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<ガンバ大阪・試合リポート>『松田ガンバ』の初陣。サンフレッチェ広島戦は2度のリードを奪うも大敗。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

 松田浩新監督の就任からわずか5日で迎えた初陣、J1リーグ26節・サンフレッチェ広島戦。試合は、約3ヶ月ぶりのJ1リーグ出場となったFWレアンドロ・ペレイラのゴールで幕を開ける。開始からわずか2分。自らドリブルで運び、パトリックにパスを送ると、そのシュートは相手DFに阻まれたものの、こぼれ球に反応したペレイラが素早く左足を振り抜き、ゴールネットに突き刺した。

「監督から自分に与えられた役割をパーフェクトに理解できていたし、自分もきっちり仕事ができるんじゃないか、という自信のもとで試合に臨みました。長い期間、試合から離れていたのですが、こうしてゲームに復帰できたのは嬉しいし、その最初の試合で得点ができたことを素直に嬉しく思います(ペレイラ)」

 公式戦から離れている間も、気持ちは切らさなかったと胸を張った。

「メンバーを選ぶのは監督なので、自分がそこに選ばれなかった理由は僕にはわかりません。ですが、日々のトレーニングの中でベストを尽くし、いい状態を維持することは心がけていたし、どんな状況でもモチベーションを高く持ち続けることを自分に求めていました。それが今日、ゴールという結果につながったことは自信になります(ペレイラ)」

 そのわずか9分後には失点を許し、すぐさま試合は振り出しに戻されたが、焦る様子はない。4-4-2システムを敷き、堅守からカウンターに狙いを定めたガンバは、失点シーンを含めてボールの出しどころや局面での甘さを時折、露呈しながらも、全体をコンパクトに保ち、粘り強く試合を進めていく。その中で追加点を奪ったのは約1ヶ月ぶりの先発出場となった齊藤未月だ。前節・清水エスパルス戦はメンバー外という屈辱を味わっていたことも気持ちを燃やす要素になっていたのだろう。自身にとってJ1リーグ100試合目の一戦で、7月2日の浦和レッズ戦以来となるゴールを叩き込んだ。

前節、メンバーを外れて途轍もなく悔しかったし、でも、それなら練習でパフォーマンスを出すしかないと思っていました。自分は何のためにプレーしているのか、サッカーをしているのか、もう一度自分にしっかり突きつけて臨んだ試合でした。シュートシーンは自陣でボールを奪ってからのカウンターで、自分の前にパトリックとレアンドロがいたので、自分は左に流れたら、アラーノ(ファン)からボールがきた。実は前日、貴史くん(宇佐美)たちとシュート練習をしていた時に『ニアに打てば入るよ』って話をしていたので、とりあえずニアに打ったら入りました。貴史くんの助言のおかげだと思っています(齊藤)」

 劣勢を強いられた時間帯もありながら、期する思いを胸にピッチに立っていた二人がゴールを決め、リードを奪うという流れは、後半の勢いに繋がると思われたが、時間の経過とともに試合は広島に傾いていく。得点シーンでやや足を痛めたペレイラがピッチを退き、鈴木武蔵がFWの一角を預かる中で70分過ぎまでは粘り強く試合を進めていたものの、72分に広島に同点ゴールを許すと、その4分後には再び失点。相手のボールの出どころにもプレッシャーがかけられなくなり、また局面でも相手に上回られるシーンが増えていく中で逆転を許してしまう。その状況を受け、三浦弦太を前線に上げてパワープレーを試みたが、逆にそれがバランスを崩す結果となり、守備が崩壊。終わってみれば今シーズン最多の5失点を喫し、またしても白星を掴むことはできなかった。

「最終的には力の差を感じた試合になってしまいましたが、その中でも前半は本当にうまく戦ってくれたと思っています。カウンターから2得点を奪い…1-1の後にちょっと劣勢の時間帯もありましたが、そこを集中力を持って凌げたことが2点目につながりました。後半、相手が出てきた中で、自分たちにもカウンターから3点目を取れるチャンスがありながらそこを決めきれなかったことが今日の試合のポイントだったと思います。その後、ボールを支配される状況が続いていたので一番疲れるポジションのサイドハーフをテコ入れしましたが、不慣れなポジションということもあって逆にそこを(相手に)使われてしまい、ゴール前まで運ばれて、試合を決められてしまった。急造のシステムで不慣れなところや、戦術的なこともあったと思いますが、それらを機能させるにはディテールも大事になる。そこの部分はまだまだやらなければいけないし、全体的にボールへの寄せとか強度がもう少し上がっていかないと、いい試合になっていかないという気もしています(松田監督)」

