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NBAサマーリーグで親友となった2人は、チームメイトとして一緒にプレイする夢を日本で実現

青木崇Basketball Writer
一緒にプレイする長年の夢を実現したピットマンとヴァイニー (C)B.LEAGUE

Bリーグ1部で中地区に所属する富山グラウジーズは、2月26日の試合を終えた時点で9勝32敗と苦しいシーズンを過ごしている。しかし、25日に東地区首位を走る栃木ブレックス相手にアウェイで勝利できたのは、初めて先発で同時起用されたデクスター・ピットマンとドリュー・ヴァイニーの活躍抜きに語れない。ピットマンは今季途中での富山入団だったが、そのきっかけを作ったのはヴァイニーだった。

ピットマンがケビン・デュラント(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)も通ったビッグ12のテキサス大、ヴァイニーは八村塁が在籍するゴンザガ大と同じカンファレンス所属のロヨラ・メリーマウント大の出身。お互いがNCAAで対戦することや交流はなかった。しかし、2012年のNBAサマーリーグでは、マイアミ・ヒートの一員として一緒にプレイした際、チームメイトから親友へと関係が深まったのである。サマーリーグでのスタッツを調べてみると、ともに4試合の出場でピットマンが平均11.5点、4.3リバウンド、ヴァイニーが平均9.5点、5.5リバウンド。現在B1でプレイするロバート・ドジャー(三遠ネオフェニックス)、ラモント・ハミルトン(琉球ゴールデンキングス)もロスターに入っていたヒートの成績は、3勝2敗だった。2人に出会った当時の印象を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「毎日僕の家へ遊びに来ていたけど、彼はすごくプロフェッショナルな選手だということを一目見ただけでわかった。プロフェッショナルである選手とそうでない選手を見分ける力を僕は持っていると思うし、その意識を持っている選手だからこそ、すぐに兄弟のような関係性を築けていけた」(ピットマン)

「最初はトラッシュトークをしてきたんだよね(笑)。よかった点としては、彼がNBAとはどういうものかを先に知っていたので、経験や知識を僕に伝えることができた。僕にとっては、それがよりプロフェッショナルであるための助けとなった。マイアミですばらしい関係性を築けて、そこからずっと同じチームでプレイできたらと願っていた」(ヴァイニー)

ピットマンは4シーズンでNBA経験があり、今季3年ぶりの復帰を目指してトレーニングをしていた。しかし、昨季から富山に在籍しているヴァイニーは、チームが新しいビッグマンが必要になったことを知ると、ピットマンに連絡を入れてすぐに勧誘。富山からのオファーをピットマンが受け入れたことで、「過去3年間ずっと電話で同じチームでプレイしようと彼に言っていたけど、ようやくその機会が生まれた」とヴァイニーは話す。長年の夢が叶ってチームメイトになったといえ、コート上で一緒にプレイする時間帯はここまで少なかった。しかし、25日の栃木戦でボブ・ナッシュコーチは2人の先発起用を決断すると、早速いい結果がチームにもたらされたのである。

タイムアウト中でも隣同士のピットマンとヴァイニー(C)B.LEAGUE
タイムアウト中でも隣同士のピットマンとヴァイニー(C)B.LEAGUE

「本当の意味で一緒にプレイしたというゲームは、これが初めてと言ってよかった。ちょっと足首の痛みがあって、今日はプレイしないかもしれないという感じもあったけど、試合前にコーチがドリューをスタートで使うつもりだと言ったことにすごく興奮して、痛みを押し殺して一緒にコートへ立ちたいと思った。ドリューがウイングでプレイし、僕がポストでプレイすることは、相手にとって抑えるのが非常に難しいだろうと思えたからね」と語ったピットマンは、インサイドで強烈な存在感を示して27点の大活躍。「僕たちはプレイスタイルなどで非常に対極なところにある。でも、何をしたいかというところでは、すごく共通理解を持って取り組んでいるし、(今日)一緒にコートに立ててよかった」と振り返ったヴァイニーも、オールラウンドな能力を発揮することで18点中7点を1Qに記録し、最大で15点のリードを奪う要因となった。

富山には長年チームの核として奮闘しているサム・ウィラードがおり、ナッシュコーチからの信頼も厚い。そんな3人がうまく機能すれば、栃木戦のように上位チーム相手から勝利を手にする機会が増え、B2入れ替え戦回避への道筋も開ける。「起用方法については我々がコントロールできることじゃなく、コーチの判断だ。我々はプロフェッショナルであるがゆえに、求められたものに対して最大限自分の力を発揮するということに関してはまちがいない」というピットマンの言葉は、厳しいことで有名なパット・ライリーが社長を務めるヒートに在籍し、そこ得た経験からくるプロフェッショナルな姿勢そのもの。とはいえ、サマーリーグで出会って以来、ピットマンとヴァイニーが長年の夢だった一緒にプレイできることに喜びを感じているのは、栃木に勝った試合を見れば明らか。2人が一緒にプレイする時間が今後増えたとなれば、富山はシーズン前半よりもタフなチームに変貌しそうな予感がしている。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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