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オジュウチョウサン、東京HJのレース後の状態 ラストランはクリスマスイブに行われる中山大障害

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
東京ハイジャンプ(J・GII)に出走したオジュウチョウサン(撮影:青山一俊)

オジュウチョウサン、中山大障害がラストランに

 ついにこの時がきた。

 障害の絶対王者として圧倒的な強さを誇る一方で有馬記念(GI)にもチャレンジしたオジュウチョウサンが、競走生活にピリオドを打つことになった。

「クリスマスイブの中山大障害(J・GI)をラストランにしたいと思います」とオジュウチョウサンのオーナーである長山尚義氏(馬主名義はチョウサン)。

 オジュウチョウサンは現在11歳で人間で言えば中年期にあたり、アスリートとしては明らかに全盛期は過ぎていた。しかしそれでも、昨冬の中山大障害(J・GI)、今春の中山グランドジャンプ(J・GI)といった大レースを勝ち、未だ障害界のトップクラスにいるのだから、"辞め際"の選定も実に難しかった。

 実際、長山オーナーは長きにわたり、オジュウチョウサンの引退時期については考え続けていた。しかし、16日に行われた東京ハイジャンプ(J・GII)のレースぶりと、レースが行われた東京競馬場へ向かう電車の車中での出来事がオーナーの考えを固めたようだ。

「オジュウチョウサンは年齢は確かに11歳だが、皆がしっかり管理してくれていることもあってレースを走れば結果を出せていましたからね。

 先日、(東京ハイジャンプ観戦のために)電車に乗ったら、オジュウチョウサンのぬいぐるみを持った沢山の人々がいたんです。オジュウチョウサンがこれだけ多くのファンの方々に愛されているのだ、ということを改めて感じました。」(長山オーナー)

パドックを周回するオジュウチョウサンと見守る多くのファンの方々(撮影:青山一俊)
パドックを周回するオジュウチョウサンと見守る多くのファンの方々(撮影:青山一俊)

■2022年中山グランドジャンプ(J・GI) 優勝馬 オジュウチョウサン

「普通の馬なら、間違いなく転倒していた。オジュウだから落馬せずに済んだ」

 15日に行われた東京ハイジャンプではレースぶりに精彩を欠いた。ただ、9着という結果もオジュウチョウサンだからこそ出せた結果だと、その後の厩舎への取材でわかった。

「17日の朝、石神騎手が厩舎までオジュウの状態を見に来てくれました。そのとき、向こう正面で体勢を崩して落馬しそうになったことについて説明してくれたのですが『普通の馬なら、間違いなく転倒していた。オジュウチョウサンだから、なんとか踏ん張って落馬せずに済んだ』とのことでした。」(オジュウチョウサンを担当する長沼厩務員)

 なるほど。確かにオジュウチョウサンは完走したが、それもオジュウチョウサンほどの身体能力があったからこそ出来たこと。そもそも落馬寸前のハプニングを乗り越えて完走できたこと自体が稀にみることであり、体勢を立て直してレースを続けてももっと大きく負けても不思議ではなかったのだ。12頭立ての9着という結果を残念には思うが、それでもオジュウチョウサンだからこそ完走できたのであり、改めて走り抜いたオジュウチョウサンの底力を感じせた一戦だった。

レース後も無事を確認。ラストランに向けての最後の調整へ

 レースから2日経った18日、オジュウチョウサンは改めて獣医の診察を受け、レントゲン等からも大きく痛めた箇所は発見されなかったそうだ。当然ながら、疲労はあるが、それでも無事に過ごせている様子を聞き、とても安心した。

 明日19日、いつものように放牧に出て、順調であればレースの1か月ほど前に美浦トレセンに戻り、ラストランに向けての調整を重ねていくことになる。

 ラストランとなる中山はオジュウチョウサンがこれまで圧倒的な強さを見せてきた舞台だ。無事に走り終えて欲しいと願う一方で、あわよくば有終の美を1着で飾って欲しいと思わせ、それをやってしまう可能性も否定できないのがこのオジュウチョウサンの凄さだ。

 オジュウチョウサンはこれまで、障害界で圧倒的な強さを誇る一方で平地GIにもチャレンジし、ひじょうに珍しい"競馬での二刀流"を実現した姿は多くの競馬ファンの心をつかんだ。とにかく無事にラストランを終えて欲しいと願う。

■2021年中山大障害(J・GI) 優勝馬 オジュウチョウサン

【過去記事】

アイドルホース・オジュウチョウサンの復帰と熱きオーナーの想い(2018年)

有馬記念、オジュウチョウサン9着を称えるファンの声援に陣営は涙。勝者ブラストワンピースなどのその後(2018年)

お見事!中山グランドジャンプ5連覇のオジュウチョウサンが青年から中年まで障害王者として君臨する凄さ(2020年)

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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