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森永さん・前澤さん・ホリエモンをかたっての投資詐欺にダマされない!600万円の被害に遭った男性の後悔

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

若い世代から中高年に至るまで、前澤友作さんや堀江貴文さんといった有名人をかたるネット上の広告から誘導されての投資詐欺には注意が必要です。手口も年々巧妙化しており、被害が広がっている現状もみえてきています。絶対にダマされないようにして下さい。

50代男性の寺田さん(仮名)は、森永卓郎さんをかたった人物からのメッセージをうけたことがきっかけで、昨年10月末から2週間ほどの間にFX(外国為替証拠金)取引を装う投資詐欺に誘導されて、600万円を超える被害に遭いました。
どのような手口だったのでしょうか。

「フェイスブックを見ていると、経済アナリストの森永卓郎の写真さんが出ている投資広告がありました。ちょうど、何かの投資をしたいと思っていた時期でしたので、先に進んでみました。するとLINEの友達追加が必要との画面が出てきたので、リンクをタップしました。そこには森永卓郎さんらしき人物のアカウントがあり、友達追加をすると『初めまして森永卓郎です』みたいな挨拶が来たんです」

被害者提供の投資に誘う広告事例・筆者修正
被害者提供の投資に誘う広告事例・筆者修正

そこには、田代先生(仮名)というLINE投資グループへの誘いの文面があり「グループの情報に注目していただき、(田代先生が)推奨する優良株情報を逃さないようにしてください」と続きます。

被害者提供写真・筆者修正
被害者提供写真・筆者修正

寺田さんは、最初のうちはメッセージを静観していましたが、日本円をドルなどの通貨にして売り買いすることで利益を出すFX投資で稼いでいるといったメッセージが届きます。さらに、取引でこれだけ儲かったという6~7名のスクリーンショットが次々にきて「そんなに儲かるもんだろうか」と興味を持って、投資グループに参加してみました。

「このグループには多い時で、80人ほどの方がいて、今の経済情勢やFX取引に関することや、ビットコインが上がってきていることなど、田代先生の書き込みを中心にいろんな投資情報がありました」(寺田さん)

利益が出ました!

さらに、この投資グループでは、田代先生の情報通りに取引を行ったら、利益が出た!と、皆さんスクリーンショットを撮ってアップしていたといいます。なかには、数千万円もの儲けが出たという書き込みもあったそうです。そうした情報を目にしていくうちに、寺田さんは「少額だったら損しても構わないのでやってみようか」と思うようになります。

そうした気持ちを見透かすように、森永さんをかたる人物から田代先生のLINE IDが紹介されます。そしてつながると、直接、田代先生から連絡があり「皆さん取引口座をいろんな証券会社にもっていて、バラバラだと指導がしにくいので、取引口座を同じにしてもらっています。A社の取引口座を作ってやってみませんか?」と外国の取引所(以下、A取引所)に誘われました。寺田さんは口座を作ること自体は無料なのでやってみることにしました。

被害者提供写真・筆者修正
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この辺りに投資詐欺の巧妙化がみえています。

以前は、恋愛感情を抱かせるなど、個人同士のメッセージのやりとりだけで、偽の投資サイトへの誘導をしていましたが、今は投資グループに誘うというワンクッションを入れて、そこで、第三者による儲け情報を目にさせながら、本人の投資への欲求を煽っていく形をとっています。おそらくメンバーのほとんどは詐欺グループによるサクラだとは思いますが、このなかには、寺田さんのように誘導された方も多くいることが推察されます。

16万円を投資すると、利益が出て、口座に入金される

寺田さんは、A取引所のカスタマーセンターの宇田(仮名)という人物とつながり、16万円を指定された銀行口座に振り込みます。

すると、その金額がドルで、取引所のサイトに表示されます。

「田代先生のいうように取引をすると、2万円の利益が出ました。そこで出金の手続きをしてみました。すると利益分が自分の口座に振り込まれたのです。これまでは、A取引所を怪しんでいましたが、これにより詐欺ではないと思ってしまいました」と振り返ります。


