10月2日に行われたクラブ創立30周年記念マッチ。試合前のセレモニーでガンバ大阪は来シーズンから使用する『新エンブレム・ロゴ』を発表した。

「これまでの30年の歴史を胸に刻みながら、新たなガンバ大阪の歴史を作るべくその一歩を踏み出すことを決意しました(小野忠史代表取締役社長)」

 その『一歩』がなぜ、エンブレム変更なのか。

 どうして、エンブレムを変えなければいけないのか。

 現エンブレムへの愛着があるからこそ、戸惑ったファン・サポーターも多かったと想像する。

 ましてや、この日のJ1リーグ・北海道コンサドーレ札幌戦は、1-5の大敗。その悔しさも相まって、どこかスッキリしない、モヤモヤした気持ちを抱えたままの人も多いに違いない。

 そこで改めて、クラブの狙いを考えてみる。数日前に発表されたクラブコンセプト『BE THE HEAT,BE THE HEART』について小野が話した言葉を思い出しながら、だ。インタビューの際、氏が強調したのはサッカーにとどまらない『日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランド』への進化だった。

「今回のクラブコンセプトは、ガンバが熱く激しく燃え上がる青い炎のように、ガンバが様々な熱狂を生み出し、地域、ファン・サポーターの皆さまの中心になっていくという覚悟を言葉に変えたもので『3つのトライアングル』に紐づく思いを込めています。『常勝ガンバ』であるためにプレーで熱狂を生み出し、『タイトル』に向かい続けるクラブであること。大阪からアジア、世界へとガンバ大阪の名前を轟かせる存在になっていくこと。ガンバを愛し、応援してくださる皆さんの中心でスタジアム内外での熱狂、ワクワク感を提供しながら、ホームタウンをはじめとする大阪のシンボルになっていくこと。この3つをリンクさせながら最終的にはガンバを通してさまざまな楽しさ、勇気、元気を提供する日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランドになっていきたいと思っています(小野)」

 この30年。ガンバは着実にファンの数を増やしてきた。『オリジナル10』の1つとしてスタートしたクラブの中でも関西、大阪に限らず全国的にファン層が広がっているのも特徴の1つだろう。ただ、あくまでそれはサッカー界の話。『スポーツ界』ではプロ野球人気には及んでいないし、ジャンルを広げればお笑いの『吉本興業』の方が全国的な知名度は高い。『大阪』のスポーツ界に限定しても、阪神タイガースを上回る人気を集めているのかといえば、残念ながらそうではない。

 では、その状況を覆し、新たなファン層を獲得しながら『日本を代表するエクスペリエンスブランド』になっていくにはどうすべきか。この1年、様々なディスカッションを重ねる中で小野は「向こう10年を意識した抜本的な改革が必要だと思い至った」と振り返る。

「言うまでもなく、我々が第一に描くのは『常勝ガンバ』です。スタイルを追求することはもちろん、それを勝利で結実させることに執念を燃やせるクラブでなければいけないとも思います。ただ、それを実現するには当然ながら収益を膨らませることも、環境を整えていくことも不可欠だし、さらに多くの方たちに応援してもらえるクラブになるべく仕掛けを継続的に行っていかなければいけない。その思いを具現化していく上で、我々クラブ、チームとして、またパートナー企業さまやサポーター、地域の皆さまなどガンバに関わる全ての人が共通の価値観を持って進んでいけるよう、新たなクラブコンセプトを明確に指し示すアイコン、分かりやすい『クラブエンブレム』が必要だと感じました(小野)」

 つまりは、『ガンバは30年を節目に変わります』という決意を示しながら更なる進化を求めていくということだろう。

 その新エンブレムには、見ての通り現エンブレムのように『GAMBA OSAKA』の文字やサッカークラブだとわかるデザインは一切、施されていない。ガンバの頭文字である『G』を造形しているとはいえ、Jリーグやサッカーへの知識が多くない方なら「ガンバのエンブレムだと気づかない」とか「何のマークかわからない」と言う人が出てきても、おかしくはない。

 だが、ある意味、そこにこそ、クラブの覚悟が隠されているように思う。これまで一定層のファンに定着してきたエンブレムを捨てて新エンブレムを背負うのだ。仮に、世間の注目を集めるような明確な変化を示せなければ、また『常勝ガンバ』の姿を取り戻せなければ、『日本を代表するエクスペリエンスブランド』になることはおろか、ガンバの名が広まっていくことも、新エンブレムが輝くこともない。ともすればファン離れだって考えられる。実際、選手たちもその危機感、責任を言葉に変えている。

「エンブレムが変わってもガンバの歴史が変わるわけではない。過去の歴史へのリスペクトを持ちつつ、新エンブレムに強いガンバの歴史を刻んでいくことが自分たちの責任(井手口陽介)」

「正直、アカデミー時代から親しんできた現エンブレムの方が愛着はあります。でも、新エンブレムになると決まった以上、僕らがこれを浸透させるような活躍をしなアカンって思いはめっちゃあります。新エンブレムに強いインパクトを刻めるかは自分たち選手次第。その責任をしっかり感じてガンバの中心選手になっていけるように頑張ります(奥野耕平)」

「アカデミーの頃から慣れ親しんだエンブレムだったので、自分たちも新エンブレムに慣れるのには少し時間がかかるかもしれないけど、クラブの変革を目指した決断をしっかり受け止めたいし、その変革に僕もしっかり力になれるように改めてガンバを背負っていけるような活躍をしなければいけないと思いました(塚元大)」

「エンブレム変更という大きな決断をしたクラブの覚悟を、僕も一緒に背負って戦っていきたいと思っています。この世界では、クラブコンセプトもエンブレムの価値も、最終的にはチームの結果によって浸透していく。だからこそ新エンブレムをつけて、勝利を、胸にある星を増やしていくことがガンバファミリーを代表してピッチに立つ選手の責任だと受け止めています(昌子源)」

「いろんな意見はあると思いますが、僕は新しいことに挑戦するのはいいことだし、それをプラスに変えられるかどうかも自分たち次第だと思っています。そのためには勝つこと、タイトルが不可欠。いい試合をして、面白いサッカーをして、勝って、新エンブレム=ガンバだと浸透させたい(倉田秋)」

「現エンブレムもそうですけど、エンブレムって強いからこそ親しみが湧く。だからこそ新エンブレムを最初に背負う僕らは、そこにしっかりタイトルの歴史を伴わせていくことが責任だし、クラブの描くコンセプト、イメージをしっかりピッチで、サッカーで表現していかなければいけないと思っています(宇佐美貴史)」

 もっとも、彼らの言葉を聞いたとて、誰もがすぐに新エンブレムに愛着が持てるのかといえばそうではないだろう。現エンブレムは30年の時間をかけて、勝利を積み重ね、胸の星の数を増やしながら愛されるエンブレムになったのだ。新エンブレムが今日明日で馴染みのあるものになるはずはない。だが、裏を返せばガンバ30年の歴史において初めての出来事が起きたのだ。もしかしたら、とてつもない変化につながることもあるという見方だってできるはずだ。いや、少なからず私自身はクラブ、チームに芽生えた新たな『覚悟』を聞いて、そう期待を寄せている。