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【NIKE AACレポート】バスケットボール選手としての可能性で大きな期待が寄せられる田中

青木崇Basketball Writer
まだ中学生ということで今後の成長が楽しみな田中 (C)Takashi Aoki

アメリカ人の父を持つ田中力は、英語が話せることもあり、NIKE ALL-ASIA CAMPに中学生で参加しながらも、他の日本人選手に比べるとすばやく順応していた。日本だと高い身体能力で圧倒的な存在感を示せるが、このキャンプは210cmを超えるビッグマンも多い。それでも、U16日本代表候補であり、トーステン・ロイブルコーチからの期待度の高いガードは、積極的に何度もゴールへアタックし、ミスを恐れない姿勢を見せていた。

「最初来た時は非常に緊張していて、1日目とか全然力出せなくて嫌な思いをしたんです。その思いをいい方向に切り替えて、次の日、自分の長所はハンドリングなので、それをできるだけ見せようと決めたんです。ハンドリングをまあまあできるんだぞとみんなにアピールしようと思い、コーチが気づいてくれて“いいね”と言ってくれたので、それも自分のモチベーションを上げてくれた。このキャンプは周りで僕よりうまいのがたくさんいたので、そこから学んだことがいっぱいあるし、自分ができなかったこともいっぱいあったので、それを日本に帰ってから直して、もっともっといい選手になれるように頑張りたいです」

ボールハンドリングと身体能力で存在感をアピールできたといえ、ファンダメンタル全般でレベルアップしなければならないのは明白。NBAのコーチからはディフェンスのスタンス、心構えを言ったことをアドバイスされていた。また、ジャンプシュートについても、3Pシューターとして相手に脅威を与えられると言うには程遠い。それでも、一つ一つのドリル、ゲームのすべてが、田中の将来にとって大きなプラスである。

「ほぼ全部ですけど、ハンドリングもまだまだと思いましたし、シュート力は周りがすごすぎて結構ビビって、シュート力も上げなければと思いました。メンタルとガードとして周りを見ることところ、パッシングをできたほうがもっといい選手になれると言われたので、ほぼ全部ですけど、ちょっとずつ良くなってきて、ゴールがプロ(になること)なのでそれに間に合えば平気なので、これから頑張ります」

ドリルの合間にディフェンスの指導を受ける田中 (C)Takashi Aoki
ドリルの合間にディフェンスの指導を受ける田中 (C)Takashi Aoki

このキャンプでの収穫をあげるとするならば、ドライブでディフェンスを抜いても、レイアップで簡単に得点できないことを体感したことに尽きる。210cmレベルのビッグマンがブロックに来ても、フィジカルの強さを使ってフィニッシュする術は今の田中にない。「結構みんな高くて、初日もすごいブロックされるなどバタバタしましたけど、2日目、3日目、4日目となってちょっと慣れてきた。高い位置でレイアップにしたり、クラッチしたり、シュートフェイクからパスしたりと、パスフェイクからレイアップを決めたりできた。フェイクとかは(背の)高い人に、高いから高い位置でレイアップしないとブロックされてしまうので、そういったことを学んだ」と語ったが、ポイントガードとして必要なドライブからのキックアウトは、これから武器にしなければならないスキルだ。

NIKE ALL-ASIA CAMPの1週間後、田中はオーストラリアに開設されたNBAアカデミーのキャンプに参加。地元オーストラリアやアジアだけでなく、アフリカからも同年代の選手たちと競争し、NIKE ALL-ASIA CAMPとまったく違う環境でプレイできた。「NBAグローバルアカデミーという世界で12人しか行けないキャンプで、そこでよかったら1回日本に帰ってくるんですけど、3、4年間オーストラリアでバスケットボールや勉強させてくれるんです。選ばれたら(行きます)」と話すように、中学卒業後に海外でプレイすることも視野に入れている。個人的な意見を言わせてもらえば、田中は日本の高校に行くよりも、英語ができることを生かして高いレベルの海外でやるほうがベター。それは、日本にない高さとフィジカルの強さを、毎日体感できることに尽きる。

バディー・ヒールド(サクラメント・キングス)と一緒に行ったドリルを「自分の中でもうれしいこと」と語った田中は、中国人選抜と戦ったアジア選抜、最終日に行われたオールスターゲームのメンバーに選ばれた。これは、キャンプで3番目の年少だった15歳1か月という若さに対し、キャンプで指導したNBAのコーチたちが将来性を買っている証と言えよう。秋に行われる予定のU16アジア選手権で日本代表メンバーに選ばれれば、田中は成功するためのカギを握る存在になるという気がしている。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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