Yahoo!ニュース

2025年大阪万博誘致の問題点

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(ペイレスイメージズ/アフロ)

先日、2025年の大阪万博の誘致活動を開始することが閣議了解されました。以下、毎日新聞からの転載。

<万博>大阪誘致、政府が閣議了解…25年、パリも立候補

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170411-00000016-mai-soci

政府は11日、2025年の国際博覧会(万博)の大阪誘致を閣議了解した。誘致の正式決定を受け、24日の週に博覧会国際事務局(BIE、本部・パリ)に立候補を届け出る方針。官民あげて誘致活動を本格化させる。

で、この閣議了解にあたって経産省側で行われていた検討資料が公開されているのですが、私の目から拝見してどうも問題点があるようで。以下、経産省より。

2025年国際博覧会検討会報告書

http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170407004/20170407004-2.pdf

会場への交通アクセス

[…]夢洲までは、一般道路等の既存の交通アクセスルートに加えて、鉄道延伸や道路拡幅等の将来の整備計画が存在している。

上記資料「会場への交通アクセス」の項目において、「 夢洲までは、一般道路等の既存の交通アクセスルートに加えて、鉄道延伸や道路拡幅等の将来の整備計画が存在」とあります。ここでいう鉄道延伸とは、先日民営化が決まったばかりの大阪市営地下鉄中央線の夢洲までの延伸計画のことを言っていると思うのですが、本計画は現在までの試算では最低でも540億円のコストがかかり、未だそこに確定した予算措置がありません。

大阪府市はこの地下鉄延伸計画にあたって夢洲に統合型リゾートを誘致し、それを担う事業者に費用負担をさせようと皮算用をしているようですが、統合型リゾート導入に関しては、昨年年末に推進法が成立し現在はその具体的な導入手法を定める実施法を政府で整備している真っ最中。これから先、統合型リゾートの導入地域の決定が行われるのは「どんなに早くとも」来年の夏前後であり、今年の秋までにBIE(博覧会国際事務局)に提出をしなければならない万博の詳細実施計画書の策定には絶対に間に合いません。

だとするのならば、夢洲に統合型リゾートが「出来る/出来ない」に関わらず交通アクセスが確保できるように、まずは大阪市側で地下鉄延伸の為の独自の予算措置を行っておく必要がある。最終的にそのコストを統合型リゾート業者に負わせるかどうかの判断は、その後、夢洲への統合型リゾートの誘致が決定した後に判断すべきこととなります。

現在直面している交通アクセスの問題は、元々個別分離して検討が行われてきた大阪の万博誘致と統合型リゾート誘致の計画が様々な経緯の結果一緒になってしまった(松井知事が「鶴の一声」で一緒にしてしまった)ことに起因するわけですが(詳細経緯に関しては以下参照)、

【参照】カジノとの共存!?大阪万博の誘致先に「夢洲」2

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9371401.html

国際コンペでの勝利が必要な万博の誘致に関してはそのような国内の事情は全く勘案されませんし、ちまたで言われているような「憲法改正をしたい安倍政権と維新が~」的な政治的取引も通用しません。

そもそも我が国は2005年に愛知万博を開催したばかりであり、もし誘致が成功すれば88年ぶりの万博開催となるパリと比べると圧倒的に不利とされている大阪の万博誘致。その誘致可能性を高めるためには不確定要素をなるべく小さくしてゆくことが必要なわけで、来るかどうか判らない統合型リゾートを「あて」にした計画は極力避けるべきです。早急に独自の予算措置の検討を行う必要があるでしょう。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

木曽崇の最近の記事