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特攻隊 日本の戦時中を思わせる言葉 旧統一教会1世信者に強いていた伝道手法に酷似 2世の身に迫る危険

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影・修正

9月19日に立憲民主党による国対ヒアリングが行われて、被害者家族である橋田達夫さん、元統一教会2世信者の鈴木みらいさん(仮名)、阿部克臣弁護士、ジャーナリスト鈴木エイトさんから話がありました。

最初に長妻昭議員は「先日の報道特集(TBS)を見ましたけれども、橋田達夫さんがご奮闘されているのに(信者が乗った)車があんなに乱暴にバックしたり、逃げ切るような状況で、あれを見ていてとても真摯な対応とは到底思えないことが続いている」と話します。

「旧統一教会で人生を狂わされた」被害を訴える人々が待つ解散命令請求 一方教団は広大な土地を購入し“巨大プロジェクト”敢行【報道特集】(TBS)

橋田達夫さんの元妻は信者として1億円以上の献金を行い、元妻と一緒に暮らしていた長男は自ら命を絶ってしまうという、大変つらい経験をしています。

橋田さんは、元妻が献金した約3000万円の返金を旧統一教会に求めており、教会を訪れて教団幹部にお金の件について「説明してほしい」と求めましたが、教団幹部は会話を避けて逃げようとします。そこで、橋田さんは車の前に立ちはだかりますが、それでも質問に答えることなく強引に車de

走り去っていきました。

ヒアリングのなかで橋田さんは「統一教会は、報道特集で見てもらった通りです。彼らは自分たちの都合でやっていて、一切我々(被害者)とは話をしません。すべて組織で動いている。本当に痛感しました」と話します。

一転して、献金記録を出してきた教団の対応

返金について、いかに真摯な対応が行われていないかについて、元信者であるAさんの返金の事例を通じて、旧統一教会2世の鈴木みらいさんは訴えます。

「安倍元首相の(銃撃)事件前に脱会されたAさんは多額の献金をしましたが、ご高齢なので、息子さん(Bさん)が代理として返金交渉をしています。献金記録を求めても教会は示さず『献金があるのであれば、ご自分で示してください』と門前払いでした」

しかしAさんは、他の信者の献金状況も書かれている金銭出納帳をもっていました。

「教団が献金記録の証拠を見せないなかで『Aさんが金銭出納帳を持っている』ことを伝えたところ、急に態度が変わり、教区の部長が出てきて献金記録を出してきました。本当は献金記録をつけているはずなのに『出してくださいといっても、証拠がありません』というそういう、不誠実な言動をしています」と鈴木さんは強い口調で話します。

Aさんの被害は1500万円で、そのうち1200万円が献金で、水晶などの霊感商法の物品購入が300万円です。

「しかも教団は、物品販売は教会の事業ではないので、これを除いて献金の返金を行うといいます。しかし統一教会は店舗を持っていて、モノを売っているはずです。しかも、返金も1500万円の半額以下でしか返せないといってきて、交渉は決裂しています。安倍元首相の事件後の教団の会見では『誠実に対応する』といっていたのですが、まったくそうではない対応です。公益法人の資格はないと思っていますので、一刻も早い解散命令請求をお願いします」(鈴木みらいさん)

解散命令請求によって、信者にどういう影響があるのか

立憲民主党の山井和則議員から「解散命令請求によって、(現役の)信者さんにどのような影響があるのでしょうか」の質問がありました。

ご両親が現在も信者で、絶縁中で家庭が崩壊している鈴木みらいさんは「国から悪質性が認められて解散命令請求がなされれば、疑問に思っている信者が脱会したり、献金額が減ることが起こり得ると思います。私の両親も、国が宗教法人というお墨付きを与えているので、安心して活動ができていますが、解散命令請求をして頂ければ、悪質性のある宗教であるこということが伝わり、両親も考え直したり、私自身も親と和解できたりするきっかけになるかもしれません。それに、今も恋愛の自由や信教の自由で追い詰められて、苦しんでいる2世たちも解散請求によって、親の圧迫が減ると思います。多くの方々が救われると思います」と話します。

「報道特集」では、40年前に入信した娘を持ったために、献金などの無心に苦しめられて「統一教会で人生を狂わされた」と話す80代女性の母親のインタビューも流されました。

橋田達夫さんは、この被害に触れて「お母さん(80代女性)に証言を頂きました。解散命令が出れば『(信者である)娘さんをもう一度、説得したい。私の目の黒いうちに、娘には脱会してもらいたい』と涙を流しておりました。解散請求命令はとても大きいです。これがないともう前に進めない状態です。早急に出してほしいと思っています」と強く訴えます。

