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「コートに出てできる限り貢献したい」。役割が変わっても三河には欠かせない桜木ジェイアール

青木崇Basketball Writer
ポストプレーから得点機会をクリエイトする能力の高さは今も健在の桜木ジェイアール(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 B1得点王のダバンテ・ガードナーを獲得するなど、このオフに大型補強を敢行したシーホース三河が苦しんでいる。第8節を終えた時点で3勝11敗、中地区5位という状況は、シーズン前にだれが予想できただろうか?

 11敗中8敗が6点差以内、2回のオフェンスで追いつける敗戦の連続は、チームもファンもフラストレーションを感じるもの。しかし、ちょっとしたことが勝利、浮上のきっかけになりうるし、三河の現有戦力ならばいつ起こっても不思議ではない。そのカギを握っている選手を選ぶのであれば、筆者は桜木ジェイアールの名前をあげる。

IQの高さを生かした賢いプレーは相手にとって今も脅威

 2001年に来日して以来、大黒柱としてチームを牽引し、数々の栄光を手にしてきた。ポストプレーから得点機会をクリエイトするということでは、43歳となった現在もBリーグ屈指。身体能力やスピード、パワーを武器にするのではなく、賢さと経験を武器に試合でインパクトを与えることができるのだ。

 10月26日のアルバルク東京戦は正にその象徴。ディフェンスで手を出してくる相手から何度もファウルを誘い、フリースローだけで10点を奪う。また、ピック&ロールではゴール下に動くだけでなく、アウトサイドに出て2本ジャンプショットを決めていた。試合の流れや相手の動きを見ての状況判断という桜木の強みを生かせる状況を増やすことができれば、三河の低迷脱却はそう遠くないはず。「ベンチから出てすぐにゲームに順応することは問題ないし、決して難しいことじゃない。体を暖め続けられるかが問題だね」と語ったように、長年慣れ親しんだスターターからべンチスタートという役割の変化には対応できている。

 三河が苦戦している要因は、新メンバーたちとのケミストリーを構築すること以上に、負けゲームの失点がすべて80点を超えているディフェンスだ。桜木は早急な改善が必要だと認識している。

「だれもがそう思うかもしれないけど、ケミストリーの問題だと私は思っていない。ディフェンスを一生懸命やることだ。あまりにも簡単に90点を献上してしまっている。いいチーム相手に90点取られてしまえば、我々は勝てない。何はともあれ、まずはディフェンス。次は一体となってプレーすることだ。それは攻防両面でチームが一つとなり、お互いを信頼し、1対1でタフなショットを打つようなことをしないこと。ボールを動かし、お互いを信じることなんだ。それを私は望んでいる」

コート上のコーチとしての存在感は若いガード陣の助けになれる

 UCLA時代の1995年にNCAAトーナメント制覇を成し遂げるなど、桜木は数多くのビッグゲームを経験済み。ゲームの理解度が高いことは周知の事実であり、司令塔のポイントガード以上にコート上のコーチとして存在感を発揮できる。

「問題を見つけたら、私は修正できると思っている。長い間プレーしてきたし、コート上で起こったことのすべてを見てきたからね。私はコート上にいる仲間をまとめることができるし、何か混乱や問題があれば自分が迅速に解決策を授けられる。ゲームは動いているわけだから、長い話をする時間がない。何かを迅速に伝えることでうまく行くことがある。それがやらなければならない修正であり、それがコーチングなのさ」

 ガードナー、金丸晃輔、川村卓也は、鈴木貴美一コーチが計算できる戦力だ。しかし、スコアラーとして成長著しい岡田侑大、ポイントガードを務める熊谷航と長野誠史と會田圭佑は、いずれも発展途上の選手たちであり、彼らのステップアップが低迷脱却に欠かせない要素の一つ。シュートの機会を求めるのか、アシストを常に優先するのか、プレーを常にコールするのか否かといった状況判断のレベルアップという点で、桜木は助けになれると感じている。自身の経験をベースに、父親のように教えることを厭わない。

「このチームには息子のような選手がいる。(父親のような存在になることは)全然OKだし、それを気に入っているよ。私は教えることが好きだし、彼らにいいプレーをしてもらいたいし、キャリアを通じて成長し続けてほしい。彼らからも学ぶことができる。教えることで私も彼らから助けてもらえる」

Bリーグ史上最年長記録保持者は折茂が相応しい

 桜木と生年月日が約3か月違いで、NBAからのドラフト指名が1998年で同期のビンス・カーター(アトランタ・ホークス)は、今季限りでの現役引退を表明している。まだまだプレーできそう? と来季以降の現役続行の可能性ついて聞いてみると、笑顔を見せながら「Yeah」と返答。Bリーグ最年長の折茂武彦(レバンガ北海道)が今季を最後に引退するため、来季は桜木がその座につく可能性が高まった。だが、その前にチームの立て直し、勝利のためにベストを尽くすことは決して忘れていない。力強い青援でサポートしてくれるファンへ勝利を届けるために…。

「私が最年長のタイトル保持者になるけど、彼の記録は破りたくないよ(笑)。彼の記録にチャレンジしたら、私の脚は折れてしまうかもしれないからね。体の状態はいい。チームの助けになりたいんだ。でも、自分に対して負荷をかけすぎない形で、コートに出てできる限りチームに貢献したい。ただ座っているだけで、リラックスしているといったことはしたくない。まだまだ貢献できると思っている。とにかく勝ちたいんだ」

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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