今年に入っても、ネットで出会った人から、投資サイトを紹介されて、30代前後の若い世代が、数百、数千万円もの暗号資産を送金して被害に遭ったという報告が次々に寄せられています。

今、被害で目立つのは、多額の借金をさせられるケースです。

そのなかには、ロマンスの感情を抱かせられるだけでなく、彼氏がいる20代女性は純粋にマンションを買うための投資金を増やそうとして、ネットで出会った外国人から500万円以上だまされたケースもあります。

さらに今年4月より、成人年齢が18歳に引き下げられましたので、今後、暗号資産の新規口座開設による偽投資サイト詐欺被害のさらなる低年齢化も懸念されます。

トラベルルールは、犯罪抑止のための出発点

被害者の多くは、ビットコインやイーサリアムの暗号資産で詐欺犯のアドレスに送金しています。これまでは国内の暗号資産交換所に問い合わせても、「送金先の情報はわからない」と回答されて、泣き寝入りすることも多くありました。

そうしたなかで、4月1日より、トラベルルールがスタートしました。

これは利用者から暗号資産の送金依頼を受けた国内の暗号資産交換業者が、送金先となる受取人の氏名などの情報を保存し、その暗号資産の移転先に通知を行うという取り決めです。

これは、一般社団法人日本暗号資産取引協会(JVCEA)における自主規制規則ですが、犯罪者らの不正利用を防ぎ、不正なお金の流れを追うことのできる重要な一歩だといえます。

金融庁HPより「暗号資産の移転に際しての移転元・移転先情報の通知等(トラベルルール)について(要請)」(21年3月31日)
金融庁HPより「暗号資産の移転に際しての移転元・移転先情報の通知等(トラベルルール)について(要請)」(21年3月31日)

それでも、返金への道のりは険しい。被害後のトラブルにも気をつけて

トラベルールがスタートすることで、被害者のなかには「返金の道が出てくるかもしれない」と思い、すぐに弁護士に依頼する人もいるかもしれませんが、ちょっと待って下さい。ネット上で見つけて依頼した弁護士とのトラブルも耳にしますので、弁護士を選ぶ時には充分な検討が大事です。

そもそもこの国際ロマンス・フレンド投資詐欺での返金は難しく、この案件を扱う方も少ない状況です。依頼の際には、直接に弁護士本人と話して、どういった取り組みをしているかをしっかりと確認することが大事です。

昨年、2000万円近いお金をロマンス投資詐欺でだましとられた30代女性は、被害金をなんとか取り戻そうと思い、ネットで弁護士を探して相談しました。その後、弁護士事務所とメッセージアプリで繋がり相談すると返信があり、「お金を取り戻せる可能性がある」と電話で言われたといいます。

「その方は弁護士さん本人でしたか?」と筆者が尋ねると、「いいえ、事務所のスタッフのようでした」と答えます。

「不安があったので、直接弁護士さんとやりとりしたいと言いましたが、代理で伝えますとのことでした。この話を聞いて、解決をすぐにお願いすべきか、かなり悩みましたが、結局、この弁護士には依頼しませんでした」

「なぜでしょうか?」

「ちょっと不信感を抱いたのは、依頼を前向きに検討したいと話した途端、弁護士本人とも話していないのに、いきなり契約書を送ってきたことです。ちょうどその頃、別な弁護士さんにも相談していまして、直接ご本人と電話で話した時『弁護士は、良い弁護士だけじゃないよ』とも言われたことで、もう少し冷静になって考えてみようと思いました」

すでに被害に遭った上に、多額の着手金を払うのですから、セカンドオピニオンをして立ち止まって考えることは必要です。

それに、身の丈に合った対応も大事です。

彼女はすでに多額の借金をしていました。もし高額な着手金を払うとなると、またもや借金をしなければなりません。「本業以外に、ナイトワークの副業までしなければならないのか」彼女はかなり思いつめていました。

そこで、筆者の考えをお話しました。

「現在、借金を返すのも精いっぱいのご様子です。被害金を取り戻したい気持ちはわかりますが、まずはご自身の生活状況を第一に考えてみることも大事ではないでしょうか。返済が大変なら、まず債務整理から弁護士さんに相談してはどうかと思います」

