Yahoo!ニュース

【阪神JF展望】未知数が多い2歳牝馬の注目馬は!? 白馬のソダシを推す理由

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
札幌2歳Sを優勝した白毛・ソダシ(写真:日刊スポーツ/アフロ)

白毛ソダシの完成度の高さは秀逸、4連勝なるか!?

 12月11日、JRA阪神競馬場で2歳牝馬の女王を決める阪神ジュベナイルフィリーズ(GI、以下阪神JFと略)が行われる。今年は18頭のフルゲートで争われるが、注目は新馬から札幌2歳S、アルテミスSと3連勝中のソダシ(牝2、栗東・須貝厩舎)だ。

 ソダシは、産まれた時は有色だが年をとるにつれて毛色が白く変わっていく芦毛ではなく、産まれた時から毛色が真っ白というひじょうに珍しい白毛の馬である。一般的に白い馬は馬体のハリや艶がわかりにくいが、ソダシは白いながらも馬体のハリツヤを感じさせる。胸前のボリュームといいトモ(お尻)のたくましさといい、2歳牝馬らしからぬ馬格の持ち主だ。

 2歳重賞は、そのレースの時点の完成度がモノをいう。ソダシのように完成度が高く、さらにレースで走りが崩れず成績が安定している馬はとても狙いやすい。

 白馬ということで、ただでさえ人気が集中すると思われるが、それでも推したくなるだけの魅力がソダシにはある。

 今回、阪神JFが行われる阪神競馬場の現在の馬場は、野芝の上に洋芝の種を撒いて育てたオーバーシードと呼ばれる管理状態である。一般的に洋芝は馬場の含水量が多くなるため、野芝のみの場合と比べてクッション性が高く力がいるとされている。野芝と洋芝が混在するオーバーシードは野芝単一のケースよりは軽さはあるが洋芝単一よりは重いとされている。

 ソダシがデビュー戦と2戦目の札幌2歳Sで連勝した札幌競馬場は洋芝でレースが行われている。母のブチコはダートで活躍しているとおり、牝馬だがパワーのあるタイプだ。娘のソダシにもそのパワーは受け継がれている上に、さらに時計の速い東京競馬場での重賞では長くスピードのある走りをも見せて勝っている。ソダシは今後、どのような馬場状態になったとしても、崩れず狙いやすい存在になっていくのではないか、と期待している。

 課題は初めての当日輸送。最初の2戦は札幌競馬場での滞在競馬だったし、3戦目はレース前日に東京競馬場へ移動して一泊してからレースに挑んでいる。まぁ、この時期の2歳馬はひとつのレースで何かしらの課題をこなしていくのは他のどの馬でも同じであるから、気を揉み過ぎても仕方がないといえよう。

■白毛にブチを持つ珍しい馬体&注目の2歳馬ソダシの母、その名も【ブチコ】/カンテレ競馬

アーモンドアイの後輩・サトノレイナス

 アーモンドアイはGI9連勝でターフを去るが、女王を育てた国枝栄厩舎が送り出すサトノレイナス(牝2、美浦・国枝厩舎)の動きは目を見張るものがある。

 父はディープインパクト。新馬戦は素質だけで走っていた印象だが、2戦目のサフラン賞では最後の直線では父の血を感じさせる切れ味のある脚をみせてくれた。まだまだ成長途上だが、現時点でも同世代相手ならじゅうぶん結果を出せる状態にあるはずだ。

■2005年日本ダービー 優勝馬ディープインパクト

モーリス×ジェンティルドンナの夢の配合・ジェラルディーナ

 良血といえば、抽選を突破して出走を決めたジェンティルドンナの娘・ジェラルディーナ(牝2、栗東・石坂厩舎)を忘れてはいけない。母は2012年の三冠牝馬でジャパンカップ等GI7勝のジェンティルドンナだ。父はマイルGIを4勝したモーリスで、2017年1月の引退式で発表された"夢の配合"で産まれた仔だ。母をはじめ、この血統を多く管理している石坂正厩舎に入厩している。

 馬体重が430キロ台と小柄な上にレース間隔が詰まっている点が気になるが、そのあたりはこの血を熟知するスタッフが上手にコントロールしてくれるだろう。

■2015年安田記念 優勝馬モーリス

■2012年桜花賞 優勝馬ジェンティルドンナ

インフィナイトは良馬場でどうか?

 "その血統を知る"という点ではジェラルディーナと同じくモーリス産駒のインフィナイト(牝2、栗東・音無厩舎)は母がモルガナイトの牝系を多数管理している音無秀孝厩舎に所属している点が心強い。この血統にはインフィナイトの兄であるブラックスピネル、叔父にあたるダンビュライト、いとこ叔父(母のいとこ)にあたるクリソベリルなどがいる。勝ったデビュー戦も2着だったサウジアラビアRCも不良馬場だったので良馬場でどのような走りを見せるかは未知数だが、機転の利く走りを見せているし調教でもいい動きをしているので注目したい。

メイケイエールは真面目で前向きなのが心配

 武豊騎乗のメイケイエール(牝2、栗東・武英厩舎)は3連勝中。ここまで芝1200~1400mで勝っており、特に前走はパワフルにレコード時計で制しているのはいいのだが、馬が前に進む気持ちがとても強いのが気がかりだ。今回は1600mだし、今後クラシック戦線を進むなら距離延長への対応が必要になる。真面目で前向きなのだ。さらに200m延びたとき、その気持ちをどのようにコントロールできるのか? 陣営は馬具を工夫して対策を練る。あとは名手の手腕に期待したい。

桜花賞と同じ舞台、来春を見据えて応援する気持ちで

 ポールネイロン(牝2、栗東・矢作厩舎)も前走レコード勝ち。こちらもスピードタイプで芝1400mまでしか経験がなく、距離延長が課題になる。オパールムーン(牝2、栗東・昆貢厩舎)は芝1500mまで経験済みだが、前走の様子から折り合いはつく印象を受ける。

 このように、これから様々なことを経験していく2歳牝馬たちが集まったレースだ。筆者は、未知数が多いのは重々承知しつつ、完成度の高い馬を中心に狙いながら、来春の桜花賞を見据えて応援するような気持ちで観戦している。

 昨年優勝したレシステンシアは今年の桜花賞は2着に頑張った。2017年優勝のラッキーライラックはその後、成長にあわせて大事に育てられ古馬になってからGIを3勝、ラストランの有馬記念でも有力視されている。

 発走は12月13日15時40分。ボーナスを増やすお宝ホースか、はたまたダイヤの原石か、皆さんがそれぞれ何らかのお宝を見つけられますように。Good Luck!

■2019年阪神ジュベナイルフィリーズ 優勝馬レシステンシア

■過去記事

エリザベス女王杯連覇でGI4勝目を狙うラッキーライラック。昨年Vで約2年ぶりに勝利を手にできた理由

阪神ジュベナイルフィリーズ枠順(筆者作成)
阪神ジュベナイルフィリーズ枠順(筆者作成)

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

花岡貴子の最近の記事