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ガンバ大阪初のタイ人選手の誕生となるか? 18歳のセンターフォワードの動向に注目。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

 12月6〜9日までの4日間、若手中心で行なわれたガンバ大阪の練習にタイリーグのスパンブリーFCに所属するFWキティポット デーンアルン選手(以下、ポン)が参加した。

同選手は、14年に元ガンバ大阪選手の木場昌雄氏(Jリーグアンバサダー)が代表を務める『Japan Dream Football Association(JDFA)』が大会アンバサダーを務めた『U-14 ASEAN Dream Football Tournament 2014』で大会優秀選手に選出。15年5月にはともに選出された2選手とともに5日間にわたってジュニアユースチームのトレーニングに参加したこともある。今回はその時の縁もあり、また、ガンバが取り組むアジア戦略の一環として、U-23チームへの加入を目指し、テストを兼ねた来日となった。

「アジア戦略ということでは、各Jクラブがいろんな取り組みをしていますが、我々もアジアのマーケットは今後、クラブが成長していく上で不可欠なものだと考えています。その中で、今回、木場くんからご縁をいただいて、ポン選手にU-23の練習にテスト参加してもらうことになりました。選手の『成長』を求める上で常々競争は必要だし、国によって文化も考え方も違うと考えれば、日本人選手が外国籍選手と一緒にボールを蹴ることで見えてくることもきっとある。もちろん、我々の目的は第一に日本人選手の成長を促すことですが、グローバルな環境に身を置くことものちのちの彼らのサッカー人生にもプラスの経験値になるはずですしね。といっても、そこに明確な『競争』が生まれなければ意味がないことから、今回はテストという形で来日していただいて、ポン選手のパフォーマンスを確認させていただきました。獲得するかどうかの判断は、協議を重ねて結論を出すことになりますが、足元の技術はあるし、18歳という年齢を考えても、より高いカテゴリーでトレーニングを積めば変化が見られる可能性はあるな、とは感じました(ガンバ/松波正信強化アカデミー部長兼アカデミーダイレクター)」

 基本的にガンバは、12月2日に解団式を行なっており、オフを挟んだ6日から9日まではプロ3年目までの若い選手を中心に、児玉新U-23コーチと山口智コーチのもとでトレーニングを実施。9日に行なわれたステップアップリーグ・関西学生選抜との一戦で締めくくったが、ポン選手は登録の関係上、同大会には出場できないため9日は見学するにとどまった。これを受け、同選手を3日間にわたり指導した児玉コーチは「もともとがシャイなのか国民性なのか、優しく、大人しくも感じましたが、ミニゲームなどでは柔らかいプレーやしなやかな動きが見られた」と話し、ポン選手は「楽しくプレーができたし、いい経験になった」と手応えを語った。

「15年にジュニアユースの練習に参加させてもらった時は、まだ14歳であまりいろんなことを深く考えずにただ来ただけ、という感じでしたが、今はちゃんと自分の目標をもっている中で再びガンバのトレーニングに参加できていい経験になりました。日本のJ1リーグでは今年、チャナティップ選手ら3選手がプレーしていて、刺激になったところもありますし、日本はタイよりも強くてサッカーのレベルも高いと感じているので、チャンスがあるのなら僕もぜひ日本で、ガンバの一員としてプレーしたいと思っています。それが実現すれば、タイ代表に入って、中心選手となり国を背負って戦うという、目標に近づくためにも、すごく重要な意味を持つことになると思います(ポン選手)」

 また、今回の練習参加に際して尽力した木場氏は、自身が立ち上げ、今年で8年目を迎えているJDFAの活動コンセプトの1つが『東南アジア出身のJリーグプレーヤーの輩出』にあることを踏まえ、今回の練習参加を「大きな一歩」と話し、ガンバを始め、各関係者に感謝の言葉を口にした。

「現役を引退し、JDFAを立ち上げて8年。僕たちが毎年、タイで開催している『ASEAN Dream Football Tournament』も今年で4回目を迎えました。以前は14才以下の大会でしたが、現在は15才以下にカテゴリーを広げています。その中では毎回、大会優秀選手を選出し、ガンバさんを始め、横浜Fマリノスさんやサンフレッチェ広島さんなど、Jクラブにご協力をいただいてアカデミー世代のトレーニングに参加させてもらってきましたが、今回、その初代の大会優秀選手だったポン選手が、Jクラブのトップカテゴリーのトレーニングに参加できたことは、僕らの活動としても大きな成果だと感じています。ポン選手は現在、スパンブリーFCという、横浜Fマリノスと提携しているチームに所属していますが、今回の練習参加にあたっては両クラブにもご快諾いただき、スパンブリーのGMには『今回の話がまとまれば、選手にも大きな刺激になる』という言葉もいただいています。特に今、タイではJ1リーグで活躍しているタイ選手への注目度の高さもあり、また、FC東京やセレッソ大阪のU-23にもタイの若い選手が在籍していることから、Jリーグ人気や関心はより高まっています。僕たちもそうした流れをうまく汲み取りながら、真摯に活動を続けていきたいと思っています(木場氏)」

 尚、今回の練習参加についての結論は現時点で出ていないが、仮にポン選手と来季、契約を交わすとなれば、ガンバとしては初のタイ人選手の誕生となる。

<FWキティポット デーンアルン/プロフィール>

2000年6月11日生まれ。178cm、60キロ。タイ人特有の柔らかさとスピードを兼ね備えたストライカー。2014年12月に行なわれたJDFA主催の大会で優秀選手に選出され、翌15年5月にガンバ大阪ジュニアユースの練習に参加し、高い評価を得た。2018年6月にタイリーグ(T1)に所属するスパンブリーFCのトップチームと契約。U-19タイ代表候補にも名を連ねる。通称、ポン。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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