新型コロナ禍を少しでも前向きにとらえようとする動画がとても心を打つ。YouTubeで270万回超再生

動画「The Great Realisation」(画面を筆者がキャプチャー)

新型コロナウイルスが今もなお、不眠不休のごとく感染拡大を続けている。世界での感染死者数はすでに25万人を超えた。日本では5月4日、政府の緊急事態宣言が31日まで延長された。

人類とウイルスとの厳しい戦いが続く中、イギリスの映像制作者のトム・ロバーツ氏(26)が4月末に公開した動画が人々の心を打ち、YouTubeですでに270万回以上も再生されている。

動画は、新型コロナウイルスで苦しめられているものの、将来的には世界はより良い場所になるとのプラス思考で、人々に夢や優しさを抱かせている。ポストコロナ時代の世界に希望を見い出すポジティブマインド(前向き精神)であふれている。

動画のタイトルはThe Great Realisation。1929年にアメリカから始まったThe Great Depression(世界大恐慌)をもじっている。realisationには「大事なことに気づく」と「夢を実現する」という前向きな二重の意味が込められている。日本語には「気づき」と「実現」の両方の意味を兼ね備える言葉がないので、訳語としては「世界大認識」や「大いなる気づき」などが良いだろう。

動画は、寝る前に話をせびる男の子を父親が寝かしつける展開になっている。動画に出てくる英語と日本語の意訳は以下の通り。

Tell me the one about the virus again, then I'll go to bed.

男の子:寝る前に、あのウイルスの話をもう一回だけして

But my boy, you're growing weary, sleepy thoughts about your head.

父親:途中で寝ちゃうよ、きっと

Please! That one's my favourite. I promise just once more.

男の子:お願い、あの話大好きなんだ。一回だけでいいから

Okay, snuggle down my boy, though I know you know full well

父親:わかった、ちゃんと横になって聞くんだよ、もう話は全部知っていると思うけど

The story starts before then, in a world I once dwelled.

話の始まりはね、パパがかつて暮らしていた、今とは違う世界なんだ

It was a world of waste and wonder, of poverty and plenty.

そこは無駄と贅沢にあふれた世界、貧困と豊かさにあふれた世界だった

Back before we understood why hindsight's 2020.

「2020年の気づき」が起きる前

You see the people came up with companies to trade across all lands.

当時、人々は世界中で貿易をするために会社を作った

But they swelled and got bigger than we could ever have planned.

けれど、会社は予想を超えてずっと大きくなってしまった

We'd always had our wants, but now it got so quick.

おかげで、誰もが欲しいものをすぐに手に入れられるようになったんだ

You could have everything you dreamed of in a day and with a click.

クリック1つで何でも次の日に家に届く

We noticed families had stopped talking. That's not to say they never spoke.

気がつくと家族の会話がなくなっていた。ひとことも話さないわけではないけど

すでに270万回以上も再生されている動画「The Great Realisation」(YouTubeの画面を筆者がキャプチャー)
すでに270万回以上も再生されている動画「The Great Realisation」(YouTubeの画面を筆者がキャプチャー)

But the meaning must have melted and the work life balance broke.

でも大事な話をしなくなったんだ。仕事と生活のバランスもおかしくなった

And the children's eyes got squarer and every toddler had a phone.

子どもたちはテレビばかり。ヨチヨチ歩きの頃からみな自分の携帯を持っている

They filtered out the imperfections but amidst the noise, they felt alone.

足りないものはなくなった。でも、雑音の中でみんな孤独を感じていた

And every day the sky grew thicker, till we couldn't see the stars.

一方で空は大気汚染が進み、星も見えないほどになった

So we flew in planes to find them while down below we filled our cars.

飛行機に乗れば星は見えたよ。でも地上は車で埋め尽くされていた

We'd drive around all day in circles. We'd forgotten how to run.

人々はどこに行くにも自動車を使い、自分の足で走ることを忘れてしまった

We swapped the grass for tarmac, shrunk the parks till there were none.