最終的には、日本円で約930万円の金額に、しかし出金できず

次に寺田さんは60万円を振り込みます。再び、田代先生なる人物の指示通りに通貨を売り買いすると、儲かります。さらに100万円を振り込み、最終的に約500万円を超える金額を投資しました。サイト上の表示は利益分を含めて、約6万2千ドル(約930万円:当時のレート1ドル約150円)になっていたといいます。

寺田さんはかなりの金額になったので、出金しようとA取引所に依頼をしてみました。

すると同社からは「お金を引き出す前には、税金がかかります」といわれます。

その金額は約100万円です。寺田さんは、取引所にあるお金から引けばいいのではないかと若干、おかしさを感じながらも、お金を工面して振り込みます。

すると、同社の担当者から「間違って取引口座の方へ入金してしまいました」との連絡がきます。寺田さんは「A社の間違いなのだから、そちらで対処して入金し直せばよいでしょう」と返しますが、相手は「システム上それはできません」などといってきます。さらに同額を振り込むようにいってきます。

寺田さんは「やられました。これは200%詐欺だと思いました」と被害に気づきます。そして入金した銀行口座を止める依頼をして、警察へ相談に行くことになります。

友人と話すなかで、驚くことが発覚

詐欺に気づくポイントとしては、日本人向けに投資勧誘をするのであれば、金融庁への登録が必要です。もちろん、このA社は無登録の業者で、会社の住所や直通の電話番号もわからない状況です。寺田さんの場合もそうですが、相手が法人でありながら、振り込み先が個人口座だった場合、詐欺を疑うことが必要になります。

「驚くことがありました」と寺田さんは話します。

「私が被害に遭った後、近所に住む同い年の友人と話していると、彼も『森永卓郎さんのSNS上の投資広告から誘われた取引所で、FX取引をしている』というのです」

寺田さんはそれを聞き「お前、それは詐欺だから、やめた方が良い!」というと、友人は半信半疑ながら「そうなのか」と答えます。

「いったい幾ら、投資に使ったのか?」を尋ねて、さらに寺田さんは驚きます。

「なんと16万円で私とまったく同じ金額を払っていたのです。友人はその時点では詐欺だとは思っていないので、そこで、全額出金の依頼をかけるようにいいました。しかし、それができなかったんです。その理由もマネーロンダリングが何とかで、友人も詐欺だと確信をもってくれました。私のような大きな被害にならなくて本当によかったです」(寺田さん)


ダマされないためには、誰かに相談すること

寺田さんは今回の被害を通じて「金額が大きくなる前には、必ず誰かに相談して、意見を聞くことが大事であることがよくわかった」ともいいます。

どうしてもネットでのことだと、ネット上だけのやりとりだけで完結してしまいがちですが、リアルな知人、友人などに相談することが必要です。

「税金といわれた時点で、息子に聞いてみればよかった。実は、息子は税理士なので。そうすれば、100万円を失うことはなかった」と後悔を口にします。

有名人をかたり投資詐欺に遭う被害が広がっている実態が明らかに

筆者は、昨年10月に「垣花正 あなたとハッピー!」(ニッポン放送)の番組にて、森永さんとラジオでご一緒する機会がありました。そこで森永さんは自身をかたった詐欺広告が出ていることへの注意を強く呼び掛けていましたが、今回のケースを通じて、広くこの種の被害が出ている実態が明らかになりました。

しかも昨年末、森永さんは同番組ですい臓がんを患っていることを公表しました。折しも寺田さんに聞き取り取材をしている日にこの報道があり、寺田さんから森永さんの病気のことを聞いてとても驚きました。

詐欺や悪質商法は今、注目されているニュースにのってきます。多くの人が森永さんへの心配を寄せているなかで、これに便乗したような悪質な詐欺広告は増える恐れがあります。ぜひとも、ご注意ください。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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