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eスポーツはオリンピック競技入り出来るか?

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

さて、話題に事欠かないeスポーツであります。目下、世界のeスポーツ業界の最大の目標はオリンピック競技としてのeスポーツの採用です。実は現在、絶賛開催中のピョンチャン五輪においても、わざわざその開催期間に合わせて「ピョンチャン五輪の公認大会」として別途eスポーツの大会が行われて居たりします。

【参照】eスポーツ大会『2018 IEM PyeongChang』が「国際オリンピック委員会」公式パートナーシップの元『平昌オリンピック』公認大会として開催決定

http://www.negitaku.org/news/22018/

一方、日テレ系で放送されている情報番組「スッキリ」にて、昨日ちょうどeスポーツの五輪種目化に関連した番組企画が放送されておりまして、「eスポーツ(対戦型ゲーム)をオリンピック種目に…納得できる?」という視聴者アンケートを取っていました。その結果は「納得できる(9,152票) vs 納得できない(29,939票)」と納得できない派の圧勝であり、残念ながら我が国においては未だeスポーツの「スポーツ」としての認知は低いことが判りました。

【参照】「eスポーツ(対戦型ゲーム)をオリンピック種目に…納得できる?」投票結果

「納得できる(9,152票) vs 納得できない(29,939票)」

https://twitter.com/search?q=スッキリ eスポーツ&src=typd

この様な我が国におけるeスポーツの社会認知状況をよそに、先日、誕生したばかりの国内eスポーツの統合団体である日本eスポーツ連合(JeSU)さんは、JOC(日本オリンピック委員会)への加盟を目標として掲げているワケですが、一方で私が心より心配しているのがこの場におきましても繰り返し解説をしてきたJeSUさんのの一連のゴタゴタが今後のJOC入りに影響を与えはしまいか、という事であります。

これまでも繰り返し申し上げてきたとおり、どうもかのJeSUさんはその組成の段階から問題を抱えているようでありまして、私の見地からはどう分析しても間違っているとしか思えない景表法の解釈に基づいて自身の高額賞金制大会スキームの適法性を長らく訴えてきたかと思えば、実態はどうやら外向けに説明してきたものとは異なる法令回避スキームを内部では展開している様子であったり(ほぼ確実ですが)など、あまり芳しくない状況が続いています。

【参照1】日本eスポーツ連合(JeSU)、高額賞金問題に関するまとめ

https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20180212-00081525/

【参照2】JeSUがついている重大なウソがほぼ確定

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9767315.html

特にJOC加盟という観点から見ると最悪なのが、この度、新設されたJeSUの副会長に就任されました浜村弘一さん(@Gzブレイン)が昨年、日経トレンディのインタビュー企画にて解説したJeSU設立の経緯と、彼等による高額賞金制大会の適法化スキームであります。以下、日経トレンディからの転載。

eスポーツで、ゲームは「プロ野球」になれるか Gzブレイン・浜村弘一社長に聞く

http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/pickup/15/1003590/122101516/?P=3

――AMDの先日の発表では、そうした法的な問題がクリアできそうだということでした(関連記事:デジタルメディア協会がeスポーツ大会の賞金を支援)。法律が変わったわけではないですよね?

浜村氏:  法律が変わるのを待つのではなく、法解釈で対処しようということです。例えば、ゴルフではウェアや用具のメーカーが賞金を出して大会を開いています。これは「プロ」という資格がきちんと認定されているからです。

 ゴルフの一部の大会は、プロもアマチュアも参加できますが、アマチュアが優勝しても賞金はもらえません。プロはあらかじめ機材などをそろえて仕事として競技に挑んでいるので「賞金につられてスポンサーの賞品を買う」わけではない――そこを明確に区別することで、景品表示法の違反には当たらないことになるんです。

 ゲームも同じように「プロ」宣言をすればよかったんですが、「プロ」と呼ぶ根拠がとても分かりにくく、公的に認められづらいものがありました。そこで、JOCへの加入を目指すeスポーツの団体を作り、技術があって、高度なパフォーマンスで観客を魅了できるプレーヤーにプロライセンスを与えようということになったんです(関連記事:プロライセンス発行開始 eスポーツは盛り上がるのか) 。

この浜村氏による景表法回避スキームの解説は完全に間違っているということ、そしてこの法令回避スキームがもし成立してしまった場合は、刑法賭博罪にすら問われかねない事業にまで行き着いてしまうということは、以前にも解説した通りであります。

【参照】日本eスポーツ連合(JeSU)、高額賞金問題に関するまとめ

https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20180212-00081525/

なかでも特に最悪なのが、浜村氏の解説する「そこで、JOCへの加入を目指すeスポーツの団体を作り、技術があって、高度なパフォーマンスで観客を魅了できるプレーヤーにプロライセンスを与えようということになった」という部分。

ここでいう「JOCへの加盟を目指すeスポーツの団体」というのが、まさに出来たてホヤホヤのJeSUであり、その副会長に当該浜村氏自身が納まったわけですが、この発言ってのは見方によっては「JOCの『ご威光』をタテにして、自身の間違った法解釈と不適切な事業を広めてる」ようにしか見えないワケです。そして、この間違った法解釈が行き着くところに刑法賭博罪があるとするのならば、なんとも穏やかな話ではありません。

ということで、この度、一連のJeSUを巡る騒動を率直にお伝えした上で、あくまで「一般論として」スポーツ団体がJOCへの新規加盟を希望した場合、どのような要素をもってその審査が行われるのか。特に、申請団体の行っている事業の遵法性、および健全性の観点からどのような評価が行われるのかをJOCに正式に問い合わせてみました。以下がその公式回答であります。

JOC公式:

現在、正式申請書が同団体より届いていないのが現状であるが、申請書が届いた場合、本会加盟団体規程第4章に基づき本会加盟団体審査委員会(以下:審査委員会」)にて審議を行う。審査委員会は、第4章第1項に定める書類及び当該団体の組織の整備状況、健全性、将来性などを調査することとなる。

私自身は個別具体的な事象に対する回答は難しいだろうと思い、あえて「一般論として」の回答をお願いしたつもりなのですが、JOCさんからは想像以上に大変具体的なご解答をいただけました。公式のコメントによりますと、JeSUからは未だ正式申請書は届いてないものの、その審査にあたっては規定の書類に合わせて「当該団体の組織の整備状況、健全性、将来性などを調査する」とのことでありますから、あまりムチャクチャなことは為さらない方が日本のeスポーツ業界の将来の為かと思われます。

特に繰り返しますが、先述の日経トレンディ掲載の浜村弘一氏によるJeSU創設に至った経緯および、その先にJeSUが事業として展開するプロ認定制度に関しての誤った法解釈の拡散は、今後の活動において致命傷になりはしないかと、これはマジな話、心の底から心配をしております。JeSUさんにおかれましては、当該プロ認定制度に関して改めるべきはキッチリと改め、責任取るべきはしっかりと責任を取らせた上で、ここで一度、全体を総括する事をお勧めいたします。

これは私自身、様々な場所で申し上げてきたことでありますが、かのプロ認定事業などというものは、本来JeSUさんが為すべき大きな役割、アジア競技大会への日本代表選手の送付や、五輪競技入り、そしてその先にあるeスポーツの「スポーツとしての」振興という大儀の前では、「枝葉」の事業であります。小事の前に大儀が失われてしまわぬよう、ぜひ適切に事態の収集を図って頂きますようお願い申し上げ、我が国におけるeスポーツの益々の発展を心よりお祈りいたしております。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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