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旧統一教会への過料に対し「全面的に争う」とした教団会見に対する文化庁、弁護士、ジャーナリストの見解

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影

解散命令請求が10月中旬といわれるなか、それに先立ち文化庁は旧統一教会に過料を科す行政罰を裁判所に通知しました。

これまで文部科学省は、宗教法人法第81条の解散命令に該当する疑いが認められることから、7回の報告徴収・質問権を行使してきました。しかしながら、旧統一教会は全体の質問の2割にあたる、100項目以上に回答拒否をしたとして、過料を科す判断をしています。しかし旧統一教会は、9月8日に開いた会見にて、この過料の通知に対して「全面的に裁判で争う」という姿勢をみせています。

12日に立憲民主党を中心とする「統一教会」国対ヒアリングが開かれて、過料通知の件が取り上げられました。

旧統一教会は「過料は認められない」との主張

教団の会見内容はすでに各社が報じており、立憲民主党の山井和則議員から報道内容が幾つか読み上げられました。

教団の顧問弁護士を務める福本修也弁護士は「違法な質問権行使への回答拒否は妥当であり、過料は認められない」と話して、教団の岡村信男法務局長は回答拒否の理由について「個人情報や信教の自由に関わること、これまで回答したことと重複していたり、不法行為と関係がなかったりする項目」があったとしています。(旧統一教会「過料」通知を受け教団側会見 争う姿勢を示す NHK)

同法務局長は、回答拒否理由について「求められた書類がなかった、存在しない資料を求められた、内容が信者の個人情報に該当する」などと説明して「これまで被害を訴えてきた元信者の話にはウソがある」と告発を批判する一幕もあった。福本弁護士は「政府は解散命令請求の要件を一夜で変更し、独自の新解釈に基づいて調査をしている。教団には解散事由に当たる行為はない」としています。(旧統一教会「過料却下へ全面的に争う」文科省対応受け記者会見 毎日新聞)

文化庁「報告徴収・質問権はゆるぎないもの」

文化庁の見解として、宗務課長は「7日に文化庁から裁判所に過料の通知を行いました。旧統一教会の言動一つ一つにコメントを出すことは差し控えたいと思いますが、我々が行いました7回にわたっての報告徴収・質問権はいずれも信教の自由の確保など様々な観点につきまして、宗教法人審議会(宗教関係者や法学者といった先生方からなる)で毎回、審議を行い、毎回、全会一致で、この質問が相当であるという答申を頂いて実施をしていったものでございます。我々の報告徴収・質問権はゆるぎないものであると考えています。裁判所がこれから過料が相当であるという決定を出して頂けるとすれば、それを受けて(旧統一教会に)しっかりとご回答頂きたいと考えています」と話します。

教団は「政府の質問権行使自体は違法」と主張しています。その点について同議員に問われると「我々が不適当な報告徴収・質問の権利を行使することにブレーキをかける意味合いで、宗教法人審議会にはかるべきということで、法律で定めて頂いております。一問一問、宗教法人審議会の先生方に様々な観点から意見を伺い(全員の一致を頂き)、法的には適法であると考えています」(宗務課長)と答えます。

文化庁として「我々の報告徴収・質問権はゆるぎないもの」と言っているように、厳格な宗教法人法に則って適正に行われた質問権の行使です。違法などといわれるような問題点は何も見当たらないように思います。

「まったく違法でもなんでもない」弁護士反論

続いて阿部克臣弁護士は「先日の統一教会の過料が違法だという会見をみましたけれども、まったく違法でも何でもないと思います」とはっきりと指摘します。

「違法ではないことは明らか過ぎて、このヒアリングの場で発言する意味もないような統一教会側の主張とは思うのですけれども、あえて申し上げます。宗教法人法の解釈としても(今回の内容は)統一教会側の独自の主張であって、政府の解釈はまったくもって正当であります。統一教会は『政府の独自の解釈』という聞きなれない言葉を使っておりましたけれども、それこそが独自の解釈であることを示していると思います」

