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今度は逆にタカ笑う?「第2の大竹」はソフトバンク入りした長谷川威展か【嘉弥真と意外な共通点】

田尻耕太郎スポーツライター
ソフトバンク入団会見を行った長谷川

 現役ドラフトで日本ハムからソフトバンクに移籍した長谷川威展投手(24)が11日、PayPayドーム内で開かれた入団会見に臨んだ。背番号は「59」に決まり、新天地での来季に向けて「50試合登板を目指して頑張りたい」と意気込んだ。

今季はファームで最多勝

 球界で希少な変則フォームの中継ぎ左腕であり、まだ今季が大卒2年目という若さも魅力。今季は1軍9試合の登板ながらも防御率1.08の成績を残した。さらにイースタン・リーグでは34試合(42投球回)に登板して8勝0敗、防御率3.00で、リーグ最多勝に輝いた。

 昨年の第1回現役ドラフトではソフトバンクから阪神に移った大竹耕太郎投手が大ブレイク。ソフトバンク最終年は2試合0勝2敗、防御率6.43の成績だったのが今季は21試合12勝2敗、防御率2.26と飛躍して阪神38年ぶり日本一の原動力となったが、今回は逆にソフトバンクにやってきた長谷川に「第2の大竹」として期待する声も大きい。

ソフトバンクは左の中継ぎを切望

左が三笠GM
左が三笠GM

 ソフトバンクの三笠杉彦GMも「左の変則タイプでいいスライダーを投げますし。今の我々のチームではあまり層が厚くないところですので、チャンスがあるんじゃないかと思います」と期待を寄せている。

 決してお世辞ではなく、球団フロントの願いはかなり切実なのではなかろうか。

 今季のソフトバンクで、リリーフ左腕として最も多く登板したのは田浦文丸(24)の45試合(7ホールド、防御率2.38)で、そこに次ぐのが嘉弥真新也(34)で23試合(7ホールド、防御率5.25)だった。

 もともとは嘉弥真が変則ドームの左腕として長年、チームのその役割を支えてきた。昨季までは6年連続でシーズン50試合以上登板を果たしてきた。しかし、今季不振だったことなどから今オフに自由契約となり退団。実績豊富な左腕はヤクルトへと移籍した。

嘉弥真が退団。田浦のみと手薄

 ソフトバンクの来季チーム事情を鑑みれば、田浦が台頭したとはいえ経験値でいえばまだ確固たる戦力として計算するのは時期尚早ともいえる。また、田浦と嘉弥真に次いで今季中継ぎ登板した左腕は笠谷俊介(26)の8試合(0ホールド、防御率1.59)だったが、来季に向けては先発転向を強く明言している。

 ソフトバンクとすれば、長谷川はすぐに活躍してもらわなければ困る貴重な一枚となるわけだ。

長谷川と嘉弥真の意外な共通点

 三笠GMはふと、こんなことを口にした。

「長谷川投手は高2まで外野手だったらしいね。嘉弥真投手もかつては野手だったよね」

 長谷川は埼玉の花咲徳栄高校出身で2年生の頃に投手に転向した。3年生の夏にチームは甲子園優勝を果たしているが、ベンチ外だった。

 金沢学院大学では全国大会のマウンドに上がったもののアマ球界で大きな知名度を集めるほどではなかった。決して平たんではない道のりを歩み、プロ野球選手になっただけでなく、少なからずすでに1軍マウンドでも結果を残してみせている。そこもまた彼の魅力の一つなのではなかろうか。

 左のワンポイントタイプの中継ぎ投手は現代野球にそぐわないといった意見もあるが、ソフトバンクの黄金期には嘉弥真しかり、森福允彦氏しかり変則左腕が輝きを放ってきたチームの歴史がある。

 奇しくもソフトバンクのブルペンを支え続けた嘉弥真と入れ替わる形で入団した長谷川。先発や主砲のような大きく目立つ役割ではないが、来年の今頃に現役ドラフトを振り返る際に真っ先に名前の挙がる存在になっていても不思議ではない。

 入団会見の主な一問一答

――会見に臨む気持ちは?

「複雑な感情があったんですけど、今はホークスで活躍したい気持ちが強いです」

――移籍を知ったときは?

「やっぱり選手層の厚い球団なので、不安も少しあった。その時は不安の方が強かったです」

――ホークス投手陣の印象は?

「全員のレベルがすごく高い。球速も変化球もコントロールも、レベルの高い選手が集まっている印象」

――鷹ナインとのかかわりは?

「いえ、ないです」

――話しかけてみたい投手とか。

「タイプが同じ投手を存じ上げていないので。でも、和田さんというすごいベテランがいる。取り組みとか聞いてみたい」

――現役ドラフト移籍は新たなチャンスでもある。

「去年の現役ドラフトで移籍して活躍した選手を見ていた。これは1つのチャンスだと思う」

――持ち味は?

「左の変則なので、左打者をしっかり抑えて行けるように。そしてスライダーを一番得意としています。カウントでも勝負球でも」

――どんな役割を担いたい?

「パ・リーグは左の強打者が多い。そこをしっかり抑えられるように。6・7回あたりのところをびしっと抑えられれば。そこを目指して」

――来季の目標は?

「50試合登板目指して頑張りたい」

――花咲徳栄といえば後輩には井上朋也選手がいる。

「高校に挨拶に行ったときに、井上君とも挨拶をしたくらい。連絡は取ってない。連絡? 来てないです。連絡しなくても通じるものがあると思うので(笑)」

――北海道から福岡へ。福岡のイメージは?

「もつ鍋食べたことがあってすごくおいしかったです」

――ファンからの呼び名は?

「僕の下の名前はすごく読みづらい。たけひろって名前を呼んでほしい」

――ベイスターズのエスコバーになぞらえて、タケコバーと呼ばれていたようだ。

「今の僕ではエスコバー投手には全く追いついていないが、タケコバーと呼ばれているからには、近づける投手になりたい」

<写真はすべて筆者撮影>

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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