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バスケットボールU19代表:最後の1ポゼッションが止められず、2点差でカイロの奇跡を逃す

青木崇Basketball Writer
ビッグショット連発も惜敗に悔しさを隠さなかった八村 (C)FIBA.com

決めてほしいときに決めるのが真のエース。

5点差で迎えた残り15.2秒からのオフェンスで、八村塁はトップからバンクショットの3Pを決める。イタリアが残り8.4秒で1本フリースローをミスした後には、インバウンドをもらうと自身でボールを運び、イタリアの厳しいディフェンスの上から打った3Pシュートが、きれいなアーチを描いてリムの間を通過。「ゴンザガにいるとき、ここへ来る前にコーチ(マーク)フューと話をした際、そういうシュートをどんどん打っていけというのがあった」と話した八村の強い気持から生まれたビッグショット連発で、日本は残り2.4秒で55対55の同点に追いついた。

(C)FIBA.com
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しかし、イタリアは決して冷静さを失わない。タイムアウトをコールしたアンドレ・カポビアンココーチは、トマッソ・オクシリアにラストショットを打たせる指示を出した。日本はオールスウィッチで対応したものの、右のウイングから左コーナーに走ったオクシリアにインバウンドパスが渡ってしまう。体が完全にバックボードよりうしろという状態から放たれたシュートは、日本の夢を砕く決勝ゴールとなって試合終了。カポビアンココーチが「作戦どおりだった」と振り返ったものの、日本にしてみれば、難しいシュートを決めたオクシリアに脱帽するしかなかった。

土壇場で日本を振り切り、喜びを爆発させるイタリア (C)FIBA.com
土壇場で日本を振り切り、喜びを爆発させるイタリア (C)FIBA.com

U19ワールドカップの組み合わせが決まった時点で、日本はグループ戦でマリを倒し、イタリアとトーナメント1回戦と戦うことを望んでいた。前半の日本はディフェンスの頑張りと、イージーショットのミス多発に助けられ、2Qに7分以上イタリアを無得点に抑えることに成功。2Q序盤で8点リードされたが、榎本新作は得意のドライブで存在感を示し、3本のFGすべて成功させるなど9点を奪う。「ちょっと苦しんでいたけど、今日はリズムをつかめた」と語ったように、ハーフタイム直前にはドライブからのキックアウトで西田優大の3Pをアシスト。ディフェンスの奮闘と榎本のステップアップもあり、日本は29対21とリードして前半を終えた。

この試合で悔やまれる点をあげるならば、やはり3Qのスタートだろう。8連続失点であっさり同点に追いつかれただけでなく、その間に3本のターンオーバーを犯していたのである。八村のジャンパー、榎本の3Pプレイとなるドライブなどで追撃し、悪い流れを断ち切ることはできた。しかし、試合全体を振り返ってみると、3Q開始から3分以上無得点の時間を作ってしまったことは悔やまれる。それでも、4Qで4度同点に追いつき、八村のビッグショット連発でミラクルが実現するかもしれないと感じさせる試合をしたことは、このU19代表が世界と戦える力をつけたと言ってもいいだろう。また、ヨーロッパの予選で3位だったイタリアのFG成功率を28%に抑えたことでも、ディフェンスは称賛に値する。

「ヒーローと敗者の差は紙一重。今日の我々を敗者と言うつもりはないし、うなだれる必要もない。ミラクルまで2点足りなかったから、とても痛みを感じる負けだ。何らかの理由で、バスケットボールの神様は我々に味方してくれなかった」とは、試合後のトーステン・ロイブル。西田はドライブした際に左ひざを再び痛めてベンチに下がるなど、プレイしていた選手たちは最後の最後までハードに戦った。ベンチのメンバーたちも、「ディフェンス! ディフェンス」と大声で激励するなど、チームの一体感も素晴らしかった。

津屋らベンチ陣は大声でチームメイトを激励 (C)FIBA.com
津屋らベンチ陣は大声でチームメイトを激励 (C)FIBA.com

22点、14リバウンド、3ブロックショットと攻防両面で奮闘したといえ、八村は「今まで一番悔しい負けかもしれません」と口にした。それは日本が世界レベルで戦えることを示すだけで満足するのではなく、勝つことで日本が変わったことを示したかったに違いない。残念ながら、イタリアを倒してのベスト8進出という日本が掲げた第2の目標は、2点差の惜敗という結果で果たせなかった。

「僕の中ではみんなに悔いがないと思っているし、持っているものをすべて出し切ったと思う。このような負けで落ち込むのはわかるけど、とにかく前に進むしかない」と榎本が話したように、休養日の6日は心身ともにリフレッシュするしかない。順位決定戦で最初に対戦するのは、アジアのライバル韓国。日本が進化したことを示すうえで、大きな意味を持つ試合になる。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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