クマに襲われる恐れも!守るべき牧場見学、馬の墓参りのマナーとは

馬の牧場や墓の見学にはマナーが必須(絵:いらすとや デザイン:筆者)

忘れ去られていた数十年前の競走馬が再注目されている

 このところ、引退した競走馬や墓の見学を求める動きが驚くほど大きく変化している。「引退馬を見学したい」「馬の墓参りをしたい」という声が相次いでいるのだ。

 こうした現象はゲームやアニメの「ウマ娘」の影響が大きいとみられる。

 競馬に関係する人々のあいだで、この現象は「とてもありがたい」という声をよく聞く。数十年前に活躍した馬や既に死んでおり、血統表の中くらいでしか積極的に語られることもない馬たちが全く違うかたちで眩しいほどの脚光を浴びているのだ。かつてのブームを思い出し"競馬"に立ち返る人もいて、業界的には良い刺激になっている。

 が、しかし。その一方で馬の見学や馬の墓参りのマナーは独得であるが故に、競走馬の生産を営む現場に思わぬ負荷がかかっているという事実もある。

 そこで、馬産が盛んな北海道日高郡で競走馬の生産牧場や馬の墓の案内を取りまとめている「競走馬のふるさと案内所」に話を聞いた。独得かもしれないが、新たなに生まれる"ウマ"のためにも、ぜひ競走馬の生産界ならではのマナーを認識して守って貰えると嬉しい。

競走馬の生産牧場に思わぬ負荷がかかっている

 競走馬のふるさと案内所は、公益社団法人日本軽種馬協会が運営しており、現地案内所やホームページ等の情報サービスを通じて競走馬を引退した馬たちの見学や彼らのお墓についての案内をしている。

 その競走馬のふるさと案内所が先日、【重要】牧場見学のお問合せについて と厳しめの文体で注意喚起を施した。

最近、直接牧場の電話番号を調べに見学問い合わせの連絡をされている方がおり牧場さん大変迷惑していると耳にしております。現在牧場さんは繁殖シーズンのため多忙な時期であり、見学中止とされている牧場が多くございます。このようなことが続くと今後一切の見学中止という状況になることもございますので、見学問い合わせは牧場には直接連絡は行わなず、必ずふるさと案内所にお問い合わせくださいますようお願いいたします。

(出典 「競走馬のふるさと案内所」のホームページより

なぜ、直接牧場に問い合わせずに一旦、競走馬のふるさと案内所を通して欲しいのか。そのあたりをもう少し具体的に聞いたところ、以下のような問題点があげられた。

・直接、アポなしで牧場へ見学希望者がやってくる

・夜遅くに問い合わせの電話がかかってくる

・牧場の敷地内に無断で立ち入る

・多くの馬の墓は牧場敷地内にあるが、案内できない

・馬の墓に食べものなどをお供えとして持参し、そのまま置いていく

 なるほど。まず、競走馬の生産牧場は家族経営で行われているケースも少なくない。春は馬の出産シーズンのため、ただでさえ繁忙期なのだが、そういった中で急に牧場にこられても対応ができない、というわけだ。

 また、馬にまつわる方々は、朝早くに起きるケースが多い。当然、夜は早い時間に就寝する。生活リズムが首都圏で日常を過ごす方たちとはかなり異なるため、"連絡するのに常識的な時間帯"にも大きなギャップがあるだろう。

 牧場の敷地内に無断で立ち入るのは、他人の庭に勝手に入るのと同じである。

 馬の墓については、多くの馬の墓は牧場の敷地内にある。そこへ案内するだけでも人手が必要だ。では、サクラローレルのように公園に墓が設けられているなら自由に参拝できるのだろうか?

「お墓に食べものなどの御供え物を置いたまま、立ち去られる方がいらっしゃいますが、今の季節は冬眠明けのクマがその食べものを目当てに近づくケースがあります。馬のお墓のある公園はその近くに競走馬の生産牧場がありますから、クマが御供え物として放置された食べものに誘われてお墓や近くの牧場を徘徊する恐れがあるのです。」(競走馬ふるさと案内所)

 つまり、好意で置いていった御供え物が将来の競走馬やウマ娘候補生に危害を加えるきっかけになりかねないのである。

「また、時節柄、新型コロナウイルス感染防止という点にも注意しています。」

 生産牧場は少人数や家族だけで経営しているところも少なくない。そんな牧場でひとりが倒れたら、日常のルーティンがまわらなくなる恐れもある。

 とにかく、見学の可否、見学の時間の確認を含めて「まず、競走馬のふるさと案内所に問い合わせてほしい」とのことだ。

 競走馬のふるさと案内所は全国に6つあり、いずれも当地の競走馬の生産牧場と密に連絡を取り合う組合が運営している。つまり、生産牧場との日常的な業務の傍らで案内が行われているので、そのあたりを留意しながら連絡してほしい。

 具体的には7月くらいまでは生産牧場は馬の繁殖シーズンなので繁忙期にあたる。したがって、牧場見学は7月中旬くらいから、というのが暗黙の了解となっている。

 見学ができるのは競走も繁殖も引退した養老馬が中心となっている。養老馬の多くは高齢だし、現役時の古傷を抱えている馬も少なくない。また、中には気が荒い馬もいる。馬は現役時は500キロ前後だが、繁殖馬や引退馬なら600キロから700キロある。人間とは"馬力"が違うことは十二分に心得て欲しい。

 また、繁殖牝馬や仔馬は、そもそも見学ができないケースが多い。種牡馬は種付けシーズンを終えた7月ごろから馬の体調にあわせて放牧地に展示される。厩舎の窓をあけて顔が見れるようになっていることもある。そして、繁殖現役の馬たちは愛玩動物ではなく高額な商品である、ということも忘れないでほしい。

牧場でのマナーを守れないと見学NGが増える恐れも

 「競走馬のふるさと案内所」を通して牧場見学や墓参りの許可を貰ったら、下記にあげる牧場見学のマナーを守った上で楽しんでほしい。

 牧場見学のマナー

・牧場では牧場関係者の指示に従う

・厩舎や放牧地に無断で立ち入らない

・馬には絶対触らない

・馬に食べ物を与えない

・牧場内は禁煙

・撮影時にフラッシュは炊かない

「すでに牧場の日常業務に支障が出ている上、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、見学を取りやめる牧場も出てきています。しかし、馬の生産業界に活気が出るのはとても良いことだし、とてもありがたく思っています。独得ですが牧場ならではのマナーを守っていただくようお願いいたします。」(競走馬のふるさと案内所)

競走馬のふるさと案内所

〒056-0002 北海道日高郡新ひだか町静内神森175-2

0146-43-2121

※日高は夏季(4/21-10/20)は火曜定休日。ただし、祝日の場合は営業

※馬のセリ等での臨時休館日もあり

※日高が休みの場合は他地区の案内所が営業、とのこと

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