロナ禍を乗り切ろう」の本当の意味

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

コロナ禍の影響で、今年度の国民負担率は過去最大となるとのことです。以下NHKからの転載。

今年度「国民負担率」 過去最大の見込み 新型コロナで所得減少

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210308/amp/k10012902781000.html?__twitter_impression=true

国の財政赤字を加えた「潜在的な国民負担率」も、16.8ポイント増えて66.5%と、過去最大となる見込みです。新型コロナウイルスの影響で企業業績が悪化し、国民の所得が減少したことや、新型コロナ対策として今年度、3回の補正予算を編成し財政赤字が膨らんだことが要因です。

首都圏では晴天の霹靂で解除基準が変更され、緊急事態宣言の再延長が決定しましたが、当然ながらその分、飲食店などに手当している協力金のコストは増えるわけで、それが巡り巡って国民負担へと転嫁されるわけです。直近の日経新聞によるアンケートでは、今回の緊急事態宣言の再延長に対して8割が賛成とする調査結果もありましたが、この負担増も多くの国民の意向の結果であるといって良いでしょう。

【参考】緊急事態「再延長を」8割 内閣支持率、横ばい44% 本社世論調査

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69516370R00C21A3MM8000/

コロナ禍に直面するこの社会の構成員として改めて認知しておいて頂きたいのは、今回のコロナ禍は広く社会に公平に被害と負担を生んでいるのではなく、特定の産業や業種への従事者に集中する形で「傾斜的に」その被害と負担が生まれているということです。

ともすれば現在の社会状況は、飲食店やその他のレジャー産業とその産業従事者等に対して「皆が我慢しているのに…」などと糾弾の矢を向けがちでありますが、それは全くの間違い。それら産業にかかる多くの経営者は、既にこの先何十年も返済を要する様なトンデモナイ額の負債を抱えながら従業員とその家族の生活をギリギリで支えていますし、そこで働く産業従事者もライフラインとも言える所得そのものが、明日潰えるかもしれない不安、いや人によっては既に潰えてしまった中で生活を送っています。

今回のコロナ禍を地震被害に例えるのならば、彼らこそが震災の中心で私財を失い、ライフラインを絶たれ生存に給している人達であり、多くの「皆が我慢しているのに…」と感じている人達というのは、せいぜい地震の影響による停電被害を受けている程度の被災地の外側に居る人達。繰り返しになりますが、今回のコロナ禍は広く社会に対して公平に被害と負担を生んでいるのではなく、特定の産業や業種への従事者に集中する形で「傾斜的に」その被害と負担を生んでいるワケで、今回のコロナ禍による被害が「皆が我慢してるのに…」程度で収まっている人というのは、寧ろこのコロナ禍では被害者ではなく、真の意味で今回のコロナ禍による被害を受けている人達を「支える側」の立場に居る存在なのだということを改めて認知して頂きたいなと思うわけです。

そして、支える側の立場にいる人達が出来ることというのは、コロナ禍の影響の低い産業分野においてしっかりとこの国の経済を支え、稼ぎ、そして税負担を享受することで被災者を間接的に支えてゆくことあるわけで、よく言う「皆で頑張ってコロナ禍を乗り切ろう」の意味というのは、いわゆる大震災の時に標語として掲げられる「頑張ろう日本!」の意味と変わらない。要はそういう事なんだと私は思っています。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

木曽崇の最近の記事