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海外でのロレックス買い付け被害 支払いが突然止まるスキームが繰り返されている疑念 #専門家のまとめ

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

今年1月末に「トケマッチ」が高級腕時計のシェアサービスを停止して、所有者らが預けた約16億円分の時計がいまだ返却されないままになっています。しかも預けたはずの時計がフリマアプリに出品されているといった状況も報道されています。

今、高級腕時計に関する事件が続発していますが、今回、取り上げるのは、昨年11月末、大手の求人広告や知人紹介で始めた、海外で自らのクレジットカードを使って、高級腕時計を買い付ける仕事をさせていた会社が突如、支払いを停止したことで、バイヤーらが多額の負債を背負わせられているトラブルです。この突然、支払いが止まるスキームが繰り返されている疑念がでてきています。

バイヤーらに1年以上の長きにわたって、時計代金と報酬をきちんと払いながら、突然支払いをしなくなり、実質的経営者と連絡が取れなくなるケースは2006年以降、度々起きていますが、直近では2018年、19年にも同様な被害がありました。その時も被害者への取材をしていますが、今回のケースとほぼ同じ状況でした。その実態をまとめます。

▼高級腕時計の買い付けのアルバイトを行っていた人たちの支払いが止まり、カード会社への支払いできない額が約5億円に上っています。

▼コロナ禍前にも同様な被害がありました。突然支払いが未払いとなり、実質的経営者と連絡が取れなくなる。同じスキームがみえてきます。

▼「あとで高級腕時計を買うから」と、カードで現金化する指示をして、そのお金を渡させており、今回の被害にもみられます。

▼過去に被害を出した会社のものと似た求人が出ているとの話を受けて、会社の面接を受けた方の状況を記事にしました。

今回、支払いを突然停止した会社が、面接をしている状況を記事にしています 。この時は、過去に被害を出した実質的経営者がこの会社にいるかまでは突き止められませんでしたが、今回の被害者の証言から、名前を変えていますが前回の被害を出した実質的経営者が指示をしており、同じ人物だとわかってきました。これにより、突然に支払いを止めるスキームが繰り返された疑念がより増してきたといえます。

バイヤーの方のなかには、実質的経営者に筆者の過去記事を見せた人もいたそうですが「それは密輸の仕事であり、うちは税関での支払いはしている」との答えをされたために、仕事を続けてしまった人もいると聞いています。

もしこの時、過去の未払いなどの被害が、自ら(実質的経営者)の指示により引き起こされたことを伏せて、だますような形で仕事をさせ続けて多額の被害に至らせていたとすれば、大変な問題行為だと思っています。名前も前回と変えており、過去の事件を隠すような画策をしている節もみられます。

こうした被害に遭わないためには、自らのお金や商品を持ち出さなければならない仕事をする時には、過去にどのような被害があったのかを調べるとともに、会社の業務が明日にでも、突然停止するかもしれないという最悪のリスクを考えてから行うことが大事になります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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