新人王争う西武・松本航とソフトバンク・甲斐野央。ともにプレーした中学時代を恩師が語る

日本シリーズでも活躍が期待される甲斐野央(写真は大学日本代表時/筆者撮影)

 プロ野球クライマックスシリーズのファイナルステージで日本シリーズ出場を争った西武とソフトバンク。新人ながら両チームの躍進に貢献したのが松本航(西武)と甲斐野央(ソフトバンク)の両右腕だ。それぞれが日体大、東洋大の先発投手として2017年の明治神宮大会準決勝で対戦(松本が勝利)し、今年は新人王争いもしている2人だが、中学時代にも共にプレーをしていたことがあった。

 当時の恩師がその思い出や学校の枠組みを超える活動の意義を語った。

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山本泰博(やまもと・やすひろ)・・・1970年8月20日生まれ。兵庫県朝来市出身。大阪体育大まで野球を続け卒業後、中学教諭に。数々の部活の顧問を経て野球部監督に。現在の兵庫教育大附中が赴任6校目。

学校の枠を超えて

 2007年、様々なサポートを得て山本泰博監督がMAJOR HYOGO(以下、メジャー兵庫)は立ち上げられた。その理由を山本監督はこう説明する。

「高校の監督さんとも話す中で、中学軟式(出身選手)の欠点は“ボールやバットの違いではない。(全国大会に行けず)6月や7月に部活動の公式戦が終わった後に何も大会がない。だから、気持ちも切れるし体力も追いつかなるんだ”ということになったんです」

そうした思いもあり現在の全国中学生都道府県対抗野球大会の前身大会に出場するためのチームを作った。

 時折、県選抜チームと誤解されることも多いが、県全体でメンバーを選抜したわけではなく、応募があった者たちのみの中で選考をしているため県選抜という形ではない。

 ただ、各地から選手が集まることで、それぞれのチームでは“お山の大将”のような選手でも「こんな凄い選手がいるのか」と刺激を受けたり、自らの立ち位置を知ることができるのは大きなメリットだ。指導陣の中でも「俺ら(が現役)の頃にもあったら良かったのに」という声があるほどだと、山本監督は大いに意義を語った。

 そんな活動の中、2期生は田村伊知郎(西武)が中心となって準優勝。そして4期生に現在、日本プロ野球界で活躍を遂げてパ・リーグの新人王争いをする松本航(西武)と甲斐野央(ソフトバンク)がいた。

「自信を掴んだ」松本

 松本は山本監督と同じ朝来市の出身。ただ、本人は自信なさげで、山本監督の出身高校の野球部の先輩であった父親は「メジャー兵庫に行かせたいんだけど、気が弱くて自信が無いからか“行かへん”と言うてる」と相談していたほどだったという。ただ松本と同僚の選手が選考会に参加するということで、松本も参加し選考に合格することになった。

 そしてこのメジャー兵庫での活動によって、松本は大きな変化を遂げたという。

「自チームの捕手は松本の投げるスプリットを止められなかったんです。でもメジャー兵庫では浦岡真也(東洋大姫路→東洋大→西濃運輸)という捕手がいて、彼と出会って松本は変わりましたね。自信を持ってスプリットを投げるようになり、どんどん成長しましたね」

 当初はエースを別の投手にしようとしていた山本監督だったが、大会が近づくにつれ松本の方が好投するようになり、チームのエースとして好投を続けた。そして大会初優勝(第6回KB全国中学生秋季野球大会)に大きく貢献することとなった。

明石商、日体大(当時の写真)で活躍し今季から西武でプレーする松本航。プロ1年目から7勝を挙げた。
明石商、日体大(当時の写真)で活躍し今季から西武でプレーする松本航。プロ1年目から7勝を挙げた。

「面白いから」で合格した甲斐野の急成長

 一方で、甲斐野はギリギリの選出だった。西脇市の黒田庄中学に在学し、山本監督の指導する中学ともよく練習試合をしていたが「綺麗にそこそこの球を放る普通の良いピッチャーでした」と印象を語る。ただ甲斐野には大きなセールスポイントがあったという。

「とにかく面白い子でした。人懐こくてね。残っている写真でもいつも変なポーズとかしていますよ(笑)選考会でも特に光るものは無かったけど、面白かったから、この子は採ろうとスタッフに話しました」

 能力的には当初の見立てはチーム内で「18人中16番目くらいでした」と正直に振り返る。

甲斐野もまた当初は周囲のレベルの高さに戸惑っていたが、同期の仲間たちと切磋琢磨する中、その前向きな性格と恵まれた長身の体格を生かした力強い打撃を見せるようになり、気づけば4番・一塁手して優勝に貢献することとなった。

東洋大姫路、東洋大とプレーして今年からはソフトバンクでプレーする甲斐野央。新人ながらセットアッパーとして65試合に登板。10月19日からの日本シリーズでも活躍が期待される。
東洋大姫路、東洋大とプレーして今年からはソフトバンクでプレーする甲斐野央。新人ながらセットアッパーとして65試合に登板。10月19日からの日本シリーズでも活躍が期待される。

彼らに続く逸材候補が静岡に集結

 もともと自信をあまり持てずにいた松本、能力の高い選手たちの集まりの中に入ることで自信が萎んだ甲斐野。そんな2人が大きな自信を掴んで中学最後の大会を終えることとなった。その後の彼らの成長は前述や周知の通り。この大会の意義は大きい。

 今年の全国中学生都道府県対抗野球大会は11月2日に静岡県で開幕(開会式は11月1日)。前身の大会から数えて19回目を迎え、48チームが出場する。彼らのように学校の枠を超えてプレーすることで、その可能性を大いに広げる選手が今後も多く出てくることに期待したい。

※同大会出身のプロ野球選手同大会出身のプロ野球選手

(一般財団法人日本中学生野球連盟ホームページ)

文・写真=高木遊