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肝っ玉ルーキー、鷹のドラ1井上は「緊張しない」 2軍公式戦で適時二塁打デビュー

田尻耕太郎スポーツライター
ポスト松田の一人。中軸を打てる三塁手として期待されている(筆者撮影)

 2軍のウエスタン・リーグが19日、1軍レギュラーシーズンより1週間早く開幕した。今年3連覇がかかるソフトバンクは地元のタマホームスタジアム筑後に阪神タイガースを迎えて開幕シリーズを戦っている。

 その開幕戦は2対4で敗れたが、ゲームの最後に大きな見所があった。0対4の九回裏2アウト一塁の場面、打席に入ったのは代打・井上朋也内野手だった。ドラフト1位ルーキーの公式戦初舞台だ。

九回2死に完封負けを阻止

 対するマウンドには阪神・伊藤和雄だ。初球ボールの後の137キロ直球をファウルし、3球目の変化球を空振り。あっという間に追い込まれたが、この高卒ルーキーはまるで慌てる素振りがない。

「緊張ですか? しませんでした」

 井上は入団発表、そして初めてのキャンプ、その途中にA組に合流した時も「緊張しない」と言い続けている。

「一番緊張したのですか? 高校1年生の時の埼玉県大会の決勝ですかね。あの時にちょっとだけ」

キャンプ中にはA組練習に参加。主力の前でも堂々と声を出した。(筆者撮影)
キャンプ中にはA組練習に参加。主力の前でも堂々と声を出した。(筆者撮影)

 パッと見まだ幼顔の18歳だが、肝っ玉の据わったルーキーに大物の雰囲気すら漂う。

 1ボール2ストライクから、ボール、ファウル、ボールとしっかり粘ってフルカウントとした。そして決着は7球目のフォークボールだった。地面につきそうな球に態勢は崩されながらも軸はしっかり残した。だから打球は決して弱くなかった。三塁線を破る長打となり、一塁ランナーが一気に生還。プロ公式戦初打席で見事なタイムリー二塁打を記録した。

 さらに続く渡邉陸の右前打で二塁から生還し、初得点も記録した(渡邉陸は入団3年目で初公式戦。こちらも初打席初安打初打点)。

 井上は「チャンスをモノにしたかった」と初打席初安打初打点を喜んだ。しかし、一方で「最後打ったのは低めのボールでした。一軍で通用する選手になるためには、あのような球をしっかり見逃さないといけないんです」と振り返った。このあたりが、すでに並のルーキーではない。

キャンプ中の新人体験の一コマ(筆者撮影)
キャンプ中の新人体験の一コマ(筆者撮影)

 また、初安打の記念球はチームメイトの計らいで井上の手元へやってきた。「親にあげました。観に来ていたので」。最高の親孝行だ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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