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クラロワ日本一大会:eスポーツ賞金制大会に朗報

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

さて、11月12日付けの毎日新聞にて以下のような報道がなされました。

クラロワ 日本一決定戦でフチさんが初優勝

https://mainichi.jp/articles/20171113/k00/00m/040/116000c

英ロンドンで行われる世界一決定戦への出場権を懸けたゲームアプリ「クラッシュ・ロワイヤル」(スーパーセル社、以下クラロワ)の日本一決定戦が12日、東京都内で行われ、フチさんがアマテラスさんを3-2と逆転で降し、初優勝を果たした。両者は世界一決定戦への出場権を獲得した。

クラッシュロワイヤルは、スーパセル社の提供する世界的に人気のスマホゲームでありますが、その日本一を決定する全国大会において優勝者が決定したとの報道。この種のeスポーツ大会の結果が毎日新聞のような全国紙にて報じられることそのものも驚きであるのですが、注目すべきは記事内の以下の部分であります。

フチさんは「本当にうれしい。(決勝で2本先取されて)正直負けたと思った。3本目もカード選択をミスしたが、指が勝手に最善手を選んでくれた。続けてきてよかった。クラロワは無課金でも強くなれることを証明できた」と喜びを語った。

なんと本大会で優勝したフチさんは、無課金プレイヤーとして並みいる重課金プレイヤー達を押しのけて日本一の座に輝いたとのこと。実は、このことはeスポーツの賞金制大会においては、非常に大きな「事実の証明」となりました。

私自身が昨年9月に行いました、ゲームメーカー自身が主催するeスポーツの賞金制大会に対する景品表示法の適用確認において「景表法の規制対象から外れ得る」ゲーム種として以下のような法令適用の判断が出されました。

総括:賞金制ゲーム大会を巡る法的論争

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9356604.html

2)有料プレイヤーが大会において必ずしも有利にならないゲーム

一方、スマホや一部PCゲームに採用される基本プレイ無料(free to play)型のゲームの中には、ゲームへの課金がプレイヤーによる競争上の有利/不利を生まないタイプのゲームも存在します。その代表格がゲーム内のスキン販売等で課金をするタイプのゲームですが、この種のゲーム大会に対するメーカーの賞金拠出は景品表示法の規制対象にはならず賞金上限が無制限となるようです。

上記の「基本プレイ無料、かつ有料プレイヤーが大会において必ずしも有利にならないゲーム」というのは、私自身が法令適用の照会にあたって設定をした「要件」であり、消費者庁としては「もしそういう要件のゲームであるのならば景表法の景品規制の対象とはならない可能性がある」との回答が得られたというのが当時の状況です。一方で、この「基本プレイ無料、かつ有料プレイヤーが大会において必ずしも有利にならないゲーム」という要件が具体的にどのようなゲームにあたるのかに関しては明確化はされていないですし、そもそもそのようなゲームが商業的に成り立ちうるのか?に関しても判らない、というのが実態でありました。

しかし今回のクラロワ日本一決定戦によって、世界的なヒット作として商業的に大成功した「基本プレイ無料」ゲームにおいて、有料プレイヤーが大会において必ずしも有利にならないゲーム仕様を実現しうることが立証された。このことは、今後の我が国でのeスポーツ向けゲームタイトルの開発において非常に大きな第一歩となったといえると思います。

但し、ただ一つだけ非常に残念なことは、上記を立証したスマホタイトルが景表法の賞金規制など全く関係ないところで開発されたフィンランド産の国際タイトルであった、ということ。これが、日本のゲーム会社による開発タイトルであったのならば「大金星」として業界全体から拍手喝采を受けたであろう事を考えると、本事案はeスポーツ業界において今年最後の朗報でありながら、同時にガッカリ事案であったとも言えます。私としては、引き続き我が国のeスポーツ業界のご清栄をお祈りいたす所存です。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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