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有権者(1)…政治・政策リテラシー講座25

鈴木崇弘一般社団経済安全保障経営センター研究主幹

日本国憲法では、国民が、国家の主権を有する者である主権者であると規定されています。なお、主権とは、他国の意思などに左右されずに、国家の意思や政治のあり方を最終的に決定する権利のことです。 

しかし、現実には、個々の国民が日々、国家の意思や政治のあり方を決定し続けることは、現実的には不可能です。そのことは、皆さんの日々の生活を振り返ってみれば、わかりますよね。

そこで、国民の代表、つまり自分の代理人を選んで、その選ばれた者が、その決定をしていくようにしているのです。これを「代表民主制(あるいは間接民主制)」といいます。

その代表・代理人を選ぶ方法が、「選挙」と呼ばれるものです。そして、選挙において投票する権利(注1)をもつ者を「有権者」と呼ぶのです。

日本の公務員の選挙については、憲法15条で成年者(注2)による普通選挙が保障されています。普通選挙とは、「狭義には,選挙権について、納税または財産の所有のような経済的要件による制限を認めない選挙制度をいうが、広義には、社会的地位、財産、納税、教育、信仰、人種、性別などによって選挙権を制限せず、成年の男女に等しく選挙権を認める制度」(注3)です。

このために、憲法44条で、国会議員選挙において、国民は有権者として、人種,信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産または収入で差別してはならないことが明示されています。これを受けて、公職選挙法においては、年齢満20歳以上の日本国民は、衆議院議員および参議院議員の選挙権を有すると規定しています。

つまり年齢と日本国民であること以外にはいかなることも、有権者になる上で制約がないのです。

また、私たち国民なり市民が、上記のような普通選挙において、有権者になれる権利は、人類の長い歴史を通じて、獲得してきたものです。近代以前においては、国王などの権力者だけが、政治権力をもっていました。その後市民革命などを経て、一部の市民などが選挙権(別のいい方をすれば限定された政治権力)を獲得しました。しかしその頃も、高額納税者に限定されていたり、男子のみだけに選挙権が与えられただけでした。その後、戦争が総力戦になり全国民が関わるようになったり、平等意識や人権意識が高まってくることなどを通して、国民が普通選挙における選挙権を獲得し、有権者となってきたのです。

これらのことを考えると、有権者として与えられている選挙権は、政治に関わる全ての権利ではありませんが(注4)、個人の人間としてもまた人類の歴史的意味においても、非常に重要な権利であると考えることができます。

このように考えると、私たちは、選挙の時にもっと慎重に、投票をしなければならないことがわかりますね。皆さんもぜひこの視点から、自分の有権者としての権利を考えてみてください。

(注1)これが選挙権です。選挙権には、選挙で投票する権利である選挙権と選挙で候補者となる権利である被選挙権の2つが含まれます。

(注2)成年者とは、現在の日本では満20歳以上の者を指しています。しかしご存じのように、国民投票法や公職選挙法などの関係で、選挙権年齢を引き下げて、満18歳にしようという動きが出てきています。なお、世界的にも投票権は20歳以下で与えられている国々は大半を占めています。

なお、詳しくは次のような資料を参考にしてください。

「主要国の各種法定年齢…選挙権年齢・成人年齢の経過を中心にして…」国立国会図書館調査及び立法考査局 2009年8月

(注3)世界大百科事典第2版(kotobank)からの引用。

(注4)陳情、請願などや市民活動に参加するなどさまざまな活動があります。

一般社団経済安全保障経営センター研究主幹

東京大学法学部卒。マラヤ大学、イーストウエスト・センター奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て、東京財団設立に参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・フロンティア研究機構副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立に参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。㈱RSテクノロジーズ 顧問、PHP総研特任フェロー等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演等多数

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