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シーホース三河、岡田侑大。20歳の決断と覚悟。「プロのほうが後悔しないなと思った」

青木崇Basketball Writer
将来性で鈴木コーチからの期待度が大きい岡田 (C)Takashi Aoki

 東山高が2016年のインターハイとウィンターカップで準優勝した時、岡田侑大は得点センス抜群のガードとして強烈な存在感を発揮。拓殖大に進学後も1年生から中心選手となり、昨年の関東大学リーグ制覇に貢献した。今年は夏にアジアパシフィック・ユニバーシティ・バスケットボール・チャレンジに日本代表メンバーとして参加し、9月12日に延長にもつれた白鴎大とのリーグ戦で58点という大爆発。しかし、チームメイトのドゥドゥ・ゲイがリーグ戦開幕直前にアメリカへの挑戦を理由にチームを去ると、岡田の心は大きく揺らいだ。

「元々特別指定で大学でやっているうちに行こうとは考えていて、チームメイトのドゥドゥがいなくなった時に、本人とも話をしたんですけど、あいつがアメリカ行く前に”自分の夢はアメリカにチャレンジすることだ”って言った。それを聞いた時にいろいろ考えて、大学であと2年間過ごして池内(泰明コーチ)さんのところでうまくなるのも一つだし、思い切って上のレベルのBリーグに挑戦してというのがありました」

 日本の大学レベルであれば、得点することに関しては大きな自信を持っていた。しかし、このままでいいのか? という気持は、アジアパシフィックでプレーした時により強くなる。「一番感じさせられたのは、アジアパシフィックのアメリカ戦で日本の大学では考えられないくらいフィジカルも強くて、どうやったら自分らと同年代であんなに強くなるんだろうて考えた」という岡田は、池内コーチにプロ転向の希望を伝え、10月末に拓殖大を中退した。

 大学在学中であっても、Bリーグでは特別指定選手としてプレーすることも可能だ。しかし、バスケットボール選手としてのキャリアは限られた期間しかないという思いから、岡田は大学を中退してプロの道を歩むことを選択。正に20歳で下した大きな決断である。その理由について、岡田はこう説明する。

「大学卒業するというのは次の人生に大きく関わってくるんですけど、自分はバスケットが一番好き。人生の中でも一番の選択肢なので、勉強せずにずっとバスケットをやっていられるならば、プロのほうが自分は後悔しないなと思った」

 授業を受けた後の夕方から練習がスタートし、自主練習を入れてもバスケットボールを長くできない状況に、岡田はフラストレーションを感じていたのだろう。高校時代の恩師である大澤徹也コーチと話をした際、同年代の選手よりも2年早くプロでやれるアドバンテージの大きさを聞かされたことは、プロ入りという決断の後押しになったそうだ。また、池内コーチがNCAAの選手がNBAにアーリー・エントリーするのと同じと理解し、岡田の気持を受け入れたことも大きい。 

 岡田にとってプロキャリアは、アイシン時代に天皇杯優勝9回、NBLなど国内のトップリーグで5回頂点になったシーホース三河でスタート。岡田の入団を素直にうれしいと感じた鈴木貴美一コーチは、「ここ(ハート:心臓を指して)が僕の気に入っているところ。同級生であろうが先輩であろうがやり返すからね。コートの中では先輩後輩ないので…。ドリブルに対するスピードとクイックネスがある。ジャンプ力はあまりないけど、独特のかわし方を20歳の時点で持っているので、3年くらいしたら本当におもしろい選手になると思います」と評価している。

 もちろん、日本では大学とプロの間に大きなレベルの差がある。特にフロントラインの高さやフィジカルの部分は、日々の練習や試合を重ねることで順応しなければならない。「今でも練習で苦戦していますけど、日本代表に入るためには小さい選手でもセンター陣に負けないフィジカルとかつけないといけない」と語る岡田には、ディフェンスを筆頭にプロとして活躍するためにクリアしなければならない課題がたくさん。しかし、今季終了後にNBAでアシスタントコーチを務める人物によるワークアウトに参加させ、そこでダイヤモンドの原石を磨く第一歩になればという希望を鈴木コーチは持っている。

 岡田は11月16日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦でBリーグデビューを果たし、24日の秋田ノーザンハピネッツ戦で22分6秒間で9点を記録。12月7日のライジングゼファーフクオカ戦では、わずか3分37秒間で7点を奪い、Bリーグでも持ち味を発揮できそうな雰囲気を持たせるプレーをした。しかし、経験豊富なベテランの多いチームでは、出場機会をなかなか得られないローテーション外の選手というのが現状。それでも、高いレベルでバスケットボールをできること、「1、2年目で大学で通用している選手ならば、こっちにきたほうがいいと思います」という言葉が正しいと証明するため、岡田は覚悟を持ってハードワークの日々を過ごすつもりだ。

 

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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