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千葉ジェッツが強い理由。その一つはディフェンスにおける小野のレベルアップ!

青木崇Basketball Writer
非凡なオフェンス能力に加え、今季の小野はディフェンスでも存在感を示している(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 今季開幕前から激戦が予想されたB1東地区は、天皇杯の2連覇を達成した勢いを失わず、持ち味を発揮した千葉ジェッツが制した。どこからでも得点できる選手層の厚さ、ディフェンスからオフェンスへの早いトランジションは、相手にとって脅威でしかない。さらに、平均失点が昨季からわずかな数字といえ0.7減少し、相手の3Pシュート成功率も1.2%下がるなど、ディフェンスもよくなっている。

 そんなチームで見逃せないのが、小野龍猛のディフェンスだ。小野といえば、フィジカルの強さを生かしたポストプレーに加え、3Pも高確率で決められるシュート力を兼備しているスモールフォワード。このポジションでプレーするうえで、走り続けることや素早く動くことで不利になることが以前はあった。しかし、Bリーグ1年目が開幕したばかりのころに比べると、現在の小野は動きによりキレがある。「体重は3〜4kg、体脂肪も3〜4%、まあそんなものです」と語ったように、2年弱の期間で身体が少しスリムになったことで、攻防両面で早い展開に対応できるようになった。

 千葉を率いる大野篤史コーチは、タフなディフェンスでリバウンドを奪った後、速攻やアーリー・オフェンスで得点を奪えるチームを作ってきた。それは、「チームとして成熟できたところはたくさんある。チームとして戦わなければいけないところ、ディフェンスから自分たちのスタイルというところを選手たちがコートでどう表現するかを本当に体現できるようになってきました。目指しているタフなチームに少しずつ近づいているんじゃないかと思っています」というコメントでも明らか。大野のスタイルに対して小野は、順応しなければならなかった部分も多少あった。しかし、今季のプレーを見ていると、オフボールでのディフェンス、特にスクリーンを使って動き回るシューターに対しても、粘り強く走り続けて対応するという点がレベルアップしているのだ。

 シーホース三河を破った今年の天皇杯決勝は、その典型例としてあげられる。B1屈指のシューターであり、オフボールでの動きから一瞬でもフリーになれば得点を奪える金丸晃輔とマッチアップした小野だが、13点を取られたといえ、3Pシュートを6本中2本しか決められていない。逆に小野自身は3Qにトランジションから2本の3Pシュートとジャンプシュート1本を決めるなど、金丸を上回る18点を奪って三河を一気に引き離す要因となった。小野はオフボールのディフェンスについてこう語る。

「自分の課題だと思っていたので、しっかりと克服しようと心掛けていた1年でした。今年に関してはそうですけど、まだまだこれからなところはあります。多少なりともできたところはあるので、もっとレベルアップできればと思っています。もちろん、追いかけることもできますし、スウィッチもできますので、逆にそれはうまく自分でも対応できていると思います」

 大野コーチも小野のディフェンスに対しては、「よくなったと思いますし、彼はゲームに出たいので、失敗すると僕の目を見てすぐに手を上げる。彼自身もそこが欠点と気付いていたと思います。しっかり準備していると思いますし、ストレングス(コーチ)とAT(アスレティック・トレーナー)と彼が話し合った結果だと思います」と高く評価。と同時に、チームを落ち着かせられるといったスタッツに出ない部分での貢献度を理由に、指揮官の小野に対する信頼度は高い。ハーフコート・オフェンスを展開する際、千葉は小野に一度ボールを預ける機会が増えている。得意のポストアップだけでなく、自らピック&ロールで仕掛けることが多いのも今季の特徴だ。

 そういったプレーの増加は、正に小野の視野が広くなったことを示すもの。今シーズンの平均3.3アシストが自己最高の数字であり、2月10日の富山グラウジーズ戦での10本を最高に、小野が5アシスト以上記録した試合における千葉の成績は15勝2敗。「うまく自分自分にならないよう(ボールを)散らして、味方のいいところを生かしてあげたらいいなと思っていました。そういうのができてきたのはすごくよかったと思っています。平均得点(が昨シーズンより)下がりましたけど、僕はそこだけだと思っていないし、しっかり味方を生かすのが特徴だと思う。そこをもっと自分なりのゾーンにできたら、自分のタイプを見つけられたらなと思っています」という言葉は、オールラウンダーとして進化したとわかるシーズンを過ごしていることの象徴である。

 千葉がチャンピオンシップのクォーターファイナルで対戦するのは、レギュラーシーズンの対戦成績が3勝3敗の川崎ブレイブサンダース。抜群の得点センスを持つニック・ファジーカスが帰化選手になったことで、千葉はディフェンスで苦労するシーンも出るかもしれない。しかし、スモールフォワードの小野は、長谷川技と栗原貴宏相手にサイズで優位に立てるだけでなく、オフェンスの起点にもなれる。そのアドバンテージを最大限に生かすことは、千葉が川崎を倒すために欠かせない要素。「僕はもちろんそこを狙ってやるつもりですし、もっともっとチームの勝利に貢献できればなと思っています。得点は大事だと思いますけど、アシストなど相手の嫌がることを一つでも多くできたらなと思います」と、小野自身も理解している。

 クォーターファイナル屈指の好カード。勝敗を左右するカギは小野が握っていると言っていいだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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