舗装道路を作るため、原っぱや公園は次々と消えていった

We filled the sea with plastic because our waste was never capped.

ゴミを規制しなかったから、海はプラスチックだらけ

Until each day when you went fishing, you'd pull them out already wrapped.

釣りにいけば、ラップまみれの魚が釣れる

And while we drank and smoked and gambled, our leaders taught us why,

政治家たちは、みんなに酒を飲み、タバコを吸い、ギャンブルを楽しむよう勧めた

It's best to not upset the lobbies, more convenient to die.

政治運動などせずに、おとなしく死んでいったほうがいいよと

But then in 2020, a new virus came our way.

でも、2020年に新しいウイルスがやってきた

The governments reacted and told us all to hide away.

各国政府は緊急対策を講じ 国民に家から出ないよう指示した

But while we all were hidden, amidst the fear and all the while,

みんな恐怖に震えながら家に閉じこもり

The people dusted off their instincts. They remembered how to smile.

そこで忘れていた本能を思い出したんだ。笑い方を思い出し

They started clapping to say thank you, and calling up their mums.

「ありがとう」と言うことを思い出した。実家の母に電話をかけることを思い出した

And while the cars keys were gathering dust, they would look forward to their runs.

車のキーなんかに目もくれず、外でジョギングできる日を楽しみにするようになった

And with the sky less full of planes, the earth began to breathe.

飛行機に乗る人が減り、地球はまた呼吸できるようになった

And the beaches brought new wildlife that scattered off into the seas.

海岸には海の生き物が増え、人が近づくと海に逃げ込む姿が見られるようになった

Some people started dancing, some were singing, some were baking.

家に閉じ込められて、ダンスを始める人。歌を歌い出す人。パン焼きに挑戦する人もいた

We'd grown so used to bad news but some good news was in the making.

それまでは恐ろしいニュースばかりだったのが、ちらほらと良いニュースも聞こえてくるようになった

And so when we found the cure and were allowed to go outside,

とうとうウイルスの治療法が見つかると、外出が許されるようになった

We all preferred the world we found to the one we'd left behind.

そして久しぶりに外に出た人々は、この新しい世界のほうが、ウイルス登場前の世界よりもいいと気づいたんだ

Old habits became extinct, and they made way for the new.

こうして、ウイルス登場前の暮らし方はこの世から消えた。みんな新しい生き方をするようになった

And every simple act of kindness was now given its due.

どんな小さな優しさにも、人々はちゃんと感謝するようになったんだ

But why did it take a virus to bring the people back together?

男の子:でも、みんながもう一度仲良くなるために、どうしてウイルスが必要だったの?

Well, sometimes, you got to get sick, my boy, before you start feeling better.

男性:あのね、良い気分になる前には時々、病気にならなければいけない時もあるんだ

Now lie down, and dream of tomorrow, and all the things that we can do.

さあ、横になって明日の夢を見よう。明日はどんな夢が叶うかなって

And who knows, maybe if you dream strong enough, make some of them will come true.

本気で願えば、夢のどれかは実現するかもしれないよ

We now call it the Great Realisation, and yes, since then there have been many.

このウイルス大流行を今ではみんな「大いなる気づき」と呼んでいる

But that's the story of how it started, and why hindsight's 2020.

その最初のきっかけが、このウイルス大流行だったんだ。だから「2020年の気づき」というわけ

以上が動画の英語台詞(せりふ)と日本語訳となる。

人間はあまりに息せき切って文明開発に進み、大事なものを失ってきたのではないか。近代国家を目指して突き進んだ日本の「坂の上の雲」と同様、あまりにも多くの物を求めすぎてきたのではないか。新型コロナウイルスはそれに気づくきっかけをもたらしていないか。筆者はこの動画を見て、率直にこう思った。

最後に翻訳に快く協力してくれたドイツ・ハンブルク在住の翻訳家、倉田幸信氏と、2019年度内閣府主催「世界青年の船」に一緒に参加したサイーダ・ラザックと徳山貴哉の両氏に心より感謝を申し上げたい。