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【エリザベス女王杯(GI)展望】調教が好内容だった注目馬は?京都から阪神へのコース変更の影響は!?

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
2019年エリザベス女王杯を優勝のラッキーライラック 写真:山根英一/アフロ

今年は阪神・宝塚記念と同コースでの開催

 今年のエリザベス女王杯は、京都競馬場が改修工事に入った影響を受け阪神競馬場で行われ、京都・外回り2200mから阪神・内回り2200mへと変わる。宝塚記念と同じコースで行われるのだが、内回りで直線の距離こそ短いがタフさが要求される。残り800メートル地点から直線の半ばにかけてはゆるやかな下り坂、そしてゴール前の急な上り坂が待っているのだ。しかも、スタート地点はスタンド横、ホームストレッチのポケット地点であるため、馬たちはこの坂を2回走ることになる。

■2019年エリザベス女王杯 優勝はラッキーライラック(3着はラヴズオンリーユー)

 宝塚記念の開催時期は梅雨の季節だし、馬場は長く使い込まれるタイミングのため、かなりのタフさが要求されるが、今回のエリザベス女王杯は開催が替わったばかりだし、週末は晴れ予報。宝塚記念ほどのタフさは求められないと推測する。

■2020年宝塚記念 優勝はクロノジェネシス(ノームコアの異父妹)

GI馬3頭による決戦 GI3勝のラッキーライラック連覇なるか!?

 今年のエリザベス女王杯は3頭のGI馬が顔を揃える。GI3勝のラッキーライラック(牝5,栗東・松永幹厩舎)、2019年のオークス馬ラヴズオンリーユー(牝4,栗東・矢作厩舎)、2019年のヴィクトリアマイルを制したノームコア(牝5,美浦・萩原厩舎)だ。

 5歳牝馬たちはアーモンドアイと同世代。とくにクラブ所有馬であるラッキーライラックはクラブの規定により6歳3月までに現役を引退しなければならない。よって、このエリザベス女王杯がラストランになる可能性も否めない。全力投球で臨む一戦となる。

■2020年大阪杯 優勝はラッキーライラック

 ラッキーライラックは昨年のエリザベス女王杯優勝馬でもある。昨年は短期免許で来日したクリストフ・スミヨン騎手を鞍上に迎え、1年8か月ぶりの勝利を飾った。今年の鞍上はクリストフ・ルメール騎手。初コンビではあるが、心配は無用だ。

 陣営によれば、心身ともにこの時期に完成期を迎えている。現在はその完成形をキープしている状態だ。

 阪神開催は今年の大阪杯(GI)、2017年の阪神ジュべナイルフィリーズ(GI)を制している。特に大阪杯は内回り芝2000mでスタート地点が200m後ろに下がっただけでコース形状は似ている。GI4勝目とエリザベス女王杯連覇に向けて、視界は良好といえよう。

■過去記事

エリザベス女王杯連覇でGI4勝目を狙うラッキーライラック。昨年Vで約2年ぶりに勝利を手にできた理由

■2017年阪神ジュべナイルフィリーズ 優勝はラッキーライラック

ラヴズオンリーユー復活なるか、ノームコアは持ち味生きるか

 ラヴズオンリーユーは2019年のオークス以来、勝ち星から遠ざかっているのが気がかりだ。

 一般的に牝馬はいちど調子を崩すと立ち直らせるのが難しいもの。デビューからオークスまで土つかずの4連勝と華々しい経歴を持ち、当時は矢作師に「リスグラシューを意識する」と言わせた大器だけに復活を期待したいところだ。前走は久々でプラス12キロ。不振だった春シーズンより状態は上向いているので、叩かれての変わり身に期待したい。

 ノームコアは今年は芝1200mの高松宮記念にも参戦。「定量で出られる競馬が限られている」(萩原師)という理由もあっての参戦だった。前走、芝2000mの札幌記念(GII)を制しているように、忙しい短距離路線よりマイルから中距離くらいのほうが持ち味が発揮できるはずだ。

 ちなみに、ノームコア(父ハービンジャー)の異父妹であるクロノジェネシス(父バゴ)は今年の宝塚記念を勝っている。自身にとっては初コースではあるが、クリアできるのではないか。

■2019年ヴィクトリアマイル 優勝はノームコア

最後にひと花咲かせたいサラキア&センテリュオ

 現在、2連勝中のサラキア(牝5,栗東・池添学厩舎)は5歳にして重賞初制覇。調教駆けするタイプだが、最近はすこぶる調子がよい。前走から距離が400m延びるのが課題だが、今の勢いなら乗り切れるのではないか。

 同じく調教が好内容だったのはセンテリュオ(牝5,栗東・高野厩舎)。長くいい脚が使えるタイプで、高野師も「このコースはセンテリュオに合っていると思う」との見解だ。

 この2頭も所属クラブの規定により現役生活は2021年3月までと決まっているだけに、最後にひと花、咲かせたいところだ。

3歳世代はリアアメリアとウインマイティーに注目

 斤量54キロと2キロ軽い3歳馬ではリアアメリア(牝3,栗東・中内田厩舎)とウインマイティー(牝3,栗東・五十嵐厩舎)を推したい。

 リアアメリアは2歳時から相当な注目を集めていたが、繊細な気性もあって未だGI制覇には至っていない。

 昨今のコロナ禍で競馬場には観客が来場はしているが大声を出しての声援はできない。GIレースが大歓声に包まれないのは寂しい限りではあるが、周囲の状況を気にするリアアメリアにとってこれは有利に働くに違いない。

 叩き3戦目、陣営も「テンポよくスムーズな競馬ができれば」と期待を寄せている。

 ウインマイティーは2000mの忘れな草賞1着、2400mのオークス3着の成績が示す通り、距離延長は大歓迎。父のゴールドシップに似たのか、ゲートがあまりよくないのが難点だが、練習では問題ない。こちらもレースの雰囲気に呑まれずにスタートが切れればチャンスはある。

 エリザベス女王杯(GI)の発走は2020年11月15日15:40。全馬が無事走り切ることを祈る。Good Luck!

2020年エリザベス女王杯の枠順(著者作成)
2020年エリザベス女王杯の枠順(著者作成)

■2020年ヴィクトリアマイル 優勝はアーモンドアイ

■2018年エリザベス女王杯 優勝はリスグラシュー

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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