まずは借金問題をクリアにして、自分の生活を元に戻すことに努めることが必要なのではないかとの考えを話しました。

その後、彼女は親に正直に、詐欺被害に遭ったことを伝えたそうです。

「全てを両親に話し、借金は両親が肩代わりしてくれることになりました。金銭的な不安がなくなり、自分を責めて泣き腫らしてしまいました。しっかり働いて両親にお金を返していきます」との前向きな言葉がありました。

ロマンス投資詐欺での被害回復は、本当に険しい道のりです。

もちろん、筆者としても泣き寝入りせずに、弁護士などに相談して返金に向けて進んでほしい気持ちもありますが、物心両面で自らの生活をもとに戻すことが一番です。あまりにも背伸びをしての対応は、さらに自分自身を苦しめることになってしまいます。

被害後のトラブルに見舞われないためにも、弁護士さん自身と直接に話をして考えて、焦らず身の丈に合った形で対応をすることが大切なのではないかと思います。

詐欺犯は、偽の親切心でだまそうとする

最後に、何より被害に遭わないためには、いち早くネット利用者が詐欺の手口に気づくことが必要です。

そこで先月、国民生活センターから発表された「ロマンス投資詐欺の手口」に、取材経験からの見地も加えて、詐欺に気づくポイントを深堀りしてお伝えします。

ロマンス詐欺の手口(国民生活センター発表)
ロマンス詐欺の手口(国民生活センター発表)

8つのポイントが示されていますが、特に注意してほしいのは、詐欺犯らの使う偽の親切心です。

4つ目の「(投資金を)指示通り送金する」際、出会った異性は、送金のやり方や投資の操作方法を手取り足取り、教えてくれます。

今年2月アプリで知り合った人物から、投資サイトに誘導されて1000万円を超える被害に遭った男性は、国内の暗号資産交換所の手続き画面のスクショをとるように言われて送ります。すると、「赤い丸」がつけられた画像が送られて、どのように操作すればよいのかを懇切丁寧に教えてもらっています。

そして偽の投資サイトでも同様な指示を受けています。

詐欺グループは、「赤い丸」や「赤い矢印」を使って「ここをタップして、投資する」などと画像とメッセージで、逐一やり方を教えてきます。

被害者からの提供写真
被害者からの提供写真

この説明を受けて「親切に教えてくれている」と思う方が多いようですが、それは間違いです。詐欺グループにはマニュアルがあり、確実にお金をだまし取れるように、画像に「赤い丸」や「赤い矢印」をつけて送ってきているだけです。

5つ目の「投資サイト上では利益が出ているように表示される」では、多くのケースで、数万円の少額からスタートさせて、最初に投資で儲かった分を含めて全額、本人の口座に戻して信用させてきています。これは、「稼げた!」と、本人の気持ちを高揚させる「見せかけ戻し」の手口ですので、その後のお金も戻るとは、絶対に思わないで下さい。

その後、投資サイトのオペレーター(カスタマーセンター)と呼ばれる人物ともLINEを通じて繋がり、出会った異性とともに、様々な送金の指示をしてきます。

7つ目に「さまざまな名目で入金を要求され、出金できない」とあるように、出金の手続きを取ると、オペレーターから「引き出すためには、税金が必要」といわれます。そこで多額のお金を払いますが、いくら払っても、お金は引き出せません。このように、二人三脚の劇場型詐欺により被害額が大きくなります。

この手口の卑劣さは、すべての貯金を使わせたところで、次に国内の消費者金融などのURLを送り、多額の借金をさせようとしてくるところです。これにより、甚大な被害になります。

成人年齢引き下げにより、18歳でも暗号資産交換所に口座が開けるようなってきています。偽投資サイト詐欺による被害を防ぐためにも、お子さんを持つ親や、教育現場などからの注意徹底も必要です。

【訂正2022/4/26】

昨年末に1500万円を超える被害に遭った女性の暗号資産の最終到達地点について、国内の暗号資産交換所であるとの記事をお伝えしましたが、その後、調査会社から、「海外の暗号資産交換所」(無登録で暗号資産の交換を行い、金融庁から警告を受けている交換所)との訂正の報告がきたとのことです。その報告に合わせて記事内容を修正致しました。