2世信者約6000人が招かれての集会は、組織性を裏付けるものとの見解

9月17日に韓国の聖地である清平(チョンピョン)にて、日本の2世信者が約6000人招かれて、集会が開かれました。韓鶴子総裁も登壇して「君たちは世を救い、日本を救う特攻隊だ」と語りかけたと報道されています。

【独自】聖地に2世信者6000人集結 韓鶴子総裁「日本を救う特攻隊」教団の目的は(テレビ朝日)

旧統一教会の被害救済に取り組む阿部弁護士は「今回、6000人の2世信者を韓国に呼んで、教祖が直接指示を出しました。これは解散請求の要件である、組織性を裏付けうるものになると考えています。全国で生じている高額献金などの被害に対する統一教会側の主張は、個々の信者が行ったものだとしていますが、これは大きな組織の中で行われているものです。大きな視点でいえば、日本国内での組織だけではなくて、韓国と日本との大きい関係がある。韓国からの指示をうけて行っているということです。まさにそれを裏付ける関係かなと思います。韓国の本部が指示を出せば、日本から6000人をすぐに呼べる。そこで直接2世に対して、教祖が指示を出して発破をかける。その際には、日本の法人も旅費を負担しているようですので、そうした関係自体が、全国で生じている献金などの被害が個々の信者によって行われたものではなくて、韓国の組織も含めた組織全体として行われてのものだということを裏付けていると思います」と話します。

鈴木エイト氏は「6000人の2世が(韓国に)行っていますが、2~3万人の2世信者がいるといわれているなかで、6000人しか行っていないことに、逆に驚きがあります。教団の制度を真剣に考えている、ある日本人幹部は『韓国と日本の上意下達の関係を絶って、日本の団体だけで宗教活動をするしか、生き残る道はないのではないか』といっています。これは、被害者への賠償をしての上の話になりますが」と話します。

韓国からの指示を受けて、日本の教団が動くという上意下達の関係性をいかに改めていくのか。解散命令が出されても、旧統一教会は任意の宗教団体として存続していくはずですので、この観点は大事かと思われます。鈴木氏も「今後、教団に残る人を監視していくことは大事だ」ともいいます。

教団が使う「特攻隊」の意味は?

山井議員はこの集会で韓鶴子総裁から話された「特攻隊」の言葉について「これは、日本人にとって非常に辛い思いがこもった言葉なんです。それと関係があるかはわかりませんが、統一教会にとって特攻隊の言葉は、どんな意味を持っているのでしょうか」と尋ねます。

死ぬ気で伝道しろということをいっています。昔から継続的に使っている言葉で、今回、持ち出してきたことで、2世に脅迫的に迫っているのではないかと思う。死ぬ気でやる。この特攻隊という言葉を使ったこと自体が、問題ある言葉といえます」(鈴木エイト氏)

阿部弁護士も「特攻隊という言葉自体、戦時の日本以外のものはないでしょうから、命をかけてやれ!ということだと思います」として、2019年の中和新聞にも「特攻隊」の文言が見られており、数年前から確認できているとしています。

伝道は命がけでやれ!激しい活動に駆り立てる手法は今なお続く

私が旧統一教会に献身(出家)した時には、まず伝道機動隊に所属しました。そしてそのなかで「隊長」を務めたことがあります。

今、手元にある1990年代の教団支部の組織図にも、伝道機動隊、特伝隊(特別伝道機動隊)という名称がつけられています。激しい活動を促すようなネーミングをつけて、信者たちを伝道活動に駆り立てていく手法は、昔から行われていることです。そして夜中まで伝道をして、誘い込む人の実績が出ないと、朝まで街頭で偽装勧誘を行いました。また私自身、高熱が出ても、それはサタンが入ったと言われてフラフラになりながら、街頭に立ち続けて勧誘活動をさせられたこともあります。

「特攻隊」は、特別攻撃隊のことですので、すべては「死ぬ気でやれ」ということで、まさに鈴木エイト氏がいった通りだと思います。

今回の報道を見て思うのは、これまで1世信者を伝道に駆り立てる手法が「特攻隊」というより過激な言葉で、2世信者にも同じように行われていることはとても憂慮すべきことです。

多くの1世信者が激しい伝道活動と高額献金の果てに、身も心もボロボロになり、教団を去っていきました。まさに2世信者たちも、同じ道を歩むことになるかもしれず、暗雲が立ちこめています。

「現信者は、次の被害者である」といった方がいますが、まさにその通りで、比較的若い世代の2世信者は教義を信じ切って進むかもしれませんが、多くの1世信者らがそうであったように、悲しい結果をむかえることになりかねません。過去の経験から、戦時中に使われたような言葉に踊らされず、自らの身と心は必ず守るようにして下さい。

何より、韓国本部から指示をうけた献金、過激な伝道活動を日本国内でさせないためにも、一刻も早い解散請求命令が必要とされています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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