コーチ陣の間に構築された結束力と信頼も、B1を制した栃木ブレックスの強み

選手だけでなく、アシスタントコーチ陣とも強い信頼関係があったウィスマンコーチ(写真:田村翔/アフロスポーツ)

Bリーグのチャンピオンシップでは、ゲーム3が5分ハーフで行われる。シーホース三河とのセミファイナルで激戦を繰り広げていた栃木ブレックスは、12対12の同点で迎えた残り5.9秒にタイムアウトをコールした。トーマス・ウィスマンコーチは選手への指示を出す前に、ショーン・デニス、安齋竜三というアシスタントコーチ2人と話し合いを開始。”俺にボールをくれ”と口にしたライアン・ロシターの強い気持に応えるため、3人は決まれば勝ち、外れたら延長という局面で最善のラストプレイをデザイン。その中からウィスマンが選んだのは、安齋が作った古川孝敏のスクリーンを使い、ロシターがドライブしてフィニッシュするというものだった。安齋はあの局面について、次のように振り返る。

「自分の中では、ファウルをもらってくれればいいなと思っていました。同点だったし、自分の中でパッと思い浮かんだというか、ずっといろいろな絡みを考えて試合をやっていたけど、明確にこれならば行けそうだなというのが出てました。あのような局面で2人が話している間に入っていくのはあまりないけど、あの時だけは体が自然と、”あっ、言わなきゃ”みたいな感じで行ったのです。時間も60秒しかなかったので、パッと行って僕が説明していたら、ショーンとトムが”それでいいんじゃないか”ということで、やれという感じになりました。たまたま選手がきちんと遂行してくれて、成功したということですかね」

昨シーズンまでの栃木であれば、タイムアウト後のプレイはすべてウィスマンがデザインしていた。しかし、ヘッドコーチ経験があり、ウィスマンの下でプレイした経歴のあるデニスの加入は、コーチ陣のコミュニケーションをより円滑にした点で大きなプラス。選手の一人が「昨年までと大きく違う」と話したように、普段の練習や試合で気付いたことがあればすぐに声を出している。通訳が間に入る必要があるといえ、デニスは積極的に安齋と会話し、お互いの気付きを共有できる関係を築いていった。

「チームが成功を手にするには絶対に欠かせない。アシスタントコーチへの信頼がトムの強みであり、ゲーム中でも我々が口を開いて意見を言うことを受け入れてくれる。あの局面は私も安齋もプレイをデザインし、それぞれが違ったものだった。でも、そういった機会を与えてくれるのは彼の強みであり、コーチ陣の結束力をより高めることによってチーム全体の信頼感が強まったから、チャンピオンシップを手にできたんだと思う」

3人の間のコミュニケーションがより活発になったのは、安齋の「ショーンが来たことによって、(ウィスマンとの)間が埋まったというか、ショーンもこちらに歩み寄ってくれて、その中でトムもそうなった。最後のほうはディフェンス面でもオフェンス面でもいろいろ話ながら、戦術とか相手がこう動いてきたらこうしようというのを3人で決めていった。そういった意味では、しっかりコミュニケーションがとれていたから、あの場面でもそういった形になったのかなと思います」という言葉からも理解できる。コーチ陣の間だけでなく、田臥勇太やロシターという中心選手が声を上げた際も、ウィスマンが耳を傾けられるコーチであることがプラスに働いた。それは、三河とのゲーム3でラストプレイをロシターに託したことが証明している。

「45年間コーチしてきた中でどこにランクしたらいいかわからないけど、最も長いシーズンだったと同時に、最も満足感を得られたのはまちがいない。チームが一体となってお互いを信頼し、犠牲を払うことを厭わなかったし、常にお互いを気にかけていた。本当にチームが一つになって手にしたタイトルであり、コーチングをとてもエンジョイできるチーム。ショーンの加入は大きな助けになった。オーストラリアにいた時に私の下でプレイしたし、アシスタントコーチも務めたから、私の人間性もやり方も理解している。安齋も私の下でプレイしていたから、フィロソフィーをわかっているから、コーチ陣の間でいい関係を構築されているんだ」というウィスマンの言葉は、正に栃木ブレックスの中にある一体感、コーチ陣の間に強い結束力と信頼感があることを示すものだった。