育児をしなかった上司は、男性の部下に定時退社と有休取得を促すのが「義務」である

父親本人は家事育児をする意識があるのに実態が伴わない理由は「上司」にあるとしたら(写真:アフロ)

若い世代は「共働き」「共家事」「共育児」の発想を持っている

とかく若い世代は叩かれがちですが、実は家事や育児、収入について「共」であるべきだという意識が一番高まっている世代であることは間違いありません。

厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査」という若い世代の意識や行動の傾向をたどる調査の結果をみていると、独身男女の家庭観をたずねた設問で、「世帯の収入」「家事」「育児」全てについて男性は「夫妻いずれも同様に責任をもつ家庭」というイメージを持っています。

特に家事については「妻が主として責任を持つ家庭」22.8%のところ「夫妻いずれも同様に責任をもつ家庭」58.5%と大きな差がついていますし、育児についても「妻が主として責任を持つ家庭」9.8%に対して、「夫妻いずれも同様に責任をもつ家庭」71.1%と圧倒的です。

収入についても、「夫妻いずれも同様に責任をもつ家庭」49.0%は「夫が主として責任を持つ家庭」32.4%を上回っており「共働き」「共家事」「共育児」をするのが現代の夫婦のスタイルなのだという意識はすでに整ってるようです。

厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」

30年前の男たちは家事や育児をする意識が低かった

同様の結果は博報堂生活総研の調査「家族30年変化」でも過去30年の推移として示されています。こちらを見るとむしろ「30年前の世代」の家事育児参加の意識が低かったことが分かります。

たとえば「夫も家事を分担すべき」との質問に「そう思う」と答えた夫は2018年調査で81.7%ですが30年前にはなんと38.0%でしかありませんでした。

「夫も育児を分担すべき」との質問に「そう思う」と答えた夫についても2018年調査では88.9%のところ、30年前の1988年では45.8%しかなかったのです。

博報堂生活総研「家族30年変化」調査結果

団塊世代、つまり戦後すぐに生まれた世代では専業主婦の妻が家事と育児を100%担当し、男性は100%仕事人間として稼ぐことがテンプレートでした。これはこれで、単純な業務を長期間励むことが効率的だった戦後の時代には適合していて、高度経済成長の源泉にもなりました。

当時は男女の雇用機会はそもそも公平ではありませんでしたし、誰もが「女性は家庭に入るもの」と思っていた時代です。30年前の男たちが、家事や育児をしなかったのを遡って責めても仕方ないことかもしれません。責めるべきは実は「別のところ」にあるのです。

現実の家事分担は「夫1:妻9」という現実

「共働き」「共家事」「共育児」意識は変わりつつあるはずなのに、なかなか家事育児の分担は男性に渡っていません。

マクロミルの調査サイト「ホノテ」によれば共働き夫婦の家事分担で夫がほとんど参加していない割合はなんと66%にもなります。また現実の分担割合は「夫1:妻9」が最多となっています。

マクロミル「ホノテ」

ワンオペ育児という言葉が象徴するように、保育園の送り迎え、食事づくり、家事、ほとんどすべてを女性がひとりで担当し、男性は寝静まったころ帰宅しています。

残業から抜け出せない男性もいれば、仕事づきあいと称して飲んで帰ってくる男性もいますが、働く女性は仕事もきちんとこなしつつ、帰宅して子育てや家事をしています。

子育て世代の意識は変わっているはずなのに、子育てや家事の現実をみれば、「共家事」「共育児」とはなっていないのが現状です。どうもおかしな話です。

自分が家事育児をしなかった男が管理職になり、若手社員を「帰らせない」のはもはや罪に近い

ここで「やっぱり男はダメだ」と決めつけるのは短絡的です。子育て世代の男性が悪いと決めつけるには早いところがあるからです。それは、「休みたいけれど休めない」という問題があるからです。

有休取得ができない理由について、BIGLOBEが行った調査「有給休暇に関する意識調査」によれば、「有給休暇を取得できない、しづらい理由」について1位は「職場に休める空気がないから」(34%)となっているのです。

特に20代の若手社員は「上司・同僚が有給休暇を取らないから」32%となっており、横を見ていることが分かります。私も会社員時代(30歳まで会社員だった)、風邪を引いたとき以外有休を取っていないので気持ちがよく分かります。

会社の制度の工夫がないので、有休が取りにくいとする回答も66%、全体の3分の2に達しています。

BIGLOBE「有給休暇に関する意識調査」

実は、「有休を取りたくて取れない子育て世代の男性社員」という姿が浮かび上がってきます。

上司や役員の「アタマの切り替え」が若い社員を休めるようにする

もし、職場において、

「定時退社は基本ではない」

「というか残業に入ってからが仕事の始まり」

「会議もむしろ夜に行う」

「半休や時短休など有休取得率は低い」

「男性は働くものだ」

「男性育休とか意味が分からない」

などの意識が常態化しているとしたら、おそらくこれは社員の本意ではなく、管理職や役員の「本音」なのです。

もっとキツくいえば「自分が家事育児をしなかった男たち」の罪といってもいいぐらいです。「共働き、共家事、共育児」の時代に対応しようと、今の若い世代が変わろうとする意識を上から封じ込めていることにすら気がついていないのです。

まず管理職や役員が、自分も定時退社しまた有休を取ることは部下の休みやすい「空気」を作ります。また、子育て世帯の男性には、しつこいくらい男性育休や男性の半休、時短休を取得するよう促すべきです。結果として今求められている有休消化率の向上実現にもなります。

あなたの職場の女性社員は子育てと仕事の両立のため、時短勤務をしたり時短休をフル活用しているのに、男性はそうしなくていいなんておかしい話だと考えるべきです。

正社員男性に有休と育休を取得させ、家事と育児をさせる時間を与えよう

拙著「共働き夫婦お金の教科書」では子育て世代の男性に有休を取ろうと述べましたが、本人の努力だけでどうにもならない部分があることについてはあまり触れることができませんでした。(メッセージを届ける対象が夫婦ではなく、会社になるため)

私は一日平均5~6時間は家事育児に時間を割いている「超イクメン」「超家事メン」を自称していますが、妻が共働き正社員であって、ほとんどフルタイム同等の仕事をしている以上は、家事育児は半分は受け持つべきだと考えているからこそ毎週2日以上は夕ご飯も作っています。

しかしそれも、私が個人オフィスのひとり社長(社員ゼロ)だからできることだとも感じています。子育て世帯の普通の会社員は、まだ職場での発言権も少なく、自分から休みを口に出せない人のほうが多いはずです。

もし、最近の風潮を見て「自分は子育てや家事、ほとんどしなかったなあ」と密かに肩身を狭くしている男性部長、男性役員(特に50歳代以上)がいたら、ぜひ有休消化率と男性育休利用率を高めることを職場で真剣に議論してください。

それは「自分は家事育児しなかった世代が、同じことを次の世代にツケ回さない『義務』」なのかもしれません。

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