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NCAAディビジョン3アカデミック・オールアメリカン選出:青木龍史は正に学生アスリートの見本

青木崇Basketball Writer
大学3年間におけるフリースロー成功率が93.2%の青木 写真提供/青木龍史

 バスケットボールに限ったことではなく、NCAA(全米大学体育協会)の大学でプレーするすべてのアスリートは、学業でも一定の成績を残さなければ試合に出られない。ゴンザガ大でNCAAトーナメントを戦っている八村塁も学業をおろそかにしていないし、渡邊雄太も昨年春にジョージ・ワシントン大を4年間で卒業している。数多くのアスリートがいる中、学業成績とスポーツの両方で素晴らしい学生に対し、NCAAはディビジョンごとにアカデミック・オールアメリカンとして表彰する制度がある。

 3月13日、日本人がディビジョン3のアカデミック・オールアメリカンに選ばれるというニュースが入ってきた。インディアナ州テレホートにあるローズ・ハルマン工科大のガードとしてプレーしていた青木龍史が、サードチームに選ばれたのである。日本であまり知られていない賞だが、NCAAのディビジョン3に所属する約450の大学、19万人以上の学生アスリートがいる中で、たった15人しか選ばれないアカデミック・オールアメリカンに選ばれたことは快挙。青木は正に学生アスリートの見本と言っていい。

 青木は名古屋で生まれ、7歳まで埼玉県戸田市で育った。父親の仕事でアメリカのイリノイ州に移住した後、バスケットボールを本格的にプレーし始める。シュート力のあるガードとして活躍の機会が増え、スティーブンソン高校では2014-15シーズンにクラス4Aというカテゴリーでイリノイ州のチャンピオンシップを獲得し、所属するカンファレンスの優秀選手としても表彰された実績を持つ。

 ディビジョン2の大学から勧誘されたという青木だが、「エンジニアリングのレベルが全米1位なんで、優先したいなと思っていました」という理由で、ディビジョン3のローズ・ハルマン工科大への進学を決断。1、2年生のシーズンこそ控えだったが、3年生となった今季は先発ガードに定着し、1月9日のフランクリン大戦では3本の3Pシュートを含む自己最多の25点を記録している。1月下旬に左足を故障する不運もあり、今季の出場は18試合に終わったといえ、平均12.2点、3Pシュートも39.5%の成功率を残した。3年間で記録したフリースロー成功率93.2%は、個人の通算としてチーム史上最高の数字。ローズ・ハルマン工科大を率いるラスティー・ロイドコーチは青木について、次のようなコメントを残している。

「だれよりもハードワークをし、だれよりもアワードに値する選手に私は今まで会ったことがない。龍史はプレーも学業も不断の努力を続けてきたから、アスリートとして素晴らしい成功を手にしながら、わずか3年で卒業するのは驚きでしかない。ケガでシーズンが短くなるのは見たくなかったけど、彼のことは誇りに思っている」

写真提供/青木龍史
写真提供/青木龍史

 バスケットボール選手としての活躍以上に、青木の学業成績は傑出していた。医療機器の開発やIPS細胞も関連しているBiomedical Engineering(生体医工学)を専攻し、4.0が満点という評定平均値はなんと3.91。青木よりも高い評定平均値でアカデミック・オールアメリカンに選ばれたのは、いずれもファーストチームかセカンドチームに選ばれた学生アスリートばかり。しかし、エンジニアリングの分野で全米1位と評価される大学で3.91という評定平均値を残しながら、バスケットボールでも活躍しただけでなく、3年で生体医工学の学位を取得して5月に卒業できるというのは、ファーストチームに選んでもいいのでは? と思いたくなるくらいすごいこと。学業とバスケットボールの両立について、青木はこのように説明する。

「僕は睡眠をすごく大事にしています。シーズン中でも7〜8時間くらい寝ていますので、時間があれば宿題や勉強をしていました。僕は時間を無駄にしたくないというのがすごくあって、高校の頃から勉強もバスケもレベルが高いところにいて、そうやっていかなければ生き残っていけないという環境だったので、やるしかないという感じでした」

写真提供/青木龍史
写真提供/青木龍史

 学生アスリートとして偉業を成し遂げた青木は、新たなチャレンジとして「卒業した後日本に帰って、Bリーグに挑戦しようと思っています」と口にした。3年間指導してきたローズ・ハルマン工科大のロイドコーチは、Bリーグに所属するコーチと親交があるという。3Pシュートを武器にした182cmのガードとして、青木はBリーグでプレーするチャンスを虎視眈々と狙っている。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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