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【FIBAバスケットWC】後半に爆発したエドワーズとディフェンスでアメリカが粘るモンテネグロを撃破

青木崇Basketball Writer
後半で持ち味を発揮したエドワーズ (C)FIBA

「モンテネグロはタフなチームだ。僕たちはプレーする準備が十分じゃなかったと思う」

 アンソニー・エドワーズがこう話したように、アメリカはハーフコート・オフェンスで高い遂行力を発揮するモンテネグロに苦戦を強いられた。シカゴ・ブルズのセンターであるニコラ・ブチェビッチを擁するモンテネグロは、フィジカルの強さを活かしたポストアップを起点にオフェンスを展開。アメリカ出身の司令塔ケンドリック・ペリーが1Q6分46秒にドライブでフィニッシュした時、モンテネグロは11対4と先に主導権を握った。

 アメリカは序盤で10点リードを奪われたニュージーランド戦同様、タイリース・ハリバートンが3Pとダンクを決めるなど、セカンドユニットのステップアップで追撃開始する。1Q中盤でジャレン・ジャクソン・ジュニアが2ファウルとなったことも苦戦の一因になったが、2Q途中で登場したウォーカー・ケスラーがステップアップしたのは大きい。基本的にローテーション外の控えセンターだが、213cmの身長と腕の長さを活かしたディフェンスで、ブチェビッチのポストアップにしっかりと対応。チームメイトが作ったチャンスでダンクを2本叩き込むなど、アメリカが厳しい状況だった時間帯でいい仕事をしていた。

 出場していた選手の中(キャム・ジョンソンは出場時間0分)で唯一無得点だったエドワーズが、3Q最初のオフェンスでジャンプショットを決めたことは、前半でオフェンスのリズムをつかめずにいたアメリカにとって大きな意味があった。高い身体能力とフィジカルの強さを活かしてアグレッシブに攻め始めたエドワーズは、6分16秒にフリースロー2本、5分2秒にジャンプショットを決めるなど3Qだけで10点を奪い、アメリカがリードを奪う原動力になった。

「単なる自信の問題であり、自分を落ち込ませないことだった。前半でチームを失望させたような気がするし、アグレッシブじゃなかった。5本すべてがミスになってショットを打たなくなっていたのが、いつもと違ったということ。だから、自分に言い聞かせる必要があったんだ」

 こう語ったエドワーズはディフェンスでも奮闘し、前半でスローダウンさせるのに苦労していたブチェビッチに対し、ジョシュ・ハートと交代交代でマッチアップ。ローポストで簡単にボールが渡らないように身体を使い、モンテネグロのオフェンスをスローダウンさせるきっかけを作っていた。アメリカのスティーブ・カーコーチは、後半にディフェンスを変えたことでの効果を次のように説明した。

「マッチアップを少し変え、違うディフェンスを見せようとした。彼ら(モンテネグロ)は我々に対してほぼすべてのプレーでポストアップをしていたから、後半は少し対策を変えた。ジョシュとアンソニーがブチェビッチ相手によく戦ってくれたから、JJ(ジャクソン・ジュニア)はブチェビッチから離れ、後ろから全体をチェックするというディフェンス対応ができるようになった」

 モンテネグロは4Q7分15秒、ニコラ・イバノビッチの3Pショットで62対64まで詰め寄った。しかし、エドワーズが6分7秒にステップバックの3Pショット、5分2秒にスティールからダンクを叩き込んだのが決め手となり、アメリカは85対73でモンテネグロから勝利。「もっとフィジカルにプレーしなければならなかった。相手のオフェンスを止めてリバウンドを奪わなければならないし、同じディフェンスをしていただけではダメだ」と反省の言葉を残したエドワーズだが、勝負で違いをもたらすエースと呼ぶに値する活躍をしたのは間違いない。

モンテネグロを牽引したブチェビッチに対し、2Qにディフェンスで奮闘したケスラー (C)FIBA
モンテネグロを牽引したブチェビッチに対し、2Qにディフェンスで奮闘したケスラー (C)FIBA

 18点、16リバウンドのダブルダブルを達成したブチェビッチは、NBAオールスターに2度選出されただけの実力をアメリカ相手でも十分に発揮。「我々はいいプレーをしていたと思う。彼らの出来はよくなかったかもしれない。我々は最善を尽くしたけど、勝つためには十分と言えなかった」と話したが、モンテネグロがグループリーグで全敗だった4年前から大きく進歩したことは間違いない。アメリカのカーコーチも、この試合はいい教訓になったという見方をしている。

「我々にとって素晴らしい試合だった。モンテネグロは素晴らしかったし、本当によくコーチされたチームだと思う。彼らはいいゲームプランを持っていたし、全員が自分の役割を理解し、遂行していた。彼らは23本のオフェンシブ・リバウンドを奪うなど、インサイドを徹底的に攻めてきたけど、対応した選手たちを誇りに思う。オフェンスは我々のゲームじゃなかった。あのような厳しい試合を招いた原因は、ボールをうまく動かすことができなかったことだと思う。でも、こういう試合はいつでも起こるものだし、その中で戦い抜く力が必要だ」

 次の対戦相手は、ブチェビッチ同様にポストプレーが強力なNBAでプレーするセンター、ヨナス・バランチュナスを擁するリトアニア。金メダル奪回を目指すアメリカにとっては、チームとしてさらなる進化を遂げているかを知る絶好の機会になる。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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