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バスケットボールU19代表:終盤の攻防でプエルトリコに競り負け、10位でワールドカップを終了

青木崇Basketball Writer
体調不良ながら今大会で最高となる27点を奪った八村 (C)FIBA.com

U19ワールドカップは、全チームが9日間で7試合というタフな日程を戦い切らなければならない。それでも、延長までもつれたエジプト戦からわずか17時間弱でプエルトリコと戦うことは、日本にとって酷と言ってもよかった。得点源の一人だった西田優大は、両ひざに痛みを抱えていることに加え、エジプト戦でモモカン(太ももの打撲)を2度も食らった影響でこの試合を欠場。トーステン・ロイブルコーチは、杉本天昇を初めて先発で使う決断を下す。

「西田がいないから、自分がやるという強い気持はあった」と語ったように、杉本は1Q6分44秒にクロスオーバーからジャンパーを決めると、3分59秒には増田啓介のアシストで左ウイングから3Pを成功。シックススマンよりも先発がいいと公言するシューターは、西田の穴をカバーしようと奮闘。1分17秒に2本目の3Pシュートを決めて8点目を奪うなど、試合を通じていいリズムでプレイをし続ける。

西田の故障に加え、この日の八村塁はお腹の調子が最悪に近い状態。それでも、試合序盤から積極果敢にゴールへアタックする回数が多く、2Q4分38秒にはポストアップからのスピンムーブで豪快にダンクを叩き込むなど、前半だけ14点をゲットした。3Q序盤まではアグレッシブさを失わず、9分17秒にジャンパーを決めると、日本はこの試合最大となる7点のリードを奪う。しかし、体調不良の影響は、3Q途中から運動量が落ち、まずい判断からパスミスを犯したことでも明らかだった。

プエルトリコはこの時間帯にブランドン・デイビス、ヘスス・クルスがドライブから立て続けにフィニッシュするなど、14連続得点の猛攻で44対37と逆転。「ピック&ロールに苦戦したところがあって、途中で崩れてしまった」と杉本が話したように、日本はドライブへの対応で苦戦。しかし、流れがより悪くなるかと思われた状況でも、このチームは立て直してカムバックできる力をつけていた。ショットクロック残り1秒のインバウンドから、増田が難しいジャンパーを3分50秒に決めると、その後もミドルレンジのジャンパー、ブザービーターとなる3Pを立て続けに成功するなどステップアップ。今大会で何度も見せたタフさで、日本は2点ビハインドで4Qに突入する。

「何試合も前から体調が悪くてきつかった」と話す八村は、3Q1分26秒から4Q6分57秒までベンチで休めたことで、コートに戻ると前半同様のアブレッシブなプレイが復活。6分にポストアップからのシュートで3Pプレイ、4分3秒にアリウープのレイアップ、3分27秒にフリースローを2本とも決めたことで、日本は63対61とついに逆転。直後のディフェンスでプエルトリコを止めたことで、いい流れで終盤に突入できるかと思われた。ところが、ドライブで仕掛けた後の三上によるビハインド・ザ・バック・パスは、シェーファー・アヴィ幸樹に渡る前にターンオーバー。反転速攻からデイビスのレイアップで同点に追いつかれたシーンは、日本にとって大きなダメージとなってしまう。

疲労困憊の中でも日本は最後までディフェンスが奮闘 (C)FIBA.com
疲労困憊の中でも日本は最後までディフェンスが奮闘 (C)FIBA.com

それでも、ディフェンスは粘り強さを何とか継続。残り1分9秒に増田が八村のボールプッシュからレイアップ、残り24.2秒にも「自分がカットインし、フレアで三上さんか塁さんに打たせようとしたんですけど、自分のシュートを選択しました」という杉本のジャンパーで、日本は2度勝ち越した。あと1回止めれば勝てるという最後のポゼッション、キャプテンの三上は流れを悪くしたターンオーバーを挽回するかのように、ホルヘ・パチェコのドライブを止め、増田のブロックショットへとつなげる。

しかし、ボールはアウト・オブ・バウンズとなり、プエルトリコのオフェンスが継続する。残り16.7秒でインバンドパスをもらったクルースが、身長で10cm低く、フィジカルでも優位に立てる三上の上から打ったシュートはまさかのバスケット・カウント。残り12.9秒、プエルトリコは68対67と再逆転に成功した。「お母さんやコーチなど、いろいろな人から後悔しないようにプレイしろと言われた」と語る八村は、クルスのフリースローがミスとなった後にリバウンドを奪取。イタリア戦を再現するかのように攻め込むと、トップの位置から躊躇することなく3Pシュートを打つ。バックボードに当たったボールは、リングの間を2度叩いて入りかけたものの、ポーンっと外に飛び出してしまい万事休す。八村が最後の試合で今大会最多となる27点を奪う活躍を見せたものの、日本は1点差でプエルトリコに惜敗し、10位でU19ワールドカップを終えた。

残り12秒で決勝のシュートをねじ込んだクルス (C)FIBA.com
残り12秒で決勝のシュートをねじ込んだクルス (C)FIBA.com

「今日の我々はいいプレイができなかった。プエルトリコはディフェンスのいいチームということで、ロースコアに抑えられてしまった。西田がいないことで武器がなくなり、ゾーンに対してのオフェンスはうまく行かなかった。でも、言い訳はしない。勝ちたかったけど、選手は責められない。今日もフリースローの確率(58%)が問題となってしまったけど、塁の手にボールが渡り、ラストショットを打てたのはよかったと思う。ベスト・プレイヤーの彼が打って入らなければ、それは仕方がないこと。今日のプエルトリコは強かった」とは、試合後のロイブルコーチ。

日本にとって悔やまれるのは、三上のターンオーバーで同点に追いつかれたことと、プエルトリコのタイムアウト中にディフェンス用のラインナップに変更しなかった2点だろう。ロイブルコーチが終盤でスターターにこだわるのは理解できる。しかし、決勝点を許した局面はあと1回止めれば勝利に前進できる状況。この試合でひどい出来だったしても、榎本新作をクルースに直接マッチアップさせるか、長い腕とクイックネスを理由に、インバウンドをする選手の前に立たせるなど、ウイングのサイズを上げるという策を取るべきだった。試合終盤にオフェンス用とディフェンス用のラインナップを使い分けることは、21世紀のバスケットボールにおける常套手段。これをできなかったのは、ロイブルコーチが抱える弱点だったと言わざるを得ない。

とはいえ、ドイツ人指揮官が日本を世界で戦えるチームに作り上げたことは明白であり、称賛に値する。「大会全般を振り返ってみれば、八村だけじゃなくて、日本は一体となって戦えることが証明できた」という言葉は、正にこのチームを象徴するものだった。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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