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B1昇格への強い熱意は本物。経営陣が変わった群馬クレインサンダーズのスタートは上々

青木崇Basketball Writer
開幕戦ではチーム最多を更新する2541人が観戦 (C)Takashi Aoki

 今から約3か月ほど前、東証一部上場企業であるオープンハウスが群馬クレインサンダーズの筆頭株主となって経営することが発表された。9000万を超えると言われる債務超過を抱え、観客動員でも苦戦するチームの現状をどのように変革するのか? また「バスケで群馬を熱くする」ことに本気で向かい合えるのか? この2点は新経営陣が真っ先に直面する大きなチャレンジだ。

 9月21日にヤマト市民体育館前橋で行われた仙台89ersとの開幕戦では、2514人というチーム史上最多の観客動員を記録。翌日の2戦目も1812人が駆けつけた中で2連勝を達成したことからすれば、群馬は新経営陣の下で上々のスタートを切ったと言える。群馬県出身で在籍7年目とチームの低迷期を知るガードの小淵雅は、「ホームコート・アドバンテージを感じられました」と感慨深げに語っていた。開幕戦に駆けつけたBリーグの大河正明チェアマンも、群馬の変化を前向きに捉えている。

「2514人と本当にたくさんのお客さんに来ていただいて、オーナーチェンジもあって、長らくエースだった(トーマス)ケネディ選手(移籍で外国籍選手)が変わったりといろいろ変化があったんですけど、多くのお客さんに見てもらって、ある意味最高の試合ができて滑り出しはよかったんじゃないかなと思います。昨日信州と広島の試合を見ていましたけど、B2のレベルもかなり上がってきて、本当に楽しみなシーズンになると期待しております。スポンサーさんの掲示やコートの周りが黄色くなっていたりとか、ちょっとした工夫が感じられるし、いろいろな集客施策をこれからどんどんやっていかれるのかなという感じで…。今までは強いんだけど若干B1の匂いのしづらい経営体制だったのが、大分そこが変わってきたかなという実感はあります」

新経営陣の下でこのフレーズを語るに値する組織へと変貌しつつある群馬クレインサンダーズ (C)Takashi Aoki
新経営陣の下でこのフレーズを語るに値する組織へと変貌しつつある群馬クレインサンダーズ (C)Takashi Aoki

 2012年の創設以来なかなか勝てずにいた群馬だったが、Bリーグが発足した2016-17シーズン以降はB2の強豪へと飛躍した。特に昨季は43勝17敗で東地区を制し、セミファイナルで熊本ヴォルターズを倒してB2のファイナルに進出。しかし、B1ライセンスを取得できなかったため、優勝した信州ブレイブウォリアーズとともにB1に昇格できないという悔しい思いを味わったのである。

 Bリーグ1年目にB2東地区を制した群馬は、2017-18シーズンにライセンスを取得し、B1昇格に向けて大きなステップを踏むと思われた。ところが、2017年10月7日に行われたホーム開幕戦の観客数は1053人。翌日の2戦目も889人しか埋まらず、ホーム14試合目となる2018年1月20日まで、B1ライセンス取得の条件として定められた平均観客数、1500人を超える試合が一つもなかった。

 フロントオフィスのスタッフだけでなく、選手やコーチも多くの人に観戦してもらえるような活動をしていたことはまちがいない。シーズン後半になってようやく、「B1ライセンス取得に必要な観客数に達していないので協力を」と公言したが時すでに遅し。3月10日のバンビシャス奈良戦では2509人が駆けつけたものの、開幕時から組織として危機感を共有できていなかったのは確か。シーズンの平均観客数が1355人に終わったことと赤字経営から脱却できなかったことからすれば、B1ライセンスを取得できないという結果に驚きはなかった。

 平日の夜とはいえ505人という試合があるなど、昨季は観客動員の苦戦に拍車がかかってしまう。シーズン終盤に10試合連続で1200人以上が駆けつけたものの、平均観客数は1143人まで減少した。ライセンス判定でも財務基準を理由に第1回の審議でライセンスを取得できず、B2に残れなくなるだけでなく、チーム存続の危機と言われても仕方ない状態だった。そんな組織に救いの手を差し伸べたのが、群馬県出身の荒井正昭社長が経営するオープンハウスである。

 経営コンサルタントの仕事をやってきた経歴を持つ北川裕崇新社長の下、群馬は経営基盤がしっかりした強いチーム、B1で戦えるチームを目指した組織作りを開始。「入口としたらまあまあ1つ課題をクリアできたかなと思います」と北川社長が振り返った開幕の2試合において、顧客目線で運営に取り組んでいると感じられたことの一つに、ヤマト市民体育館前橋から少し離れた臨時駐車場からのシャトルバス運行があげられる。群馬がホームゲームで2000人以上の観客をコンスタントに集められるようになるうえで、会場周辺の駐車スペース不足を解消できるかは非常に重要。「無料シャトルを走らせて、なるべくストレスなく足を運んでいただける環境」という言葉を北川社長から聞いた時、何とか現状を打破していい方向に進みたいという強い思いを感じることができた。

 長年苦しんでいるチケットセールスに関しては、オープンハウスがシーズンで11万枚分を購入することで小・中学生の無料招待を実現。また、観客数を増やすための施策として、北川社長は「今までできていなかった行政との連携であったりとか、スポンサー企業様のお金、協賛金だけではなく、企業に勤めている(方々の)福利厚生の一環としてとか、集団というか、アプローチするところを少し変えていきながら、動員というところに対してやっていければと思います。求められているサービスの対価に合ってなかったというのが、昨シーズンまで集客が伸びなかった原因だと思っていますので、お客様から頂いたお金以上のサービスを提供できるようにしていきたい」と語っている。開幕戦ではオープンハウスから20人以上の運営サポートを得られたものの、スポンサーやチケットセールスといった部分を中心に、人材の増強が組織の成長に欠かせない。

 また、チームとしてしっかり興行できる組織作りも必要。試合運営に関しては、トライ&エラーを繰り返しながら質を上げることを目指している。毎試合というわけにはいかないにせよ、4面ビジョンの導入は観客が試合をより楽しめることにつながる点でプラスだった。

「お客様の満足度を下げないように準備していきたいです。チームが勝ってくれたことを含めてつかめた部分はあると思うので、より精度を高めていって期待を裏切らない興行にしていけたらなと思います。(観客数の)アベレージでしっかり2000人を超えて行きたいと思っています。常に2500人以上入れば、(4面)ビジョンの継続もできるでしょう。そういった意味では皆さんに足を運んでいただいて、普段の興行を一緒に作っていっていただければと思っています」

 北川社長は地域のサポートなしにチームの成長もないと認識。「バスケで群馬を熱くする」という言葉に相応しい一体感のある運営と経営の継続は、正に群馬が成功するためのカギと言っていいだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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