同弁護士は、具体的な説明をします。

「統一教会の論理としては、宗教法人法81条1項の解散事由に法令違反と書いてあり『それは刑法の違反、刑事罰に限るものである。そこに民法は含まれないんだと。質問権はその(刑法の)疑いがある場合だから、解散事由があることを前提にした質問権は違法である』と、そういうことを言いたいのだと思います。福本弁護士の話では、いままで統一教会は民事(事件)でしか責任を問われていなかったのでセーフだったんだ。『セーフだったものをアウトにするものはいかがなものか』との話をしていましたが、この81条の解釈として、1年位前のヒアリングでも再三、申し上げていたように、この「法令に違反して」の内容というのは、あらゆる法令を含むと解釈されているものです。統一教会が根拠として指摘するオウム事件の解散請求事件、95年の高裁判決があるのですけれども、それをきちんと読めば、刑法に限るとは書いていません。確かに、その部分だけとらえると『刑法等』と書いてあるので、刑法に限られるように思いがちなのですが、その前段に長々と解散請求の制度の趣旨というものが書いてあります。その長々と書いてある趣旨ですとか、命令規範、禁止規範も書いてありますけれども、それに民法も含まれると解されておりますので、これらを正しく読めば、オウム事件の高裁判決は民法を含むものと解されるものなので(統一教会の主張は)根拠がないものになります」

さらに「刑法に限るということはまったくないことになりますから、そういう意味で統一教会の主張というものこそが、まさに独自の主張ということになります。取るに足らない理屈かなと思います」とも話します。

鈴木エイト氏は、教団側のちぐはぐさ、矛盾点を指摘

ジャーナリストの鈴木エイト氏は、先日の会見をみて「教団側のちぐはぐさ、矛盾点を少し話そうと思います」と切り出します。

「統一教会側の信者でもあり、顧問弁護士でもある福本修也弁護士と、岡村信男法務局長らが会見で、100項目に答えなかったのは、信者の個人情報、プライバシーに関するものがあったとしきりに強調していました。その一方で、そのように

主張する教団が何をしていたかといえば、教団は文科省に対して、昨年11月以降「法律意見書」「通知書」などをこれまで送ってきたといい、プレスリリースとして、教団のHPにすべて載せています。そのなかに元信者の名前を載せています。(今回の会見では)信者の個人情報に関する質問があるから答えないといいながら、一方でこういう形で元信者の個人情報を平気で載せている。教団のちぐはぐさに人権など何も考えていない。そのチェックすらされていないいい加減な組織だということがわかります」

さらに「その申入書の内容を書いている弁護士がいます。昨年10月の会見で、教団の改革のための外部の専門家、世界本部の依頼でやっているという設定なのですが、実際にやっていることは小川さゆりさん(仮名)とか、被害弁連の弁護士に対する誹謗中傷をやっている。最近もTwitterで『我々の宗教、統一原理』と書き込んでいる。これがもしジャニーズ事務所の外部専門家でつくる再発防止特別チームの弁護士が『我々のジャニーイズム』と発言したらおかしいことですが、第三者の立場で教団改革を進めているという弁護士がこうした発言をしています。そうした人が、申入書のなかに個人情報を平気で載せている」と、鈴木エイト氏は教団側のちぐはぐさ、矛盾点を指摘します。

これまでもそうでしたが、教団は反論の会見をすればするほど、逆に窮地に陥っているように感じます。

解散命令請求への動きは加速度を増してきている

来月にも政府は「解散命令を請求する方針」との報道も出てきており、解散命令請求への動きは加速度を増しているように思います。

1980年代から40年以上、信者らは本当に自分自身が地獄から救われる道と信じて霊感商法を行い、高額献金をしてきました。そしてその道を今も歩み続けている人は多くいます。

しかしその結果、生み出された被害者の数は尋常ではなく、今も相談は寄せられ続けています。何より、献金し尽くした信者の親の元で育った宗教2世たちは信仰の強制をうけるばかりか、金銭的困窮から食べるものに窮する者さえも多く、進学を諦めざるをえなかった人もいます。そして今直面しているのは、高額献金した1世信者らがほぼ無年金で、無貯金のなかでの「老後破綻」です。中には、これまで金銭的に苦労をさせてきた子供である2世に頼ろうとする者まで出てきています。

もう被害を受けた人たちの現場は、地獄絵図ともいえる様相を呈しつつあります。被害の苦しみにあえぐ人たちを救うためにも、まずは旧統一教会の解散命令請求がなされて、それが裁判所にて認められ、いち早く多くの人の救済の道がひらかれることが何より願われています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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