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「侵略戦争に対して必要最小限で国を守れるのか」反撃能力の保有めぐり河野前統合幕僚長が指摘

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
11月20日夜に都内で講演した河野克俊・前統合幕僚長(高橋浩祐撮影)

政府は年末までに外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を改定する。河野克俊・前統合幕僚長(67)は11月20日夜、東京都内で講演し、その3文書の一番の焦点は反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有だと述べた。そして、「侵略戦争に対して必要最小限で国を守れるのか」と問題提起した。

戦後日本は「専守防衛」を国是とする。防衛省のホームページや防衛白書、国会資料などあらゆるところに「相手から武力攻撃を受けた時にはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則(のっと)った受動的な防衛戦略の姿勢」と今も書かれている。

しかし、北朝鮮は国際社会に盾を突き、核ミサイル開発を強行し続けている。軍拡が止まらない中国も、ウクライナに軍事侵攻しているロシアも、ともに尖閣諸島付近や北方領土を含め、日本周辺での軍事活動を活発化させている。日本を取り巻く安全保障環境が急激に悪化するなか、国民レベルで現実を直視した聖域なき安保論議がこれほどまでに求められる時代はないだろう。

河野氏の発言は以下の通り。

(年末までにまとまる安保3文書の中での)一番の焦点はやはり反撃能力になると思う。おそらくここまでの公明党との協議があって踏み込めないとは思うが、反撃能力を考える際は専守防衛が問われる。専守防衛が何かと言えば、向こうが撃ってきた時に、反撃をしますということだ。これはこれでいいのだが、しかし、その反撃のやり方は自衛のための必要最小限になっている。持つ自衛力が必要最小限になっている。このため、反撃能力も敵基地攻撃能力も必要最小限(の自衛力)を超えるのではないかとの議論になっている。

これはなぜこういうことになっているかと言えば、本を正せば、「日本は戦前あんなに悪いことをしたので、自衛隊の手足を後ろで縛っておかないと何をやりだすか分からない」という思想が根底にあるのだと思う。もちろん日本は侵略をしてはいけない。国際紛争を解決する手段として武力を使ってはいけない。しかし、向こうが武力を使って攻撃してきた時は、やはり精神としては全力で対応するのが普通だと思う。ことさら「必要最小限」「必要最小限」を言うことは、自衛隊に対しても非常に士気を低下させることになる。

例えば、自衛隊はこれは評価を受けていることではあるが、災害派遣をしている。東日本大震災もそうだったが、自衛隊は出動する。その時に、部隊の指揮官が隊員を集めて、「みんな、これから頑張ってこい。ただし、いいか必要最小限でいいんだぞ」なんて言わないですよね?全力でやってこいですよね?こと侵略戦争に対応するのは必要最小限とはどういうことなのか。本当は私はここにメスを入れて欲しかった。しかし、これは(今回は)実現しないと思う。反撃能力が盛り込まれるだけでも一歩前進だとは思っている。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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