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元SKE48山田容疑者らが行った手口を分析。「待ち」から「仕掛け」への3点攻めの新手口がみえてきた。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(提供:kagehito.mujirushi/イメージマート)

元SKEメンバー山田樹奈容疑者を含む男女4人が行っていた、だましの手口の実態が明らかになってきています。

これまでの取材経験から見ても、100人以上から約5800万円もの金を集めており、かなりの悪辣な手法が取られたと考えています。

今回の手口のもとになっているのは、儲かるノウハウ情報があるといって、契約させる情報商材販売の手法です。

しっかりとした内容の情報を提供する業者もいますが、宣伝や広告だけはすごくて、実際には、まったく中身のない情報を売りつける業者が多くいるのも実情です。

これまでとは違う、進化した悪辣な手口がみえてきた

通常は、SNS上で「簡単に儲けられる」という誇大広告を打ったり、書き込みをして、ターゲットを誘いこみます。そして興味をもった人が連絡をとってくると、最初に安い値段の情報を販売します。

しかしこれだけでは、儲かる方法はわからないようになっており、その後に、電話などで相談させるように仕向けます。

電話をかけたり、メッセージを送ってきて、連絡をとってきた客に対しては、さらに「高額な契約をすればわかるようになっている」などと誘いをかけて、お金を出させます。

しかしながら、高額な契約してもまったく儲からず、「だまされた!」と気づいた時には、業者は消えてしまいます。

これが、これまでの一般的なやり方です。

つまり、虚偽の儲け情報をだまし売りする人たちの多くは、足がつかないように、電話とネット上だけのやりとりで完結することが多いのです。

私が過去に受けた、儲け情報の勧誘の多くも、最初はネットで引き寄せて、その後は電話をかけさせての非対面の勧誘でした。しかし、この手法にもデメリットがあり、電話やメッセージを無視されると終わりなので、確実性に欠けているのです。

ところが今回は違います。

週刊文春の記事によると、

《相手をホテルに呼び出して…》元SKE48山田樹奈逮捕「年収1000万円」嘘のプロフで塗り固めた元アイドルの末路に

ホテルに呼び出して、勧誘をするやり方をとっていました。

「なるほど」と、この手口の悪質さに唸らざるをえませんでした。

というのも、勧誘場所に呼び出して対面の勧誘をすることで、確実に相手を落とせることにつながるからです。

そもそも、今回ターゲットになった人たちは、出会い系サイトで異性との出会いを求めていた人たちです。

こうした人たちが、彼女とネットでつながり、SNSで「年収1000万円」と、投資で儲かった様子を見せられたうえに、直接に会って、元SKEとしてのかわいいアイドル顔を見せられての勧誘を受けるわけです。極端な話をすれば「金」に「色」です。

淡い恋心や憧れを抱かないはずはありません。(正直なところ、私も抱くと思います。)

さらに、金融知識のないだろう人たちに「バイナリー」という専門的な投資話をすることで、相手は受け身にならざるをえません。

この3点から攻められれば、誰しもが断れない状況になったとしても仕方がありません。

約5800万円ものお金を集められた巧妙さは、ここにあると思っています。

ここには、これまでのような「待つ」ではなく、積極的に「仕掛ける」の騙しの形の変化があります。そして、3点攻めです。

これまでのような「必ず儲かる」といった誇大広告を出して、それに食いついた人を狙う形から、今は、SNSやマッチングアプリなどで、偽名を使った人物が、積極的にターゲットに「いいね」などのアクションを起こして、だましの戦略をかけてくる。

実は今、この手法がSNS上の出会いの場を利用する詐欺や悪徳業者のやり方の主流になりつつあります。

コロナ禍、「仕掛け」からの3点攻めの新手口には要警戒

「待ち」から「仕掛け」という、新手口への変異により、今後もより多くの被害が出てくる恐れがあります。

これまでも、たびたび言ってきていますが、詐欺における新手口というのは、いきなり「ポン!」と唐突に出てくるものだけではありません。

これまでに出てきたものを組み合わせながら、新しい手口へと変容して、猛威を振るうのです。まさに、新型コロナウイルスの変異に似ているかもしれません。

今回の事件は、決して他人事ではありません。

コロナ禍でネットをする機会が多くなり、会ったこともない友人が広がれば広がれるほど、こうした悪事をたくらむ人たちとの遭遇の機会も増えてくることになります。

いくら数多くのメッセージをかわしたとしても、相手の氏素性をそのまま信じることは危険です。「年収1000万円は本当なのか?」など、斜めの目線から常にみることが必要になります。

最新のだましの手口を分析することで、ネット社会に生きる私たちが注意すべき点も見えてきます。

もはや偽名を使い、勧誘の手足として積極的に動いて、多くの人からお金をだましとった、山田容疑者からは、残念なことに、もはや元SKE48としての誇りは微塵にも感じられません。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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