 昨日までいた仲間がいなくなる。追い求めていたサッカーが、形を変える。それによって個人、ポジションに与えられるタスクが変わり、以前ならNOとされてきたプレーが、YESに変わる。ポジションを得る選手もいれば、失う選手もいる。

 その状況で結果を求めるのは、言うまでもなく簡単なことではない。でもだからと言って、その事実は『結果』が全てとされるプロの世界ではなんのエクスキューズにもならない。それを知る彼らは、だから、言い訳をせずに現実を受け止め、次なる戦いに気持ちを向ける。

「敗戦という結果に終わってしまったのは残念です。残り9試合で勝ちを求めるためにも、自分たちが2度リードを奪いながら逆転されてしまったことはチームとして見直さなければいけない部分だと思います。とはいえ、終わった試合は取り戻せないし、この状況を変える一番の薬は、勝利しかないからこそ、この戦いをしっかりと受け止めて次の戦いに備えたいと思っています。今日は結果が出ませんでしたが、チャンスを作れたシーンはあったし、細かい修正点を改善する準備期間が次の試合までにはもう少し長くあるので、チームとしてしっかり意思統一を図った上で、勝つことだけに気持ちを向けて戦いたいと思います(ペレイラ)」

「チームとしてどう戦うのかが少し明確ではなかった時間帯に、揺さぶられ続けて最後は崩れてしまった。4-4-2のブロックを敷いて組織を作ることを意識して取り組んできた中で、サイドに振られた時は頑張ってスライドをし、距離を近くするように求められていたんですけど、今日みたいに揺さぶられ続けるとどうしても幅ができてしまい、寄せが効かなくなったところで侵入されてしまった。個人的には松田監督になってボランチとサイドハーフの両方で準備するように言われていたんですけど、今日のようにサイドに入った時は、フリックで反対側のFWに入れるようなプレーも要求されているので、そこは意識してやりたいですし、攻撃の時間をもう少し作れるような役割もしていきたいと思っています。ケガで離脱していた中で自分なりにいろんなことをイメージしながら過ごしていて、そのイメージを持って復帰するつもりだったんですが、監督交代になってしまい…。サッカーも変わる中では難しさを感じている部分もありますけど、そんなことを言っている場合ではないので。とにかく今は残り試合を全て勝つしかないという意識で取り組んでいるし、そういった個々の思いを残りの試合にどれだけ集結させて戦えるかが大事になってくると思っています(山本悠樹)」

「4-4-2でしっかりブロックを作り、中を閉じて我慢強く守ってカウンターという『狙っていた形』は立ち上がりから出せたし、その中で、レアンドロが気持ちを見せて先制点を取ってくれたり、追加点を奪えたのはポジティブなこと。チームとして、しっかり意思統一して戦えた部分だと思っています。試合の途中までは、こういう戦い方を続けていけば勝ち点を拾っていけるんじゃないかという手応えもありました。だからこそ5失点を喫したのはすごく不甲斐ない。どういう展開になってもそこを跳ね返していけるような守備を、DFラインとしても、チームとしてもやっていかなければいけないと感じました。こういう試合を勝ち切れないとか、相手にやられた後に崩れちゃう脆さは、今の自分たちの弱さ。そういった部分でもっと強くならなければいけないし、局面でのプレーの強度も、まだまだ出していかないといけないと思っています。大事なのは90分を通してどう戦って、勝ちを掴むか。例えば、前半を劣勢で進めて先制を許したとしても、後半追いついて追い越せば勝ちになるわけで、大事なのは全員がそういうマインドで試合を進められるかだと思うので、そういうパワーを出していけるチームになれるように練習から突き詰めていきたいです(三浦弦太)」

「相手に2失点目を許すまではある程度、自分たちがやろうとしたことができていただけに最後、形を崩してしまい、わずか20分くらいの間に4失点してしまったのはもったいなかった。負ける理由は1つではなく、むしろ、たくさんあるから負けているんだとは思います。その理由を突き詰めることももちろん大事とはいえ、それ以前に、メンタリティの部分で、切り替えのところ、球際のところで、ピッチに立つ11人全員がプラスアルファの力を出して戦う、上回ることができないと、どれだけいい時間があっても、いい戦いができても、こういう終わり方になってしまう。流れが良かった、いい時間があったよね、では、勝ち点は拾えないわけで、だからこそ残りの試合は、本当に全員が、先発で出る選手も途中から出る選手も全員が90分を通して気持ちを強く持ち続けて戦わなければいけないと思っています。(齊藤)」

 次節は8月27日。名古屋グランパス戦。自分たちを信じ、戦い続ける先にある勝利を今度こそ掴み取るために。まだ何も決まっていない未来を、自分たちの手で変えるために。ガンバ大阪は豊田スタジアムに乗り込む。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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