日本はもはや「先進国」ではない…深センで見た現実

変化の象徴ともいえる深センのランドスケープ(写真:ロイター/アフロ)

 筆者がはじめて海外を経験したのは、1970年代の大学生の頃のヨーロッパ旅行だ。当時は、日本の高度経済成長期はほぼ終わってはいたが、日本はいまだ飛ぶ鳥を落とす勢いで、日本は先進国の最先端を走っているという実感があり、意気揚々の感があった。だが、ヨーロッパに行って感じたことは、「日本は先進国、豊かになったが、ヨーロッパの国々に比べると、いまだ厚みがない国。日本は、ヨーロッパの国々にはまだまだ及ばない」という思いであった。

 今回タイガーモブの企画で、社会人、経営者や学生等の方々と中国・深センの現地視察に行ってきた。

 深センは、テンセント(WeChat運営)やDJI(ドローン)などの世界的企業の本社がある起業社会。超急成長都市・超変貌都市であり、デジタル化が進む先進未来都市である。最近では、「紅いシリコンバレー」とか「米国のシリコンバレーを超えた」といわれる。

 

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 筆者がその「未来都市」で感じたのは、「日本はもはや先進国ではない」という感覚だった(注1)。それは、先述した、数十年前に、ヨーロッパで感じた感覚にも重なるものであった。

 また、事前に同地についてかなり調べていたこともあるが、深センはものすごく進んでいるという感じはしなかった。だが、日本はすでにある意味で成熟国であり、その観点からそのように感じたとしても、深センは飽くまで成長地域であり、伸びしろがあることを考えると、深センはやはり驚異的な地域であり、新しいものに果敢に取り組む実験地域であり、日本はもはや先進国ではないと考えさせるには十分な街であると思う。

 

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 深センは、街全体がキャッシュレス(電子マネー、顔認証決済、シェアエコノミーなど)。新しい社会インフラ(無人バス、ドローン宅急便、EVタクシー、無人コンビニ等)が実装化された街であり、ユニコ-ン企業やネクストブレーク企業のビルが犇めき、さらに多くのスタートアップ企業が雨後の竹の子のように生まれ、消えていく多産多死の街。さらに、金融やIT関連ビジネスの中心地で国際都市の香港を飲み込もうとしている。

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 それらのことだけを見ると、深センは民間主導のビジネスがその変貌と変化を生み出しているように見える。もちろんその面もあるが、深センで時に出合う光景(注2)や話を聞くと、中国の共産党や政府の影や思惑が見え隠れする。

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 また、ご存知のように中国は、AIとビッグデータで国家運営を行う方向に、昨年舵を切ったが(注3)、その方向性と深センで進んでいるキャッシュレス化、フィンテックなどの動きは、一見すると異なるようにも見えるが、実はオーバーラップしていると考えることができる。それは、別の言い方をすると、深センは、中国の今後進むべき未来であるということもできるのである。

 そこには、元気でエネルギーに溢れた表面的な街並みだけからはわからないが、根底にある政治イデオロギーや政治制度が、今後この街の方向性や可能性に大きく影響を及ぼしていくであろうという事実である。そして今後中国がこの街・深センをどのように活用していくのかという戦略・思惑はどこにあるのかという疑問だ。

 深センを知るには、「民間の動き」と「中国の政府及び共産党の動き(深セン市政府の動きも含めて)」の両面からみていく必要がある。また同時に、深センを見ることで、中国の今後の方向性を知ることもできるだろう。

 いずれにしろ、今後とも深センには注目していく必要性がありそうだ。

  

(注1)もちろん、日本はいまでも、「準先進国」ではあるのだが。

(注2)筆者が、深センで信号機を見て道をわたる際に、信号機の近くにモニターがあったが、赤信号で道を横切る者は顔認証され、そのモニターに同人が表示されると聞いた。

(注3)これを「デジタルレーニニズム」と呼ぶ。AWニュース「デジタルレーニズム-デストピアあるいはユートピア、来るべき未来社会?-」参照。