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<GAMBA CHOICE 1>キャプテン・三浦弦太が貫く『自分らしさ』。

高村美砂フリーランス・スポーツライター
「人としても深みが出てきた」と宮本恒靖監督も信頼を寄せる。 写真提供/ガンバ大阪

 今年も、ガンバ大阪の『キャプテン』を担う。

 18年に初めてキャプテンマークを巻いてから4シーズン目。その過程でたどり着いた『自分らしい形』で。

「昔からキャプテンと聞くと、真面目で、だけど熱くて、声でもプレーでも周りを引っ張ってみたいなイメージがあったんです(笑)。思えば高校時代も、3年生になって誰がキャプテンになるか、って話になった時に『ゴミ拾いをちゃんとしていなかった』的な理由で適任じゃないと言われた記憶もある(笑)。実際にキャプテンになった選手も、いろんなところに目を配って、気を遣って、監督と選手の間を繋ぐ役割もして…って、タイプだっただけに余計に『キャプテン=模範生』的なイメージもありました。だからこそ『自分じゃないな』って自覚していたんですけど(笑)、ガンバに加入してゲームキャプテンを預かるようになり…最初こそ、そういうイメージ通りのキャプテンにならなアカンって気負いもあったんですけど、ヤットさん(遠藤保仁/ジュビロ磐田)に『キャプテン像なんて人それぞれ、自由でいい。自分がやれることを、やりやすい方法でやればいいよ』って言われて、だんだんその言葉の意味がわかってきたというか。実際、背伸びしたところで空回りするだけだし、無理にキャラを作って何かを言っても響くわけでもない。それを自覚するうちに僕も気負わなくなったし、近年は特に無理に自分のキャラを変えようとせず、でも責任はしっかりと背負いながら、DFラインを預かる一人として安定したパフォーマンスでチームを落ち着かせるとか、勝利のために体を張るとか、周りに言葉を吐くというように、自分らしくピッチに立とうと思うようになりました」

 昨年10月に遠藤がジュビロ磐田に期限付き移籍をしたことも大きなきっかけになった。遠藤が示してきた存在感が「あまりに大きかった」ことで、逆に割り切りが持てたと言う。

「ヤットさんと同じ存在感を、自分が示せるかといえばそうじゃない。だからこそ自分らしく、でいいのかなと思ったし、心強いチームメイトもいるので。大きな穴だからこそみんなで埋められるように、自分が、自分が、ではなく周りの人に助けてもらいながら、でも、自分もしっかり周りを助けられるようにやっていきたい」

 今シーズンも目標はもちろん、『タイトル』だ。今年の元日、天皇杯決勝で味わった悔しさは、他とは似て非なる感情をもたらし、欲へと変わっている。

「決勝という舞台を経験したことで、より『タイトル』への思いは強くなったし、あの試合で味わった悔しさは必ず今シーズンの戦いに、『タイトル』に、繋げなければいけないと思っています」

 その思いは、新型コロナウイルスによって逆境に立たされた今も揺らいでいない。活動休止を経て迎える今年最初のホームゲーム、アビスパ福岡戦での白星を強く求めるのも、その第一歩にするためだ。

「今年はまだサポーターの皆さんと一緒に勝利を喜び合えていない。そういった意味でも今回の福岡戦をきっかけにできるように、守備陣はゼロにこだわって、攻撃陣は複数得点を狙って、魅力的な試合をして、サポーターの皆さんと喜び合えたらいいなと思います」

 左腕に巻くキャプテンマークに「自分らしく」という責任を携えて。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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