NBAの熾烈な生存競争に残るカギはIQとスリー&Dのレベルアップと語る渡邊雄太

ルーズボールにダイブする渡邊。ディフェンスの向上はIQを上げることが必要と認識(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月19日の午前、メンフィス・グリズリーズの2ウェイ・プレーヤーとして2年目のシーズンを終えた渡邊雄太が、オンラインでの囲み取材に対応。約1時間の質疑応答において、上のツイートは謙遜と思えるくらい、自分の思いをしっかり話してくれた。

 成長の実感と悔しさが入り混じった2年目だったことを話した渡邊に対して、筆者が聞いてみたかった要素は2つ。最初の質問は、NBAという限られた人間しか体感できない世界における学びがメインの1年目に比べ、リーグのカルチャーを理解して迎えた2年目は、自らの発見や気づきでどんなものがあり、今後にどう役立てていくのかという点。渡邊はこう答えた。

「これは去年からもすごく感じていたんですけど、試合が2日に1回ある中における相手チームのスカウティングですね。それをいかに自分の頭の中に叩き込むことが必要なのかも感じましたし、例えば相手チームのベテラン選手は自分たちがコールしたプレーを聞いて、”次こういうことをやってくるぞ!”ということをチームメイトに伝えていると試合を見ていて思いました。ああいうことができる選手というのはすごく頭もいいと思いますし、相当映像とかも見て自分たちのことを研究しているんだなと感じました。大学の時はそういう経験というのはあまり…、スカウティングをやっているんですけど、それ以上にNBA選手のほうが当然バスケットボールのIQも高かったりする中で、ベテラン選手のすごさを改めて感じることができました。試合に出るか出ないかがわからない時でもいかに相手がどういうプレーをしてくるのか、相手の選手一人一人の特徴とかをいかに自分の頭に入れておくのが大事なのかというのは、試合を見ていてもすごく感じました」

 渡邉が子どものころから大好きだったコービー・ブライアントは、映像で徹底的にスカウティングをしていた選手。NBAファイナルの激戦から帰宅後、朝方まで試合を見直すことも当たり前にやるなど、情報の引き出しを増やすとともに、体も反応できるようIQを高めていた。常にプレーできる準備をしておくことの大事さは、ここ2年で渡邊が一番実感している部分。ディフェンスで対戦相手のセットプレーやマッチアップする選手の傾向を把握していなければ、出場機会を得られたとしても成果は得られない。

 熾烈な競争の中でNBA選手として生き残るには、数字に出ない要素で他の選手との違いを出せるかが重要。ディフェンスで一定の評価をもらっている渡邊が、相手の傾向をしっかり把握したうえで対応し、IQの高い選手であるとNBA全体に改めて認識させることは、3年目でNBAの本契約を手にするために欠かせない要素の一つと言える。

 もう1つの質問は、渡邊が得意とするミッドレンジのシュートを武器として磨きをかけるのか? それとも現在のNBAに対応すべく3Pシュートの精度を上げ、スリー&Dの選手として存在をアピールしたいのか? というもの。チャンスを何としてでもモノにして本契約を手にしたい現状からすれば、持ち味を犠牲にすることへの躊躇よりも必要とされる部分を会得し、よりレベルアップしたいという考えに至るのはごく自然な流れだろう。

「今はスリー&Dで評価を得たいというのが正直強いです。ミッドレンジというのは自分が昔から得意としていた部分ではあるんですけど、この2年間のNBAで感じたのは、今の自分はそこしかない、そこでしかなかなか勝負できない部分。ミッドレンジというのは嫌われているというか、数字的に期待値がよくないということで、そういうシュートをそもそも打つこと自体がいいと思われないですし、それだけしか武器がないと、このNBAで生きていくというのは絶対に無理です。スピードを生かしてレイアップに持っていくというタイプの選手ではないと思っていますし、スリーポイントとディフェンスをまずできるようになった中にプラスして、自分が元々得意としているミッドレンジを要所要所で出していくのが、大事になってくるかと思うんです。ミッドレンジだけを極めてということが今の自分には求められていないと思いますし、それでは正直この世界で生きていくのが無理なので、スリー&Dを極めたらなと思っています」

 平均17.2点、フィールドゴール成功率54.2%、3Pシュート成功率36.4%という数字を昨シーズンに残したことからも、Gリーグで活躍できることはすでに証明済。現在のNBAに適したサイズやスキルを持っているだけに、スリー&Dでレベルアップした姿をアピールすることは生き残るために欠かせない。いつやってくるかわからない次のチャンスを生かすためにも、渡邊は努力の日々を歩み続ける。